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イスナーン国にて
怪獣大戦争勃発
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「ん? 腹が減ったのか? スィフリッヤ・カビラの肉は美味いが、こやつはまだ若い。食用には回さぬぞ?」
アーディルが変なことを言った。
「いや、そこまでお腹空いてないから!」
こんな大トカゲを食べたいって思うほど餓えてない。っていうか。
「……え? こいつ、食用トカゲだったの!?」
「ああ。スィフリッヤ・カビラは水の少ない所でも繁殖し成長も早く、可食部分も多い。我が国の貴重な蛋白源であり、移動手段でもある」
アーディルは大トカゲの背を撫でながら言った。
この大トカゲは人懐こくておとなしい性質で、産卵期は半年に一度、卵は一度に最大で十数個産み、半年で成体になるとか。
卵も、鶏卵の20倍ほどの大きさで、栄養価も高いという。
その上大トカゲの餌は、その辺の砂を食べて、砂の中のミネラルだかを摂取するらしい。
そういう生態なら、確かに砂漠の世界じゃ重宝されるだろう。
鶏飼うよりもコスパよさそう。馬とか牛だと大量の餌が必要だし。水もいっぱい飲むもんな。
しかし、乗り物兼、非常食か……。シビアだ。
さすが砂漠の世界。
このカメレオンみたいなざらざらした肌を見てると、食欲失せるけど。ワニもわりと美味いっていうし。
アリっちゃアリかな……?
でも、なつかれたりして情が移ったら、トカゲ肉が食べられなくなりそうだ。
今まで何回か出されてた肉料理の中にトカゲ肉もあったのかな……?
うう、そんなつぶらな瞳で見ないで……。
†††
「あのツチノコ……じゃなかった、大きな蛇は? まさかあれも食用なの?」
木陰に入って寝ているツチノコもどきを指差した。
「ソーバン・カビラか? あれは血液も肉も猛毒で危険だという。いくら腹が空いても、あれだけは食べてはいかんぞ?」
いや、蛇なんて食べようと思わないし!
欠食児童を見るような目で見ないで欲しいんだけど。
お腹すいたら、その辺に木を生やしてその実を食べるってば!
そう考えると、俺がもらった能力って、めちゃくちゃチートだな。
やりようによっちゃ衣食住、全てまかなえるし。護りにも攻撃にも使える訳だし。
あのツチノコもどきは、ハカムの一族が代々改良を重ねて毒性を強くして作られた、同じ種類の大蛇の中でも特別な個体らしい。
オアシスの泉に猛毒の血を入れて、そこに住む人を滅ぼしたりもしていたという。
そんなことしたら、自分たちだってその泉の水が飲めなくなってしまうだろうに。
オアシスを手に入れるためなら手段を選ばないのか。
酷いことするなあ。
「今まで、ハカムに利用されて。可哀想だったな。……おまえはもう自由だぞ。人を襲わないなら、好きなところに行っていいからな?」
よしよし、とツチノコの顎の下を撫でたら。
ごろりと仰向けにひっくり返って、腹を撫でろアピールしてきた。
尾を振ってるのは威嚇行動じゃないよな?
ああ、蛇の腹はひんやりしている……。すべすべだね……。
どうせ撫でるなら、犬とか猫の方が嬉しいんだけど。
すりすりされてもあんまり嬉しくない……。
ツチノコの腹を撫ででいたら。
『優しく愛らしき神の使い よ。我は貴方の手となり足となり、この命ある限り尽くそう』
ツチノコから、声が聞こえた。
「ええっ!? ツチノコがしゃべった!?」
しかも、やたら渋いオッサン声で!
『人語を解す程度、我にとって造作もないこと』
得意げなツチノコ。何だこれ。
っていうか、俺の手足になるって言われても。
ないよな? 蛇だし!
比喩? 比喩表現使っちゃうの?
そこまでの知能を持ってるのかよ! 蛇が? この世界の爬虫類ってこんななの!?
異世界では当たり前のことなのかと思って隣を見れば。
アーディルも蛇が人間の言葉を話していることに驚いて、目を瞬かせていた。
この世界でも、普通の蛇はしゃべらないようだ。
ですよねー。
『……ツチノコか。良い名を貰った』
目を閉じて、喜びを噛み締めているようだ。
いや、名付けてないし。ツチノコは日本のUMAの名称だ。
†††
『クェーッ!』
いきなり、アーディルの大トカゲが突進してきて。
ツチノコに体当たりをくらわした。
「ええっ!?」
な、何が起こったんだ!?
言葉を話すツチノコの次は、暴れ大トカゲ!?
『クエーッ、クアックアッ!』
こっちは何言ってるのかさっぱりわかんないけど。
どうやらツチノコに対して、猛烈に抗議しているらしいことは理解できた。
さすがのアーディルも、これには唖然とした顔で傍観している。
もちろん、俺もだ。
トカゲって、鳴くんだな……。
同じことをアーディルも思ったようだ。
今まで鳴いたことなんて、一度もなかったんだって。
『シャーッ! 不意打ちとは卑怯なり!』
不意打ちの体当たりに怒ったツチノコは牙を剥いて、大トカゲに噛みつこうとした。
猛毒! それ毒牙! 危ないから!
大トカゲは、ツチノコの攻撃を素早く避けた。
巨体が移動した反動で、砂煙がもうもうと巻き上がる。
『可憐なるマラークを背に乗せ、ワーヒドへ帰還するのは僕である我の役目である! 人語も話せぬ下等生物には譲らぬわ! 退けい!』
『クエーッ!』
どうやら、どっちが俺を乗せて帰るのかで争っているようだ。
いや、そんなくだらないことで争わないで……。
しもべとか、いらないし。
両方とも、大人の男を四人くらいは乗せられそうなくらい図体がでかいので、移動するだけですごい迫力なんだけど。
砂煙が凄いことになってる。
何これ。
怪獣大戦争?
これまで、幸運値ゼロだった俺に対する動物のリアクションといえば、逃げられるか、威嚇されるか、噛まれるかの三択しかなかった。
だから、この世界に来て、生き物から懐かれるのは、正直言えば嬉しいよ? 嬉しいけども。
でも何で俺、よりによって爬虫類からモテモテなわけ?
動物にモテるなら、フェネックみたいな可愛いもふもふなのをください!
もふもふ! ふわ毛プリーズ!
アーディルが変なことを言った。
「いや、そこまでお腹空いてないから!」
こんな大トカゲを食べたいって思うほど餓えてない。っていうか。
「……え? こいつ、食用トカゲだったの!?」
「ああ。スィフリッヤ・カビラは水の少ない所でも繁殖し成長も早く、可食部分も多い。我が国の貴重な蛋白源であり、移動手段でもある」
アーディルは大トカゲの背を撫でながら言った。
この大トカゲは人懐こくておとなしい性質で、産卵期は半年に一度、卵は一度に最大で十数個産み、半年で成体になるとか。
卵も、鶏卵の20倍ほどの大きさで、栄養価も高いという。
その上大トカゲの餌は、その辺の砂を食べて、砂の中のミネラルだかを摂取するらしい。
そういう生態なら、確かに砂漠の世界じゃ重宝されるだろう。
鶏飼うよりもコスパよさそう。馬とか牛だと大量の餌が必要だし。水もいっぱい飲むもんな。
しかし、乗り物兼、非常食か……。シビアだ。
さすが砂漠の世界。
このカメレオンみたいなざらざらした肌を見てると、食欲失せるけど。ワニもわりと美味いっていうし。
アリっちゃアリかな……?
でも、なつかれたりして情が移ったら、トカゲ肉が食べられなくなりそうだ。
今まで何回か出されてた肉料理の中にトカゲ肉もあったのかな……?
うう、そんなつぶらな瞳で見ないで……。
†††
「あのツチノコ……じゃなかった、大きな蛇は? まさかあれも食用なの?」
木陰に入って寝ているツチノコもどきを指差した。
「ソーバン・カビラか? あれは血液も肉も猛毒で危険だという。いくら腹が空いても、あれだけは食べてはいかんぞ?」
いや、蛇なんて食べようと思わないし!
欠食児童を見るような目で見ないで欲しいんだけど。
お腹すいたら、その辺に木を生やしてその実を食べるってば!
そう考えると、俺がもらった能力って、めちゃくちゃチートだな。
やりようによっちゃ衣食住、全てまかなえるし。護りにも攻撃にも使える訳だし。
あのツチノコもどきは、ハカムの一族が代々改良を重ねて毒性を強くして作られた、同じ種類の大蛇の中でも特別な個体らしい。
オアシスの泉に猛毒の血を入れて、そこに住む人を滅ぼしたりもしていたという。
そんなことしたら、自分たちだってその泉の水が飲めなくなってしまうだろうに。
オアシスを手に入れるためなら手段を選ばないのか。
酷いことするなあ。
「今まで、ハカムに利用されて。可哀想だったな。……おまえはもう自由だぞ。人を襲わないなら、好きなところに行っていいからな?」
よしよし、とツチノコの顎の下を撫でたら。
ごろりと仰向けにひっくり返って、腹を撫でろアピールしてきた。
尾を振ってるのは威嚇行動じゃないよな?
ああ、蛇の腹はひんやりしている……。すべすべだね……。
どうせ撫でるなら、犬とか猫の方が嬉しいんだけど。
すりすりされてもあんまり嬉しくない……。
ツチノコの腹を撫ででいたら。
『優しく愛らしき神の使い よ。我は貴方の手となり足となり、この命ある限り尽くそう』
ツチノコから、声が聞こえた。
「ええっ!? ツチノコがしゃべった!?」
しかも、やたら渋いオッサン声で!
『人語を解す程度、我にとって造作もないこと』
得意げなツチノコ。何だこれ。
っていうか、俺の手足になるって言われても。
ないよな? 蛇だし!
比喩? 比喩表現使っちゃうの?
そこまでの知能を持ってるのかよ! 蛇が? この世界の爬虫類ってこんななの!?
異世界では当たり前のことなのかと思って隣を見れば。
アーディルも蛇が人間の言葉を話していることに驚いて、目を瞬かせていた。
この世界でも、普通の蛇はしゃべらないようだ。
ですよねー。
『……ツチノコか。良い名を貰った』
目を閉じて、喜びを噛み締めているようだ。
いや、名付けてないし。ツチノコは日本のUMAの名称だ。
†††
『クェーッ!』
いきなり、アーディルの大トカゲが突進してきて。
ツチノコに体当たりをくらわした。
「ええっ!?」
な、何が起こったんだ!?
言葉を話すツチノコの次は、暴れ大トカゲ!?
『クエーッ、クアックアッ!』
こっちは何言ってるのかさっぱりわかんないけど。
どうやらツチノコに対して、猛烈に抗議しているらしいことは理解できた。
さすがのアーディルも、これには唖然とした顔で傍観している。
もちろん、俺もだ。
トカゲって、鳴くんだな……。
同じことをアーディルも思ったようだ。
今まで鳴いたことなんて、一度もなかったんだって。
『シャーッ! 不意打ちとは卑怯なり!』
不意打ちの体当たりに怒ったツチノコは牙を剥いて、大トカゲに噛みつこうとした。
猛毒! それ毒牙! 危ないから!
大トカゲは、ツチノコの攻撃を素早く避けた。
巨体が移動した反動で、砂煙がもうもうと巻き上がる。
『可憐なるマラークを背に乗せ、ワーヒドへ帰還するのは僕である我の役目である! 人語も話せぬ下等生物には譲らぬわ! 退けい!』
『クエーッ!』
どうやら、どっちが俺を乗せて帰るのかで争っているようだ。
いや、そんなくだらないことで争わないで……。
しもべとか、いらないし。
両方とも、大人の男を四人くらいは乗せられそうなくらい図体がでかいので、移動するだけですごい迫力なんだけど。
砂煙が凄いことになってる。
何これ。
怪獣大戦争?
これまで、幸運値ゼロだった俺に対する動物のリアクションといえば、逃げられるか、威嚇されるか、噛まれるかの三択しかなかった。
だから、この世界に来て、生き物から懐かれるのは、正直言えば嬉しいよ? 嬉しいけども。
でも何で俺、よりによって爬虫類からモテモテなわけ?
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