超絶美形だらけの異世界に普通な俺が送り込まれた訳だが。

篠崎笙

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ふたたび、夏の国

神様のいう通り。

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真っ暗な空間に、ぼんやりと光が浮かんでいる。
何だ、ここ?


”正解だ。よ”


えっ?
今、光から、声がしたような気がする。


”人口を増やすのが、目的であった”
”平凡の中の平凡を選んだつもりが、少々変わったのを選んでしまったようで、想定外のこともあったが”
”おおむね実験は成功といえる”


想定外? 実験?
えー、変わってるかなあ、俺。超普通だと思うけど。


……何か笑ってるんだけど。
どういう意味だ。

声は、三人いるようだ。三人の神様なのかな?


”褒美を授けよう。選ぶがいい”
”元の時間、元の世界に戻るか、このまま、この世界で生きるか”
”違う世界へ移動する、でもいいぞ? 同じように、美形しか存在しない世界がある”

えええ。
選ぶの!? 俺が? それがご褒美なの?


祖母ちゃん、父さん母さん。みんなのいる世界か。
ウルジュワーンやアブヤド、ザラームのいる世界。

……ええと、他の世界は遠慮しときます。
最初からああいうのをやり直しとか、冗談じゃないよ。

いや、真ん中の神様、残念そうな溜め息つかないで!?


元の世界に帰りたい気持ちは、もちろんある。
未練だって、たらたらだよ。

でも。
ザラームは300年も、俺を探してくれたし。
ウルジュワーンは、15年前と同じように、変わらずに、俺を愛してくれて。

また、いきなり消えちゃったりしたら。ショックだろうし。


「……あの、俺がいなくなった後、その・・に寂しい思いをさせないことは、できますか?」


”可”
”記憶を書き換えるくらい、容易いことだ”


そうなんだ。
じゃあ。

俺は、神様に希望を伝えた。


「あと、もう移動はナシでお願いします!」
これ、ほんとにお願い。


”もうどこにも移動はさせない”
”実験は終わりだ”

良かった。

”これから、そちらの世界でも、たくさん子を生すがよい”


それは、相手の気持ちもあるから、何とも言えないけど。
なるべく頑張りますね。


◆◇◆


『どうしたイチ、眠いのか?』

目を開けたら。
ウルジュワーンの美貌が目の前にあった。だから、超絶美形のアップは心臓に悪いってば。

今、一瞬、ぼーっとしていたらしい。
意識だけ、飛んでたのかな?

時間とか、自由自在なんだな。さすがは神様。


『今日は疲れただろう。もう床に入るか?』
甘い声で。甘い表情で。優しく頬を撫でられる。

ほんと、俺のこと、大好きでしょうがないって顔して。照れちゃうよ。

こんな超絶美形に好かれてるなんて、未だに信じられないけど。
これからは、これが俺の日常になるのか。


『今宵は、紫のに譲るとしよう。アブヤドがスキーをしてみたいと言うので、連れていくが、いいか?』
ザラーム。

スキーにはアブヤドと、ザラームに治し方を教わってアブヤドに足を治してもらったラクさんが一緒に行くらしい。
足はすっかり良いようだ。アブヤドも嬉しそう。

『ああ、頼む。……アブヤド、黒のにあまり我儘を言うなよ?』
ウルジュワーンは俺を腕に抱いたまま、頷いた。

『はい、父上』
俺の息子は素直で超絶かわいい。

……あれ? なんか、ウルジュワーンとザラーム、いつの間にか仲良くなってる感じ……?


『ああん、いいよねー、素敵なさ~。しかもどっちも強い印持ちの王様とか。もうロマンス小説の世界だよね!』
ハルさんが色っぽく身悶えてて。

『ああ、戦争になりかねない状態だったが、后妃様が悲しまれないよう、協定を結んだのだったな』
ファっさんが頷いている。

え、そうなの? そういう風になったの?


神様のサービスかな? 記憶操作。
ザラームのことも放っておけないし、ウルジュワーンは印の相手に妬いてたし。
これからどうしようか悩んでたから、まあ、助かるっちゃ助かるけどさ。

元の世界も、こんな感じにうまく操作してくれているだろう。


祖母ちゃん。父さん、母さん。
お世話になった人たち、みんな。

俺、この世界で、生きていくことにしたよ。
愛する人たちと。その子供たちと一緒に。俺の子孫もいっぱいいることだしね。


◆◇◆


ベッドまで、抱き上げられたまま連れて行かれた。


『イチ、愛している』
キスをされて。

俺も、キスを返す。

「ん。俺も、愛してるよ。ウルジュワーン」
俺も、素直に言うよ。

ラグナルの時みたいに。
言わずに後悔なんか、しないように。
何度だって、返すから。


「たくさん子供を授かろうな?」
俺の言葉に。

ウルジュワーンは、驚いたように目を瞬かせて。
極上の笑みを浮かべてみせた。

大人の男の、滴るような色気って、こういうのなんだって感じ。


『余を煽って、後悔はするなよ?』

後悔なんか、しないよ。どんと来いだ。
どんどん子供を授かって、サッカーチーム作ったり。……まではいいか。

俺は出来たらすぐ移動しちゃってたから、子育ては経験してないけど。子供を育てるのって大変そうだもんな。


いっぱい、愛し合おうな?
だって、俺だけじゃなくて。神様も、そう望んでるんだし。




おわり
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