超絶美形だらけの異世界に普通な俺が送り込まれた訳だが。

篠崎笙

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夏の王

神の采配

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「できたよー」
イチと、その手伝いをしていたアブヤドが、台に出来上がったものを並べた。

「アイスクリームと、スイートポテト味のアイスと、大学芋と、栗きんとんと、栗のモンブラン」


氷菓子以外は、見たことのないものだ。
イチの故郷の菓子らしい。

どれも美味そうだ。


「はい、」
15年ぶりに、イチがわたしに手づから氷菓子を食べさせてくれている。

幸福な、あの頃を思い出す。


「うむ、美味い」
褒めると。イチは、はにかんだように笑った。

ああ、イチは変わらず愛らしい。


◆◇◆


「次は何がいい?」

「モンブランとやらを所望しよう」
「はいはい」
仕方ないなあ、という体で食べさせてくれるのだ。


「紫の、いい年をして赤子のようでみっともない! 自分で食え! そんなの、俺もしてもらったことないぞ!」
ザラームが妬いている。

ならば自分もイチに所望すればよかったのだ。
王としての威厳? そんな邪魔なものは捨ててしまえ。


アズファルとアフダルは、すっかり”秋の国”の作物を気に入ったようだ。

「いいなあ栗と芋……”秋の国”と取引できませんかね?」
「”春の国”とも可能なら、したいですね」

「じゃあ聞いてみるね」
イチは簡単なことのように頷いた。

ああ。
春はラグナル王とイチの子孫、秋はルーク王とイチの子孫が、それぞれ王位についているのか。
それならば、交渉も容易であろう。

冬は、ザラームとイチの曾孫、トールの子孫が王位を継いでいるという。
そして、夏はわたしとイチの息子、アブヤド。


皆、親戚のようなものだ。
ハルやアズファル、アフダルも。イチの夫の一人であったエセルの子孫であるので、無関係ではなかろう。

四国が互いにいがみ合う理由はない。
これからは共に協力していけば、より発展するのではないだろうか。


イチのお陰で、世界はなんと変わったことか。

……他に、大事なことが変わったような気がしたが。
靄が掛かったようで。思い出せぬ。


「そういえば、少子化ってどうなってるの?」

少子化?
そのような話を、昔にしたような気がしたが。

その辺りの記憶はあやふやで。定かではない。

どうしたことであろう。
記憶力には、自信があったのだが。


「何の話だ? 人口は400年前から、じわじわ増えてきているというぞ?」


◆◇◆


そうだ。
人口の増加は、まず、”春の国”から増えていった。

次に、”冬の国”が栄え、人が増えた。

”秋の国”も、国が栄えると同時に人口が増えたのだ。

我が”夏の国”の人口も、徐々に増えてきている。

その理由は、おそらくイチの存在であろう。
イチの子、シグルズは求愛者が引きも切らず、多くの子を授かったという話だ。

その子孫もまた、同じように子を多く授かって。
冬も秋も、同様であろう。

エセルやセスのように、”夏の国”に来てそのまま子を生し定住する者も多い。
その中には、王族の子孫もいたはずである。

つまり。
……人口については、何の問題もない、ということだ。


「そうだ。……無事なほうの足を見本にして、同じような形に戻すんだ」
ザラームが、アブヤドに治療の仕方を教えている。

成程。
そうやれば良いのか。だてに300年は生きていないな。


「あ、歩けますよ。王子」

ラクは立ち上がり、普通に歩いてみせた。
痛みもなさそうだ。

「わあい、良かったね、ラク。ありがとう、ザラーム様!」
「ザラームで良い」
アブヤドはすっかりザラームに懐いてしまったようだ。


ザラームと目が合った。
歯を見せて笑った。

ザラームも、人懐っこいのだろうか。

まあ、悪いやつではなかろう。
なにしろ、わたしのイチが認めた男である。


「ザラームは飛竜を使わずとも飛べるようですが、わたしにもできますか?」
「おー、簡単簡単。なんなら教えるぞ」
仲が良いな。

アブヤドと、精神年齢が近いのであろうか。


◆◇◆


ふとイチを見ると。
心ここにあらずな様子で。

「どうしたイチ、眠いのか?」


イチは何回か瞬きをし、わたしを見た。

「わあ、」

何を驚くことがある。
……夢ではないぞ? そなたの伴侶だ。


「今日は疲れただろう。もう床に入るか?」
相も変わらず滑らかな頬を撫でる。

イチは頬を赤くしている。
そのような貌をされると、眠らせたくなくなるではないか。


「今宵は紫のに譲るとしよう。アブヤドがスキーをしてみたいと言うので、連れていくが、いいか?」

ザラーム。
300年振りに愛しい者と再会したばかりだというのに、余裕だな。

まさかアブヤドに乗り換えようなどと……ラクも一緒か。なら大丈夫だな。
見た目はああだが、318歳だ。さすがに枯れているのかもしれぬ。

「ああ、頼む。……アブヤド、黒のにあまり我儘を言うなよ?」
「はい、父上」


「ああん、いいよねー、素敵なさ~。しかもどっちも強い印持ちの王様とか。もうロマンス小説の世界だよね!」
突然何を言い出すのだ、ハル。

「ああ、戦争になりかねない状態だったが、后妃様が悲しまれないよう、協定を結んだのだったな」
アスファルまで。


一触即発状態になったことなどない。
いつ、協定など。

同じ様に、不審に思っていたであろうザラームと目が合い。互いに目配せする。

……神がそう望んでいるのであろう。話を合わせよう。
と視線で伝える。

わかった、そういうことで。
とザラームは応じるように頷いた。勘は良いのだろう、話が早い。


元々、敵対するつもりもなかった。
お互い、神の気まぐれで愛する者を奪われた者同士である。


ここで納得しておかねば、頭の中身を書き換えられてしまうのだろうな。
油断も隙もない。

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