限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。

篠崎笙

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華麗なる少年王の半生

元近衛騎士である美貌の勇者と麗しき少年王の結婚

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結婚式当日である。

花嫁というので。女装でもさせられるのか、異世界で女装子じょそこデビューかよ、と戦々恐々としていたが。
フリルたっぷりのシャツにレースひらひらのフロックコートみたいな上着だが、下はスカートではなかった。

ほっとしたような、些か拍子抜けしたような。


いや、決して女装したかったわけじゃないけど。
でも、ほら俺は今、美少年だし?

正直言って、似合うと思うんだよね!

美少年時代ならともかく、今はガタイが良すぎて難しいだろうが。
顔はやたら整ってるんだから、アルベルトも似合うんじゃないだろうか。女装。

190センチ近い美女とか迫力ありそう。ちょっと見てみたいかもしれない。


*****


おっと招待客の中にアルベルトの母ちゃ……母君発見!
アルベルトの顔をちょっと気弱で地味にしたような感じの美人だった。

フッ、アルベルトは母親似だろうと想像した俺の勘に間違いはなかったようだな。


父親のハインリヒ・フォン・ロイエンタール公爵グラーフには何度か会ったことはある。
ブルネットに青い目の相変わらずダンディなおじさまだ。
目の辺りが似てるかな?

アルベルトの弟たちも、両親のいいとこどりしたような美形揃いだ。

しかし、こうして並んでいると。やっぱりアルベルトが特別な美形だなと実感する。
あいつだけ抜きん出て綺麗な顔をしてる……。


アルベルトは、今日は勇者の鎧ではなく、近衛騎士の正装に似た、白い軍服のような正装だった。
胸には勲章がずらりと並んでる。いつの間にそんなに貰ってたんだ?
俺は一回しか授与式やった覚えがないから、前王の時代かな?

儀礼用の剣を佩いた立姿は、凛々しくも美しい。


俺、今からこいつと結婚すんのか……。
あんまり実感わかねえな。

昨夜も散々、エロいことされたってのに。


残ってしまった顔の傷痕を嘆く声もあるが。
賢者からは、あの暴竜バルバルスと正面から戦って、命があるだけでも幸運だと聞いた。

戦士一人の犠牲で済んだのは、かなりの奇跡で。
聖剣ヴァルムントをもってしても、良くて相討ちだろうと予想されていたとか。

そんな強い敵だったんだな。
俺のために、そこまで身体張って頑張った訳か。


その執着がこわいんですけど!


*****


母上が、俺の頭にベールをかけた。

物凄く細かいレース編みで。めちゃくちゃ手間暇かかってそう。
母上の実家であるエルラフリート国に代々伝わっている、花嫁に贈るものだそうだ。

前世の記憶があるせいか、我ながら両親にあまり懐かない、可愛くない子供だったと思う。
だって中身29歳なのに、若い女性のおっぱいとか吸えないじゃん!?


今まで愛情いっぱいに育ててくれたことを感謝して、お礼を言うと。
母上は泣きだしてしまった。

赤ん坊の頃から分別があり過ぎるというか、賢い子過ぎてかえって心配してたそうだ。
我儘も言わないから。何か望みがあれば、それが何だろうが受け入れようと思っていたという。
だからアルベルトとの結婚にも反対しなかったとか。

それは先に言ってよマミー!


「クリス兄様、とっても綺麗」
リーゼロッテは、頬をばら色に染めた愛らしい顔をして褒めてくれた。

普段、人前では兄妹でも陛下と呼ぶのだが。
今日の俺は、アルベルトの花嫁だ。

「次は、お前の番だぞ?」
縫い込まれた宝石がキラキラと光る綺麗なベールを摘まんでみせる。


「寂しいけど、泣かないわ。アル兄様のお嫁さんになっても、クリス兄様はずっと、私の兄様だもの」
リーゼロッテは泣きそうな顔をして、俺に抱き着いてきた。

「当たり前だ。私達はずっと、兄妹なのだから」
頭を撫でてやる。


駄目だ、俺が泣きそう。

何だよこれ。
尊みあふれすぎだろ! 俺の妹が尊すぎてニルヴァーナ見えてきた。


*****


申し訳なさそうな咳払いが聞こえた。

「そろそろ時間だけど……いいかな?」
金髪碧眼のイケオジが、所在なさげに立っていた。


ベルンハルト・フォン・ローエンシュタイン侯爵。
父上の弟、つまり叔父である。

教会までのエスコート役である父親が不在なので、叔父上に代理を頼んだのだった。


「バーニィ叔父様!」

「やあ、リズ。大きくなったねえ。もう立派な淑女だ」
イケオジ……もとい叔父上はリーゼロッテの手を取り、手の甲にキスをして。

そしてこちらを向いて、恭しく敬礼した。

「久しくお目にかかります、我が麗しの陛下。この度は大変栄誉ある役目を戴き……」
「叔父上、今日はただの叔父と甥ということで」
長くなりそうな口上を遮った。

放っておくと、校長先生の話くらい長くなる。
適当なところで止めなければならない。朝礼ではないのだ。寝てはまずい。


叔父上はにっこりと笑って、肘を出してみせた。
「では可愛いクリス。行こうか」

「よろしくお願いします、バーニィ叔父様」
出された肘に掴まって、大聖堂へ。

やたら長いベールは、引きずらないよう叔父上の小さな娘たちが持ってくれる。


しばらく見ない間に花がほころぶように綺麗になったねえ、とか。
歯の浮くような台詞を言われながら長い廊下を歩く。

そういうのはリーゼロッテに言ってやれ。


*****


イケオジのエスコートでバージンロードを歩むと。

祭壇の前で、花婿であるアルベルトが待っていた。
ステンドグラスから光が差し込んでいるのに、それよりも眩い笑顔を浮かべている。

うおっまぶしっ。
叔父上もその眩しさに目を細めていたほどだ。

でも、こんな太陽みたいな爽やかな笑顔しといて、こいつの腹の中はベンタブラックよりも真黒なダークマターで一杯なんですよ!?
と心の中で叫ぶ。

他人にアルベルトの腹黒さをバラしたところで、俺には何の得もないからな。


教皇が何やら呪文のような聖句を唱えて。
祝福を受け、永遠の愛を誓う。

一昨日、全世界に向けて誓ったような気がするが。
再びの羞恥プレイである。
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