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おまけ:中華風異世界の天子、日本へ行く。
往時は渺茫 都て夢に似たり
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我は劫国皇帝となる為に産まれた。
欲に塗れたこの世で。
幼少の頃より信じられる者は、空のように美しい瞳をした耀のみであった。
乳母の仁は、心弱く、誘惑に弱い者だった。
故に堕落し、前三公の傀儡とされていた。医療班をもって治せぬほどの病は、そんな仁への罰であったかのも知れぬ。
我は唯一信頼できる者であった耀を、手放したくなかった。
故に、強引に手に入れた。
身体を繋げ、その心をも手にしようと思ったのだ。
*****
我一人だけであれば、生き延びることは可能であった。
しかし。
何度時間を戻し、試してみても。
己の力だけでは耀が命を落とす運命を変えることはかなわず。
故に、異世界の我……東亮の力を借りた。
我は疑心暗鬼により、耀以外の臣を心より信じることができなかった。
それ故に、命を落とすことになったのか。
東亮は己の頭脳と、三公の力を頼り、使うことで。
見事、耀と共に焼死する運命を変えることが出来たのだった。
運命が変わったことにより、我も生き返ることが出来たのだが。
一度東亮に天子の位を譲渡したからには、元の皇帝の座に戻ることまでは天が許さなかった。
耀の心も、我の物ではなかった。
それは、寂しく思うが。
元々、無理に身体で繋ぎ止めていたようなものだ。諦めるよりほかない。
あちらでの我の天運・天命は尽きていたのだ。
故に、強制的に、異世界に送られたわけであるが。
後悔は、していない。
愛しき耀の命を救えたのだ。
我も、こうして生きているのだから。生きてさえいれば、何とでもなろう。
*****
だが。
どうしたものか。
こちらの世界には、他に天子が存在しないのだろう。
我が天子の力は、変わらずにあるものの。
我はここで、何を為すべきであろうか。
天下を取るか?
それも面倒だ。
「あの、……生きてますか? 大丈夫ですか!?」
声のする方を見やる。
不思議な形をした船から、男が身を乗り出してこちらを見ていた。
東亮の身体は、川に落ちていた。
考え事をしながら背泳ぎをしている内に、海まで流されていたようである。
普通の人間であったら、すでに死んでいたであろうか。季節は秋だ。
低い水温は、人の体温を奪うものである。低体温症となり、死に至ると東亮の知識にある。
ふん、死人が背泳ぎをするか、莫迦め。
「今、引き上げますから、……え?」
手を差し出されたので、その手を掴み。
ふわりと船に上がった。
力で水気を飛ばし、船の頭に腰を下ろした。
*****
ふむ。
これはくるうざあ、と云うもののようだ。
高価で、家一軒買える値段のものもあるらしい。
維持費も掛かるので、これを所有しているのは大概会社社長など、金持ちである、と。
持っていることがせれぶりてぃである、すてえたす?
つまり見栄か。華美な服装などで財力を示すのは、他者に己の権力を知らせるのに手っ取り早いからな。
これも東亮の知識にあった。
あやつは余計な物を覚えすぎていて、精神を読み難かった。耀もだが。
ふん、頭でっかち同士、お似合いの二人ではないか。
「あ、あの……?」
男は毛巾を手に、困惑している。
おお、見れば、なかなかの美丈夫ではないか。
耀に比べれば劣るが。
まあ、あれ以上の美しい男はそうそうおるまい。
「男、名を何という。年齢は」
男は姿勢を正した。
「た、鷹司直正です。34歳独身でこざいます!」
ふむ、耀と同じ年くらいに見えたが。6つ上であったか。
ちのぱんに、ぽろしゃつ。
一見らふな格好だが。
東亮の記憶によれば、高級ぶらんどの着物のようである。
そして高価なくるうざあを所有しているところからいって、こやつ、なかなか羽振りがよさそうだ。
悪い気も放っていない。
我を助けようともしていたし、善人であろう。
よし。こやつに我の面倒をみさせるとしようか。
欲に塗れたこの世で。
幼少の頃より信じられる者は、空のように美しい瞳をした耀のみであった。
乳母の仁は、心弱く、誘惑に弱い者だった。
故に堕落し、前三公の傀儡とされていた。医療班をもって治せぬほどの病は、そんな仁への罰であったかのも知れぬ。
我は唯一信頼できる者であった耀を、手放したくなかった。
故に、強引に手に入れた。
身体を繋げ、その心をも手にしようと思ったのだ。
*****
我一人だけであれば、生き延びることは可能であった。
しかし。
何度時間を戻し、試してみても。
己の力だけでは耀が命を落とす運命を変えることはかなわず。
故に、異世界の我……東亮の力を借りた。
我は疑心暗鬼により、耀以外の臣を心より信じることができなかった。
それ故に、命を落とすことになったのか。
東亮は己の頭脳と、三公の力を頼り、使うことで。
見事、耀と共に焼死する運命を変えることが出来たのだった。
運命が変わったことにより、我も生き返ることが出来たのだが。
一度東亮に天子の位を譲渡したからには、元の皇帝の座に戻ることまでは天が許さなかった。
耀の心も、我の物ではなかった。
それは、寂しく思うが。
元々、無理に身体で繋ぎ止めていたようなものだ。諦めるよりほかない。
あちらでの我の天運・天命は尽きていたのだ。
故に、強制的に、異世界に送られたわけであるが。
後悔は、していない。
愛しき耀の命を救えたのだ。
我も、こうして生きているのだから。生きてさえいれば、何とでもなろう。
*****
だが。
どうしたものか。
こちらの世界には、他に天子が存在しないのだろう。
我が天子の力は、変わらずにあるものの。
我はここで、何を為すべきであろうか。
天下を取るか?
それも面倒だ。
「あの、……生きてますか? 大丈夫ですか!?」
声のする方を見やる。
不思議な形をした船から、男が身を乗り出してこちらを見ていた。
東亮の身体は、川に落ちていた。
考え事をしながら背泳ぎをしている内に、海まで流されていたようである。
普通の人間であったら、すでに死んでいたであろうか。季節は秋だ。
低い水温は、人の体温を奪うものである。低体温症となり、死に至ると東亮の知識にある。
ふん、死人が背泳ぎをするか、莫迦め。
「今、引き上げますから、……え?」
手を差し出されたので、その手を掴み。
ふわりと船に上がった。
力で水気を飛ばし、船の頭に腰を下ろした。
*****
ふむ。
これはくるうざあ、と云うもののようだ。
高価で、家一軒買える値段のものもあるらしい。
維持費も掛かるので、これを所有しているのは大概会社社長など、金持ちである、と。
持っていることがせれぶりてぃである、すてえたす?
つまり見栄か。華美な服装などで財力を示すのは、他者に己の権力を知らせるのに手っ取り早いからな。
これも東亮の知識にあった。
あやつは余計な物を覚えすぎていて、精神を読み難かった。耀もだが。
ふん、頭でっかち同士、お似合いの二人ではないか。
「あ、あの……?」
男は毛巾を手に、困惑している。
おお、見れば、なかなかの美丈夫ではないか。
耀に比べれば劣るが。
まあ、あれ以上の美しい男はそうそうおるまい。
「男、名を何という。年齢は」
男は姿勢を正した。
「た、鷹司直正です。34歳独身でこざいます!」
ふむ、耀と同じ年くらいに見えたが。6つ上であったか。
ちのぱんに、ぽろしゃつ。
一見らふな格好だが。
東亮の記憶によれば、高級ぶらんどの着物のようである。
そして高価なくるうざあを所有しているところからいって、こやつ、なかなか羽振りがよさそうだ。
悪い気も放っていない。
我を助けようともしていたし、善人であろう。
よし。こやつに我の面倒をみさせるとしようか。
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