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華麗なる少年王の半生
麗しき少年王、挙式に向け準備する
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執務室へ行って。
書類にサインをし、捺印をする。
書類作成まで、アルベルトがやったのか。本当にやたら仕事が早いやつだ。
アルベルトはもう近衛騎士ではないからか、いつもの定位置でなく、俺の真横に立っている。
……手元を覗き込んでくるのは気が散るからやめろ。
邪魔なので。代わりに定位置についているヴァルターに、隣に椅子を持ってこさせて、そこに座らせた。
アルベルトは国王の隣に座るのを遠慮していたが。今更何をと言いたい。
救世の勇者となったアルベルトは、立場的には王と同等、国によってはそれ以上ともいえる。
ここでの扱いは、国賓となるのか。
悩みどころである。
*****
近衛騎士ではなくなったというのに。
アルベルトの指示により、何も言わなくてもちょうどいいタイミングで飲み物が運ばれ。
インクで汚れた手を、蒸しタオルで丁寧に拭われた。
ああ、普段通りだ。と、妙に安心してしまう。
一か月も離れていなかったのに。懐かしい気持ちになるのは何故だろう。
いるのが当たり前な存在だったからなあ、とアルベルトの方を見たら。
愛しそうに微笑まれた。
その暗黒物質並みの腹黒さを知っていても、思わずきゅんとしてしまいそうな一撃必殺の笑みを浮かべやがって!
くそぅ、この生まれながらのたらしめ……!
「そういえば。聖剣ヴァルムントを抜きに行くとき、何故私に断りもなく、城を出たのだ」
疑問に思っていたのを訊いたら。
「いえ、許可を頂いた上で試して、抜けなかったら恥ずかしいと思いまして。抜けなくとも周りの地面ごと引き抜こうと思っていましたが」
恥ずかしそうに照れた様子で答えた。
表情と内容が合ってないんですけど!
周りの地面ごと聖剣を引っこ抜こうと考えるとか。
その発想が恐ろしいし、強引すぎるわ!
「御身を狙う輩の恐れもありましたが。可能であれば、私がこの手で陛下の憂いを取り払い、悪竜を斃したいと思ったのです」
それで有言実行か、かっこいいな。
中身はアレだが。
夫婦なので寝室は同じにすべきである、という救世の勇者様のご要望により。
いつの間にか、俺の寝室はアルベルトの寝室でもあることになっていた。
私物は多くなかったものの、荷物もすでに移動済みだという。
今日サインした書類にも書いてあったそうだが。
色々動揺していたせいか、スルーしてしまっていたようだ。
まあ毎夜忍んで来てたようだし、同じようなものか。
さすがに緊張して眠れないかと思ったが。
アルベルトの超絶テクにより心地よく昇天し、よく眠れた。
自分ばかり気持ち良くなって。
アルベルトには何もしてやらないですまない、という気持ちになったくらいだ。
我ながら流され過ぎだろうとは思うが。
初めて他人から与えられる快楽には抗えないのだった。
だってカラダは健全な十代の男の子だもん。
*****
式の前に、母上とリーゼロッテと話す時間を設けられた。
なんと、二人とも以前からアルベルトが俺にそういう意味で惚れていることに気付いていて、密かに応援していたのだという。
というか周囲は皆、知ってた。
アルベルトの熱烈な恋心に気付かなかったのは。
唯一、俺だけだったようだ。
思い返せば。
アルベルトがあの完璧な微笑みを向ける相手は俺だけだったし。近衛騎士としても、妙にスキンシップが多かった。
我ながら呆れるほどのニブチンだ。
だって、生前は他人から好かれた事なかったし!
特にリーゼロッテは、男同士のロマンス小説が大好きな……いわゆる腐女子だった。
妹が腐ってたなんて、お兄ちゃん知らなかったよ!
美しい騎士がその辺の女に取られるくらいなら、美形の男同士でくっついてくれた方がずっといい、という主張を熱く語られた。
ちょっと意味が良く分からない。
竿役がブサメンだろうがキモメンだろうが人外だろうが普通に抜ける俺には理解できない心境である。
むしろ竿役がイケメンだと腹立つくらいだ。
だってイケメンならモテるの当たり前だろ!?
それと、リーゼロッテについていた女近衛騎士がフルフェイスだったのは、俺に顔を見せないためだと判明した。
結婚するまで清らかであれと言われてたので、女から誘惑される要素を極限まで消したかったようだ。
そういえば、俺が目にしたメイドは性的魅力の乏しい面々だった。
徹底している。
男同士の結婚なので、問題は跡取りの話だが。
アルベルトには兄弟がいるし、リーゼロッテは自分が婿を取って産むので安心して欲しいと言われた。
やったあ、後継者問題もこれで安心だネ!
*****
誰も反対しない。
身内からも祝福された婚姻である。
なお俺の意思はガン無視。
気持ち的に八方塞がりだが。
俺が犠牲になることでこの国が平和になるのなら仕方ない。
この状況を受け入れて、諦めるしかない。
現在の俺は国王で、国民の命を預かる身だ。
勇者の嫁として降嫁されるわけでもなく、アルベルトが国王である俺がいいと望んでるんだし、面倒でも放り出す訳にはいかない。
全部わかった上で、神様が俺をここに寄越したんだろうか。
はたして俺は前世で、そこまでの悪行を犯したというのか?
年に二度発行される同人誌を、唯一楽しみに生きてきた実害のないただのスライム……じゃなかったオタクだったのに。
男と結婚しないと国は滅びる上に、監禁されて強姦されるような悲惨な人生を送るほどの業を溜めた覚えはないんだが。
結婚もせずにただ働いて食って寝て、同人誌を読んで生きるだけの無益な人生を送るだろう罪か?
そんなのってないよ!
どうなの神様!?
書類にサインをし、捺印をする。
書類作成まで、アルベルトがやったのか。本当にやたら仕事が早いやつだ。
アルベルトはもう近衛騎士ではないからか、いつもの定位置でなく、俺の真横に立っている。
……手元を覗き込んでくるのは気が散るからやめろ。
邪魔なので。代わりに定位置についているヴァルターに、隣に椅子を持ってこさせて、そこに座らせた。
アルベルトは国王の隣に座るのを遠慮していたが。今更何をと言いたい。
救世の勇者となったアルベルトは、立場的には王と同等、国によってはそれ以上ともいえる。
ここでの扱いは、国賓となるのか。
悩みどころである。
*****
近衛騎士ではなくなったというのに。
アルベルトの指示により、何も言わなくてもちょうどいいタイミングで飲み物が運ばれ。
インクで汚れた手を、蒸しタオルで丁寧に拭われた。
ああ、普段通りだ。と、妙に安心してしまう。
一か月も離れていなかったのに。懐かしい気持ちになるのは何故だろう。
いるのが当たり前な存在だったからなあ、とアルベルトの方を見たら。
愛しそうに微笑まれた。
その暗黒物質並みの腹黒さを知っていても、思わずきゅんとしてしまいそうな一撃必殺の笑みを浮かべやがって!
くそぅ、この生まれながらのたらしめ……!
「そういえば。聖剣ヴァルムントを抜きに行くとき、何故私に断りもなく、城を出たのだ」
疑問に思っていたのを訊いたら。
「いえ、許可を頂いた上で試して、抜けなかったら恥ずかしいと思いまして。抜けなくとも周りの地面ごと引き抜こうと思っていましたが」
恥ずかしそうに照れた様子で答えた。
表情と内容が合ってないんですけど!
周りの地面ごと聖剣を引っこ抜こうと考えるとか。
その発想が恐ろしいし、強引すぎるわ!
「御身を狙う輩の恐れもありましたが。可能であれば、私がこの手で陛下の憂いを取り払い、悪竜を斃したいと思ったのです」
それで有言実行か、かっこいいな。
中身はアレだが。
夫婦なので寝室は同じにすべきである、という救世の勇者様のご要望により。
いつの間にか、俺の寝室はアルベルトの寝室でもあることになっていた。
私物は多くなかったものの、荷物もすでに移動済みだという。
今日サインした書類にも書いてあったそうだが。
色々動揺していたせいか、スルーしてしまっていたようだ。
まあ毎夜忍んで来てたようだし、同じようなものか。
さすがに緊張して眠れないかと思ったが。
アルベルトの超絶テクにより心地よく昇天し、よく眠れた。
自分ばかり気持ち良くなって。
アルベルトには何もしてやらないですまない、という気持ちになったくらいだ。
我ながら流され過ぎだろうとは思うが。
初めて他人から与えられる快楽には抗えないのだった。
だってカラダは健全な十代の男の子だもん。
*****
式の前に、母上とリーゼロッテと話す時間を設けられた。
なんと、二人とも以前からアルベルトが俺にそういう意味で惚れていることに気付いていて、密かに応援していたのだという。
というか周囲は皆、知ってた。
アルベルトの熱烈な恋心に気付かなかったのは。
唯一、俺だけだったようだ。
思い返せば。
アルベルトがあの完璧な微笑みを向ける相手は俺だけだったし。近衛騎士としても、妙にスキンシップが多かった。
我ながら呆れるほどのニブチンだ。
だって、生前は他人から好かれた事なかったし!
特にリーゼロッテは、男同士のロマンス小説が大好きな……いわゆる腐女子だった。
妹が腐ってたなんて、お兄ちゃん知らなかったよ!
美しい騎士がその辺の女に取られるくらいなら、美形の男同士でくっついてくれた方がずっといい、という主張を熱く語られた。
ちょっと意味が良く分からない。
竿役がブサメンだろうがキモメンだろうが人外だろうが普通に抜ける俺には理解できない心境である。
むしろ竿役がイケメンだと腹立つくらいだ。
だってイケメンならモテるの当たり前だろ!?
それと、リーゼロッテについていた女近衛騎士がフルフェイスだったのは、俺に顔を見せないためだと判明した。
結婚するまで清らかであれと言われてたので、女から誘惑される要素を極限まで消したかったようだ。
そういえば、俺が目にしたメイドは性的魅力の乏しい面々だった。
徹底している。
男同士の結婚なので、問題は跡取りの話だが。
アルベルトには兄弟がいるし、リーゼロッテは自分が婿を取って産むので安心して欲しいと言われた。
やったあ、後継者問題もこれで安心だネ!
*****
誰も反対しない。
身内からも祝福された婚姻である。
なお俺の意思はガン無視。
気持ち的に八方塞がりだが。
俺が犠牲になることでこの国が平和になるのなら仕方ない。
この状況を受け入れて、諦めるしかない。
現在の俺は国王で、国民の命を預かる身だ。
勇者の嫁として降嫁されるわけでもなく、アルベルトが国王である俺がいいと望んでるんだし、面倒でも放り出す訳にはいかない。
全部わかった上で、神様が俺をここに寄越したんだろうか。
はたして俺は前世で、そこまでの悪行を犯したというのか?
年に二度発行される同人誌を、唯一楽しみに生きてきた実害のないただのスライム……じゃなかったオタクだったのに。
男と結婚しないと国は滅びる上に、監禁されて強姦されるような悲惨な人生を送るほどの業を溜めた覚えはないんだが。
結婚もせずにただ働いて食って寝て、同人誌を読んで生きるだけの無益な人生を送るだろう罪か?
そんなのってないよ!
どうなの神様!?
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