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華麗なる少年王の半生

祝福された王子の誕生、あるいは転生

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気を失っていたのだろうか。


気付けば、周りは真っ暗で。
生ぬるく、狭い場所に閉じ込められたような感じがした。

何故かそこは心地好いような感じがして、不快感は無かったものの。
息苦しさを覚えた。

必死にもがいてから抜け出した。


しばらくして、肺に空気が入ってくる感覚。
直後、俺は声を上げていた。

まるで、赤ちゃんのような声だと思った。


目は開いているのに、ぼんやりとしか見えない。
おかしいな。視力だけは良い方なのに。同人誌をじっくり読むためにな!

女性が、何か言っているのが聞こえるが。
日本語ではなかった。聞いたことがない言語だ。


ここはどこ? 俺は誰?

来栖翔太くりす しょうただった俺は、本日、トラックに撥ねられて死にました。
グッバイ俺。さらば、お宝本の数々よ。

ハロー、新しい人生。
新たなる俺。

って感じ?


*****


そういえば。次の人生は美しい王子になる、とか言っていたけど。

世界に王国……王制の国っていくつあったっけ? ちょっと思い浮かばない。
地理と社会は苦手だ。

口調はともかく、神様が言ったんだし、話の内容は事実なんだろう。

ということは。
皇太子とかじゃなく、って呼ばれる立場になるんだよな?

イギリスではないだろう。アラブって感じもしないし。


落ちる時に見た、地上の風景。

あれは間違いなく、東京じゃなかった。
ビルとか無かったし。

地形も、何というか、言葉には出来ない違和感があって、おかしかった。


もしかして。
俺ってば、異世界に転生しちゃったりなんかしちゃってたり? 異世界で生前の知識を生かしてチート能力も駆使してウハウハ☆ハーレム人生送っちゃったり?


でも、赤ん坊からスタートなのかよ! めんどくせえな! 

そりゃないよ。
何なのその、いきなりハードモードは!?

かったるいイベントはスキップさせろよ!


人生はゲームじゃない、ってか?
知ったことか!


スキッププリーズ!


*****


俺が転生した先は、完全に異世界だった。

剣と魔法の世界。
ドラゴンなどのモンスターや妖精とかも普通に存在する、もう完璧にファンタジーな世界である。


異世界といっても、食事とか生活様式は元の世界とそう変わりはないようだったのが救いか。
テレビや電話など、文明の利器はなくて、中世みたいな暮らしではあったが。

何せ、見知らぬ世界だ。見るもの聞くもの全部が新鮮で、今のところ退屈することもないし。
世話は使用人がしてくれるので、特に不便は感じなかった。

唯一、不満と言えるのは。
この世界にはえっちな同人誌が存在しない、という悲しい現実だろう。

製紙工場とか印刷所の存在しないこの世界じゃ、紙はまだまだ貴重品だからね。あるのは歴史書とかの手書きの写本だもん。
もう脳内妄想で済ませるしかない。それかこの俺が産業革命を起こすしかない。やるか。レボリューション。


俺は、ディートヘルムという王国の第一王子、クリスティアン・フォン・ローエンシュタイン=ディートヘルム。
クリスティアン王子として生を受けた。

俺のニュー人生ゲームは赤ん坊から再スタートという、超ハードモードだったが。
何とか異世界の言葉を覚えた。

そして、天使のように可愛らしい上に賢い王子として皆から愛されて。
時期国王となるべく王族としての教育を受けながら、蝶よ花よと大切に育てられたのだった。

せっかくゲットした戦利品を一ページも読むことなく志半ばで死んだ俺だが。

手違いにしろなんにしろ、神様から与えられた新しい人生である。しかも、外見も環境も最高に恵まれた状態でのスタートだ。
こうなれば勝ち組人生は約束されたようなもの。

俺は、限界オタクである俺の本性を隠し。
完璧な王子を演じて生きていくことを決めたのだった。


ふたつ下の可愛い妹、リーゼロッテも生まれ。

美少女にお兄様、と呼ばれ慕われる幸せも知った。
今まで、女という女からは汚物を見るような目とか、蔑みの目でしか見られなかったからな。
はっはっは。


……泣いてないし。
覚悟の上で茨の道を選んだんだし。


*****


そして、俺は16歳。
この国では成人として扱われる年齢になった。


ここでの俺の父親、つまり国王であるベルトラート・フォン・ローエンシュタイン=ディートヘルムは、星見の異能を持つ予言者でもあった。
その予言の導きにより、このディートヘルム王国は飛躍的進歩を遂げ、豊かになり。
様々な災害からも逃れてきたという。


しかし、偉大なるベルトラート王は先日、病により倒れ。
46歳でこの世を去った。

享年29歳だった俺よりは長生きだが。あまりにも早過ぎる死であった。


そして、第一王子である俺が、この国の新しい王様になったのだ。
王子時代短すぎィー!

もう少し王子としてお気楽に過ごしたかった俺としては、ちょっとどころかだいぶ不満だった。

他にも不満はある。
王族といったら、ベッドでの作法とかのあれこれを、美人のお姉さんが指南してくれるものと思っていたのに。
予言により、クリスティアン王子は結婚まで清らかな身であらねばならない、と決められいるのだ。
背けば、この国に恐ろしい不幸が訪れるとか。

これはひどい。
詐欺にあった気分である。

せっかく王様になったのに。成人になっても筆おろし未経験どころか。国中のあらゆる美女を集めた後宮を作って、ウハウハ☆パラダイスも出来ないなんて。

あんまりだ。
ハーレムも作れないなんて、何のための王様だよ!

……施政するためですね、はい。サーセン。


その上。憂鬱なことがある。

先王は、とんでもない予言を遺していったのだ。
それは。
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