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エピローグ

神々の箱庭

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神々は、箱庭を作って遊んでいた。

大きな箱の中に宇宙を作り銀河を作った。
その中の惑星のいくつかに、生命を与えてみた。

まずは海と大地。植物や動物を創って。
最後にヒトをつくった。

ヒトは放っておけば勝手に増えていくので。遊び心で手を加えては、ヒトの増減を観察していた。

ある神は、美形だらけのヒトの世界を作り。それを”Α”と呼ぶことにした。

ある神は、美醜のない、平均的な容貌のヒトばかりの世界を”β”と呼び。

ある神は、美醜や肌、髪の色など多種多様なヒトのいる世界を”Γ”と呼んだ。


他の条件は同じ。
どの世界が一番、ヒトの数を増やせるか。
実験してみることにした。


結果。
Γは、多種多様なヒトがいることで争いごとも多くあったが。科学も発展し、ヒトの数は爆発的に増え、60憶ほどまで繁殖した。
しかし、Αとβは、なかなか一定以上増えることはなかった。

それは、何故なのか。
神にもその理由はわからなかった。


そこで。
Αのヒトを、βに運んでみたらどうなるのか実験してみた。

Αのヒトをβに10人ほど入れてみると。稀少なΑのヒトを求め、争いが起こり。
国が傾くほどの破滅を招いた。

美形が貴重すぎると、争いを呼ぶようだ。


次は、Γの中でも醜い姿のものをΑやβに入れる実験もしてみたが。
どちらも化け物と間違えられて討伐されることになった。

ヒトの持つ、異物を排除する本能が暴力へ繋がったのだ。


今度は、Αのヒトをβに移動させる数を最初よりも増やし、10人に一人は美形という割合にしてみた。
すると大きな争いは起こらず、Αのヒトは全て娶られ、子を成した。


◆◇◆


しかし。
しばらくたつと、βからは平均的な顔の人間の割合が減っていき。Aと変わらない状況になり、人口の増加も伸び悩むことになった。

とりあえず、ヒトは自分よりも美しいものを好むのだ。と神たちは納得しかけたが。


その割りに、Γは偏らず。美醜のバランスも安定している。
美しいヒトは増えすぎもしない。美形はそれなりにもてはやされてはいるようだが。国によってその基準も違った。
選択肢が多いからだろうか、より醜いものを好むヒトも現れた。


例外はいるものの。ヒトは普通、美しいヒトを好むものだとすれば。
何故、美しい人ばかりの世界であるΑの人口は増えないのだろうか。

美形といえど、全員同じ顔という訳ではない。ありとあらゆる美しさであるのに。


新たな試みとして。
平凡な容貌のヒトを美形ばかりの世界に運んでみたらどうなるか、実験することにした。


◆◇◆


選出された『普通のヒト』の名は、『斎藤一』。

容姿も普通、頭の中身も普通。
そう思っていた。

だが、予想に反して、『斎藤一』は、普通とは少し違っていた。


さっそく、Aでは珍しい生き物となった『普通のヒト』である『斎藤一』は捕獲され、Ε国の紫の王に見初められた。
いきなり異世界に飛ばされても、『斎藤一』はさほど混乱せず、順応した。

1人子が出来た時点で、Ε国夏の国からΔ国春の国の過去に飛ばしてみた。
ここから、歴史はどう転がるだろうか?


『斎藤一』は普通どころか、とんでもない問題人物だった。

自分の文明の知識を持ち込む、未来の話を過去の人間に話す。
文明のバランスが崩れてしまう危険があった。

Δの赤の王の才は類をみないもので、本来不可能であったことを可能にしてしまった。

Γ……地球を作った神が、以前した失敗。
魔神の化身の蛇により、知恵の実を人間に食べさせてしまったことを思い出させた。


しかし。
『斎藤一』の出現により、Δ国の人口が増えていくのが観測された。


次に、Ζ国冬の国に飛ばしてみた。

Ζ国の黒の王は、子を作らず、『斎藤一』を囲おうとしたので、Η国秋の国に飛ばしたが。
Ζ国でも、人口の増加が確認された。
『斎藤一』を失った黒の王が、その血筋であったΔ国の王子と子をなしたのだ。

これは予想外だった。
Ζ国の黒の王が不死になり、『斎藤一』を求め、300年彷徨うのも、本来の歴史になかったことである。
『斎藤一』が、黒の王に力の使い方を教えたため、起こったものだ。


Η国でも、本来の歴史では王であった青の王でなく、世界崩壊の力を持つ白の王を目覚めさせてしまったが。
何故か白の王は世界を崩壊させることなく、国を発展させ、人口を増やした。


歴史は改変された。
Aは、『斎藤一』の出現により、人口を増やすことに成功したのだ。

Γのように人間が胎生であったら、ここまで簡単にはいかなかっただろう。
人口が減らないよう、産むのに苦労する胎生から自然発生にしたのがよかったのだろう。


『斎藤一』を、はじめのβ国に戻した。
不死になった黒の王にさらわれるも、黒の王は、『斎藤一』の望みを聞き、すぐにβ国へ戻した。


◆◇◆


白の王といい、黒の王といい。何故、こうもあっさりと『斎藤一』のいうことを聞くのだろう?

興味を覚えた。
直接、見てみたい。神はそうすることにした。


呼び出した『斎藤一』は、自分は普通だと言った。

普通の人間が、神に呼び出されてこんなに落ち着いているものだろうか。
強欲さもなかった。
身の程を知り、周りの人間の幸せを願う。
そんな人間だった。

だからこそ、黒の王も白の王も、惹かれたのだろう。


βへ行かせたかった神もいたが。
褒美として『斎藤一』の希望をきき、ΑのΕ国にそのまま住まわせることにした。

Aはこれからも人口を増やし続けるだろう。


問題は、依然人口が増えないβだが。
それはまた、別の話だ。
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