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サラーサ国へ
サラーサ国へ
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「あ、暴れたり、しないですよね……?」
大トカゲの世話係は恐る恐る、ツチノコの背中に、豪勢な輿のついた鞍を取り付けている。
”伝説の毒蛇”らしいからな。怖がるのもわかるけど。
「大丈夫。人の言葉もわかってるし、ツチノコはおとなしいよ?」
『うむ、』
ツチノコは、やっと俺を乗せられるので嬉しそうだ。
目を閉じて口の端を上げているので。笑ってるように見えて、ちょっとかわいい。
アーディルは今回、ニーリーに一人で乗って先導する役なので不満そうだけど。
「そういえば、ツチノコって普段、何を食べてるの?」
大トカゲは砂を食べて、砂の中の栄養を摂取するっていうけど。
『うむ。砂の中に潜む フルドや ドゥーダァドだな。後は ハリッシュ などだ』
自分で捕まえて食べるので、世話は不要、とのことだ。
砂の中に、モグラとかいるんだ……?
でも多分、俺の知ってるモグラとは違うんだろうな。
それらは作物を荒らす害獣や害虫なのでありがたい、と世話係が言っていた。
砂漠で農業するのも大変だ。
ニーリーたちにも鞍を着け終わって。
いざ、サラーサ国に出発だ。
†††
ツチノコの輿は、自信満々だっただけあって、スピードは速いのに安定感があった。
ほとんど揺れないのすごい。
しばらくして、サラーサ国のある地域に近づいてきたら。
むわっ、と熱気が漂ってきた。
屋根のある輿なので、日差しは避けられてるんだけど。
渇いた世界なのに。湿気でもあるのかな?
「うわー、火山だ」
基本的に一面薄い黄土色の砂の世界では異様に目立つ、黒々とした大きな山が見えた。
これは、どう見ても火山だ。
今にも噴火しそうに噴煙が上がってるけど。大丈夫なのかこれ?
この辺の砂が黄土色じゃなくて赤灰色っぽく見えるのは、火山灰なのかな?
ガラスっぽい、尖った小石も混ざってる。
ツチノコのすべすべなお腹が傷付かないか心配になるほどだ。
俺だけじゃなく、重そうな輿も乗ってるし。
「ツチノコ、お腹大丈夫? この辺、尖った石だらけだけど」
『心配無用である。我はそれほどやわではないぞ。鋼鉄の鏃ですら傷一つつけられぬわ』
それは頼もしいな。
心配されたのも嬉しいようで、尾を振ってる。
でも、どう見てもガラガラヘビの威嚇にしか見えない。
後ろにいる護衛たちの顔も引き攣ってる。
大トカゲも、足の裏が固くて丈夫だから、尖った石があっても平気みたいだ。
それなら良かった。
†††
「そら、サラーサ国が見えてきたぞ」
アーディルが指差した先を見ると。
先端がうっすらと灰に覆われた、巨大なドーム状の建物があった。
あのドームが、サラーサ国?
あれが国全体だと思えば小さく感じるけど。一つの建築物としては、かなり巨大だ。
東京ドームとかは空調でだけど。この巨大なコンクリートのようなドームをどうやって維持してるのかと思ったら、魔法だった。
この国は土の魔法……特に建築に関しての魔法に長けているのだとラシッドが説明してくれた。
火山が噴火して、溶岩が流れたり火山弾が降り注いでも壊れないほど丈夫らしい。
それは凄い。
ワーヒド国の魔法使いは防御魔法にも長けてるから、火山弾が降ってきてもどうにか対応できるけど。
通常、危険すぎて誰も近寄ろうともしないような土地だそうだ。
そんな危険な地域なので、他の国から土地を狙われず。
他の国と土地を巡って争うことなく、細々と暮らしてきた国だそうだ。
ここの王様は、ワーヒド国とは比較的友好関係にあるとか。
だから、一番最初に会談する国に選んだんだな。
ドーム状の建物の前に、数人が立っていて。こちらを見ている。
お出迎えかな?
中でも年配の男が一歩前に出て来て。
「ようこそ我が国へ。救世のマラーク様、偉大なるワーヒド国のスルタンよ。私はサラーサ国の王、ウサーマ。この度の訪れを心から歓迎いたします」
手を合わせて礼をされた。
なんと、王様が自らお出迎えに来てくれてた。
フットワーク軽いな!
†††
ドーム状の建物の天井は高くて。
その中には、いくつもの建物があった。
民家とか、畑や牧場とか。全部ドームの中にあるんだ。
明かりも魔法だ。
外は蒸し風呂みたいだったけど、中に入ったら、比較的涼しかった。
それでもワーヒド国より暑く感じるのは、湿気のせいかな?
中央は広場になっていて。
そのまた中央にある、大きな建物が王宮らしい。王宮というよりはお屋敷って感じ。
他の国のと比べると、地味でこじんまりしてる印象だけど。
王様だからって見栄を張ったり贅沢をしないあたり、好感が持てる。
サラーサ国のスルタン、ウサーマ王は、50歳くらいの普通のおじさんに見えた。
言われなかったら王様だって気付かないくらい、服装も地味だった。顔中もっさりと髭が生えてるし。
王様って、全員美形な訳じゃ無いんだ……。
などと失礼な感想を抱いてしまった。
特別綺麗な王様を短期間で二例も見てしまったせいで、勘違いしていたようだ。
偏見を持たないように、やっぱり世界はひととおり見ておくべきだな。
と、隣にいる貴重な美貌を見る。
太陽の化身だと言われても信じそうなほどのとんでもない美形。
屋内だというのに、眩しいほど綺麗だ。
美人は三日もすれば飽きるだなんて誰が言い出したのか。何度見ても飽きない。
一日中だって眺めていられる。
大トカゲの世話係は恐る恐る、ツチノコの背中に、豪勢な輿のついた鞍を取り付けている。
”伝説の毒蛇”らしいからな。怖がるのもわかるけど。
「大丈夫。人の言葉もわかってるし、ツチノコはおとなしいよ?」
『うむ、』
ツチノコは、やっと俺を乗せられるので嬉しそうだ。
目を閉じて口の端を上げているので。笑ってるように見えて、ちょっとかわいい。
アーディルは今回、ニーリーに一人で乗って先導する役なので不満そうだけど。
「そういえば、ツチノコって普段、何を食べてるの?」
大トカゲは砂を食べて、砂の中の栄養を摂取するっていうけど。
『うむ。砂の中に潜む フルドや ドゥーダァドだな。後は ハリッシュ などだ』
自分で捕まえて食べるので、世話は不要、とのことだ。
砂の中に、モグラとかいるんだ……?
でも多分、俺の知ってるモグラとは違うんだろうな。
それらは作物を荒らす害獣や害虫なのでありがたい、と世話係が言っていた。
砂漠で農業するのも大変だ。
ニーリーたちにも鞍を着け終わって。
いざ、サラーサ国に出発だ。
†††
ツチノコの輿は、自信満々だっただけあって、スピードは速いのに安定感があった。
ほとんど揺れないのすごい。
しばらくして、サラーサ国のある地域に近づいてきたら。
むわっ、と熱気が漂ってきた。
屋根のある輿なので、日差しは避けられてるんだけど。
渇いた世界なのに。湿気でもあるのかな?
「うわー、火山だ」
基本的に一面薄い黄土色の砂の世界では異様に目立つ、黒々とした大きな山が見えた。
これは、どう見ても火山だ。
今にも噴火しそうに噴煙が上がってるけど。大丈夫なのかこれ?
この辺の砂が黄土色じゃなくて赤灰色っぽく見えるのは、火山灰なのかな?
ガラスっぽい、尖った小石も混ざってる。
ツチノコのすべすべなお腹が傷付かないか心配になるほどだ。
俺だけじゃなく、重そうな輿も乗ってるし。
「ツチノコ、お腹大丈夫? この辺、尖った石だらけだけど」
『心配無用である。我はそれほどやわではないぞ。鋼鉄の鏃ですら傷一つつけられぬわ』
それは頼もしいな。
心配されたのも嬉しいようで、尾を振ってる。
でも、どう見てもガラガラヘビの威嚇にしか見えない。
後ろにいる護衛たちの顔も引き攣ってる。
大トカゲも、足の裏が固くて丈夫だから、尖った石があっても平気みたいだ。
それなら良かった。
†††
「そら、サラーサ国が見えてきたぞ」
アーディルが指差した先を見ると。
先端がうっすらと灰に覆われた、巨大なドーム状の建物があった。
あのドームが、サラーサ国?
あれが国全体だと思えば小さく感じるけど。一つの建築物としては、かなり巨大だ。
東京ドームとかは空調でだけど。この巨大なコンクリートのようなドームをどうやって維持してるのかと思ったら、魔法だった。
この国は土の魔法……特に建築に関しての魔法に長けているのだとラシッドが説明してくれた。
火山が噴火して、溶岩が流れたり火山弾が降り注いでも壊れないほど丈夫らしい。
それは凄い。
ワーヒド国の魔法使いは防御魔法にも長けてるから、火山弾が降ってきてもどうにか対応できるけど。
通常、危険すぎて誰も近寄ろうともしないような土地だそうだ。
そんな危険な地域なので、他の国から土地を狙われず。
他の国と土地を巡って争うことなく、細々と暮らしてきた国だそうだ。
ここの王様は、ワーヒド国とは比較的友好関係にあるとか。
だから、一番最初に会談する国に選んだんだな。
ドーム状の建物の前に、数人が立っていて。こちらを見ている。
お出迎えかな?
中でも年配の男が一歩前に出て来て。
「ようこそ我が国へ。救世のマラーク様、偉大なるワーヒド国のスルタンよ。私はサラーサ国の王、ウサーマ。この度の訪れを心から歓迎いたします」
手を合わせて礼をされた。
なんと、王様が自らお出迎えに来てくれてた。
フットワーク軽いな!
†††
ドーム状の建物の天井は高くて。
その中には、いくつもの建物があった。
民家とか、畑や牧場とか。全部ドームの中にあるんだ。
明かりも魔法だ。
外は蒸し風呂みたいだったけど、中に入ったら、比較的涼しかった。
それでもワーヒド国より暑く感じるのは、湿気のせいかな?
中央は広場になっていて。
そのまた中央にある、大きな建物が王宮らしい。王宮というよりはお屋敷って感じ。
他の国のと比べると、地味でこじんまりしてる印象だけど。
王様だからって見栄を張ったり贅沢をしないあたり、好感が持てる。
サラーサ国のスルタン、ウサーマ王は、50歳くらいの普通のおじさんに見えた。
言われなかったら王様だって気付かないくらい、服装も地味だった。顔中もっさりと髭が生えてるし。
王様って、全員美形な訳じゃ無いんだ……。
などと失礼な感想を抱いてしまった。
特別綺麗な王様を短期間で二例も見てしまったせいで、勘違いしていたようだ。
偏見を持たないように、やっぱり世界はひととおり見ておくべきだな。
と、隣にいる貴重な美貌を見る。
太陽の化身だと言われても信じそうなほどのとんでもない美形。
屋内だというのに、眩しいほど綺麗だ。
美人は三日もすれば飽きるだなんて誰が言い出したのか。何度見ても飽きない。
一日中だって眺めていられる。
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