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再び、ワーヒド国
衝撃の事実、その一
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この世界では、15歳で成人として扱われるようだ。
アーディルがこの国の王様として王位を継いだのは、成人してすぐだった、って聞いた。
と、いうことは。
まだ15歳の時に父親を亡くして。そのまま跡を継いで、王様になったんだ。
それで。たった一年で、王を暗殺されて危うかったワーヒド国を、今みたいに立て直したって?
凄すぎる。
この国が、二年前にハカムから襲撃を受け、戦争をしていただなんて。国を廻って見ても、全くわからなかった。長年、ずっと平和で、栄えている国に見えた。
それは、王様であるアーディルが相当頑張ったからだろう。
大変だったろうな。
15歳の時から、王様としての態度を求められてきたなら。それらしく、大人っぽく振舞うようになるのも当然なのかも。
†††
「わ、」
ひょい、と抱き上げられる。
「では、風呂に入るか! これより、待ちに待った、夫婦の時間である。皆、邪魔をするでないぞ」
アーディルは、ついてきていた使用人たちにそう言って。
風呂場に向かいながら、ポイポイと服を脱ぎ捨てた。
つくづく羞恥心の存在しない王様である。
戦衣装の装甲が、ガシャガシャと音を立てて落ちた。
使用人が、それらを慌てて回収している。お疲れ様です……。
更衣室的スペースに入ってから、俺の服も剥かれた。
抱き上げたまま脱がすとか、器用だな。
「あっ、アーディル。そういえばまだ、訊きたいことがあったんだけど、」
「ん? 何でも訊くがよい」
アーディルは上機嫌だ。こんなニッコニコなのに、俺と逢うまでは笑みを見せなかったとか、信じられない。
「……ここ、ハーレムとか、あるのかなって……」
嫉妬してるみたいで、みっともないかなって思うけど。
惚れた相手に、愛人とかお妾さんがいたら。普通、気になるよな?
一国の王様に対して、自分一人だけを愛して欲しい、なんて。
我儘だとはわかってる。
けど。
そういうの、不実っていうか。やめて欲しい。
もし、この世界じゃそれが当たり前のことでも。
だって俺は、アーディルが何もかも初めてだったんだし!
アーディルが、そういう経験を積んだのがどういう相手だったかって、気になるじゃん!
†††
「ハーレム、とは?」
アーディルは不思議そうに首を傾げた。
あ、こっちじゃ”ハーレム”って言葉は通じないんだ。
まさか、そもそも存在しないとか?
ええと。じゃあ、他の言い方だと……。
「別の言い方だと、後宮、でいいのかな? ……お妾さんとか、他に、妃候補とか。いっぱい居たりする?」
段々、尻すぼみになってしまう。
うう。
我ながら、何て女々しいことを……。
「……クッ、」
アーディルは耐え切れない、というように吹き出した。
「何だよ、笑うなんてひど……、わぷ、」
ザバッ、と。
俺を抱いたまま、勢いよく湯船に飛び込んだ。
いたずらっ子みたいな顔をして。
全く。子供みたいなことするなっての。実際、若いんだけど。
鼻にお湯、入りそうになっただろ!?
「ここに、そのようなモノは、存在せん」
「え?」
「私は、このワーヒドに次代の 王となるべく産まれ、昼も夜もなく帝王学を叩きこまれ、寝る暇もなく研鑽に励んでいた。そして二年前、父上の死と同時に王位を継いだが。未だ王としては未熟ゆえ、学ぶことは多く。余所事に目をくれる暇もなく、施政に明け暮れていたのだ」
いや、アーディルは全然未熟な王様じゃないと思うけど。
理想が高いのかな?
「そう……突然現れたワーハで、運命の相手と出逢うまでは、な」
ニヤリと笑った。
え? それって。
俺のこと?
†††
後宮、というか。正妃の他に、第二夫人とか。いわゆるお妾さんを住まわせる場所は、お父さんの代には一応あったそうだけど。
アーディルが王位を継いだ時、全員に、それなりの生活を保障する約束で解散させたそうだ。
「閨房術も王族の嗜みとして教わってはいたが。全て座学である。ゆえに、私はそなた以外の肌を知らぬのだがな?」
何だよ、ニヤニヤしちゃって。
今まで実践で授業はしてなくて、全部、座学で習ったって?
嘘だぁ。あんなエロエロで?
え?
ってことは。
……つまり。ええと。
嘘だろ……?
本当に!? マジで!?
「アーディルさんてば、そんな顔して、どどど童貞だったんですか……!?」
アーディルは目を眇めた。
「何故敬語になるのだ? 顔は関係あるまい。……それにもう、私は童貞ではなかろう?」
「ひゃっ!?」
えっちな指が、そこを撫でる。
男同士でも、童貞卒業したってことでいいのか?
じゃあ俺は、バックバージン喪失? 童貞なのに処女じゃなくなった……ってことになるのか?
それは何か、やだな……。
アーディルは、にやついていた顔を引き締めて。真剣な顔になった。
そして。
俺をまっすぐに見つめて告げた。
「私が生涯をかけて愛し、この腕に抱くのは。そなた一人だけでよい」
†††
アーディル。
そんなこと。
一国の王様が言って良いのかよ。
正直言って、他に目を向けることなく愛されるのは、嬉しいよ? アーディルに、他に相手がいたら嫌だって思うし。
アーディルの相手に嫉妬して。つい、後宮のこと訊いちゃったけど。
でも。王様なんだし。
やっぱり、跡取りとか必要だろ?
男の俺じゃ、子供なんて産めないし。
跡継ぎを作るのは不可能だ。
ほんと、今更だけど。
何で俺、こんなにアーディルのこと、好きになっちゃったんだろう?
好きじゃなければ、見ないふりして。
先のことを思い悩むことなんて無かったのに。
「子も、しばらくは 要らぬ。ミズキとの蜜月を味わいたいからな」
ぎゅっと抱き締められた。
「……は?」
いや、子供はしばらくは要らない、って言われても。
しばらくも何も。
「俺、男だよ?」
「それは良く知っているつもりだが?」
お尻を撫でながら言うな。
そうだね。
何度も裸、見てるしね。口にもしたし。
……じゃなくて。
アーディルがこの国の王様として王位を継いだのは、成人してすぐだった、って聞いた。
と、いうことは。
まだ15歳の時に父親を亡くして。そのまま跡を継いで、王様になったんだ。
それで。たった一年で、王を暗殺されて危うかったワーヒド国を、今みたいに立て直したって?
凄すぎる。
この国が、二年前にハカムから襲撃を受け、戦争をしていただなんて。国を廻って見ても、全くわからなかった。長年、ずっと平和で、栄えている国に見えた。
それは、王様であるアーディルが相当頑張ったからだろう。
大変だったろうな。
15歳の時から、王様としての態度を求められてきたなら。それらしく、大人っぽく振舞うようになるのも当然なのかも。
†††
「わ、」
ひょい、と抱き上げられる。
「では、風呂に入るか! これより、待ちに待った、夫婦の時間である。皆、邪魔をするでないぞ」
アーディルは、ついてきていた使用人たちにそう言って。
風呂場に向かいながら、ポイポイと服を脱ぎ捨てた。
つくづく羞恥心の存在しない王様である。
戦衣装の装甲が、ガシャガシャと音を立てて落ちた。
使用人が、それらを慌てて回収している。お疲れ様です……。
更衣室的スペースに入ってから、俺の服も剥かれた。
抱き上げたまま脱がすとか、器用だな。
「あっ、アーディル。そういえばまだ、訊きたいことがあったんだけど、」
「ん? 何でも訊くがよい」
アーディルは上機嫌だ。こんなニッコニコなのに、俺と逢うまでは笑みを見せなかったとか、信じられない。
「……ここ、ハーレムとか、あるのかなって……」
嫉妬してるみたいで、みっともないかなって思うけど。
惚れた相手に、愛人とかお妾さんがいたら。普通、気になるよな?
一国の王様に対して、自分一人だけを愛して欲しい、なんて。
我儘だとはわかってる。
けど。
そういうの、不実っていうか。やめて欲しい。
もし、この世界じゃそれが当たり前のことでも。
だって俺は、アーディルが何もかも初めてだったんだし!
アーディルが、そういう経験を積んだのがどういう相手だったかって、気になるじゃん!
†††
「ハーレム、とは?」
アーディルは不思議そうに首を傾げた。
あ、こっちじゃ”ハーレム”って言葉は通じないんだ。
まさか、そもそも存在しないとか?
ええと。じゃあ、他の言い方だと……。
「別の言い方だと、後宮、でいいのかな? ……お妾さんとか、他に、妃候補とか。いっぱい居たりする?」
段々、尻すぼみになってしまう。
うう。
我ながら、何て女々しいことを……。
「……クッ、」
アーディルは耐え切れない、というように吹き出した。
「何だよ、笑うなんてひど……、わぷ、」
ザバッ、と。
俺を抱いたまま、勢いよく湯船に飛び込んだ。
いたずらっ子みたいな顔をして。
全く。子供みたいなことするなっての。実際、若いんだけど。
鼻にお湯、入りそうになっただろ!?
「ここに、そのようなモノは、存在せん」
「え?」
「私は、このワーヒドに次代の 王となるべく産まれ、昼も夜もなく帝王学を叩きこまれ、寝る暇もなく研鑽に励んでいた。そして二年前、父上の死と同時に王位を継いだが。未だ王としては未熟ゆえ、学ぶことは多く。余所事に目をくれる暇もなく、施政に明け暮れていたのだ」
いや、アーディルは全然未熟な王様じゃないと思うけど。
理想が高いのかな?
「そう……突然現れたワーハで、運命の相手と出逢うまでは、な」
ニヤリと笑った。
え? それって。
俺のこと?
†††
後宮、というか。正妃の他に、第二夫人とか。いわゆるお妾さんを住まわせる場所は、お父さんの代には一応あったそうだけど。
アーディルが王位を継いだ時、全員に、それなりの生活を保障する約束で解散させたそうだ。
「閨房術も王族の嗜みとして教わってはいたが。全て座学である。ゆえに、私はそなた以外の肌を知らぬのだがな?」
何だよ、ニヤニヤしちゃって。
今まで実践で授業はしてなくて、全部、座学で習ったって?
嘘だぁ。あんなエロエロで?
え?
ってことは。
……つまり。ええと。
嘘だろ……?
本当に!? マジで!?
「アーディルさんてば、そんな顔して、どどど童貞だったんですか……!?」
アーディルは目を眇めた。
「何故敬語になるのだ? 顔は関係あるまい。……それにもう、私は童貞ではなかろう?」
「ひゃっ!?」
えっちな指が、そこを撫でる。
男同士でも、童貞卒業したってことでいいのか?
じゃあ俺は、バックバージン喪失? 童貞なのに処女じゃなくなった……ってことになるのか?
それは何か、やだな……。
アーディルは、にやついていた顔を引き締めて。真剣な顔になった。
そして。
俺をまっすぐに見つめて告げた。
「私が生涯をかけて愛し、この腕に抱くのは。そなた一人だけでよい」
†††
アーディル。
そんなこと。
一国の王様が言って良いのかよ。
正直言って、他に目を向けることなく愛されるのは、嬉しいよ? アーディルに、他に相手がいたら嫌だって思うし。
アーディルの相手に嫉妬して。つい、後宮のこと訊いちゃったけど。
でも。王様なんだし。
やっぱり、跡取りとか必要だろ?
男の俺じゃ、子供なんて産めないし。
跡継ぎを作るのは不可能だ。
ほんと、今更だけど。
何で俺、こんなにアーディルのこと、好きになっちゃったんだろう?
好きじゃなければ、見ないふりして。
先のことを思い悩むことなんて無かったのに。
「子も、しばらくは 要らぬ。ミズキとの蜜月を味わいたいからな」
ぎゅっと抱き締められた。
「……は?」
いや、子供はしばらくは要らない、って言われても。
しばらくも何も。
「俺、男だよ?」
「それは良く知っているつもりだが?」
お尻を撫でながら言うな。
そうだね。
何度も裸、見てるしね。口にもしたし。
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