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三章 一陽来復
赤縄繋足
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「ひっ、や、あっ、強い、もっと、ゆっくり、」
私にしがみついて。可愛く鳴いている。
「昨日、この蕾を私に散らされたばかりで。こうされて、可愛く鳴くのが精一杯ですしね?」
「好き、……耀、こんな気持ち、生まれて初めてで。どうしたらいいかわかんないけど……好き」
ぎゅっとしがみつかれ。想いを伝えられる。
「ああ、もう……、どうして貴方はこうまで私を狂わせるのですか、小亮」
そんな告白をされては。
もう二度と、離せなくなってしまう。
貴方が私を見離したとしても。永劫に。
それ以上、可愛いことを言われて、心を乱されないように。
愛らしい唇を己の口で塞ぎながら。
どれだけ想っているかをその身体に教え込んでさしあげた。
*****
陛下が図書寮坤巻殿で何か調べ物をされていると思ったら。
皇帝の結婚、六礼について学んでいたようで。
「耀、結婚しようか。何なら俺が花嫁役でもいいよ?」
「……はい?」
突然の求婚であった。
皇帝と丞相の婚姻など、前代未聞である。
過去、伴侶となった三公も存在しないわけではないが。
婚姻はせず、後宮に住むくらいで。式まで行った例は、皆無である。
陛下の結婚宣言に、周囲は大反対かと思えばそうでもなく。陛下を狙っていたはずの武公は月下氷人となり。
崔公も一般人が入れない皇宮での拍摄は自分が引き受けるというほど乗り気であった。
李公は、呪師として吉凶を占う役を引き受けるとのこと。
あれよという間に、日取りが決まり。
皇帝の結婚式は国民にも周知され、確定となったのだ。
*****
互いの事情から六礼全てを行うことは不可能であると式を略し。
親迎、交杯酒、入洞房は行うことになった。
そして披露宴の様子も加え、それを国民放送で流す、というのだ。
親迎は、式の当日に花婿が花嫁を車で迎えに行き、抱き上げて車まで連れて行くという行事である。
車の数が多ければ多いほど良いこととされる。
交杯酒は、瓢箪を二つに割った杯で乾杯する儀式である。
杯に注がれた酒を半分飲み、杯を交換し飲み干す。
二人の結婚が末永く続くように、という意味を込め、飲み干した後の二つの杯は一つを上に向けて、もう一つは裏返しにした状態で床に投げ捨てる。
入洞房は、新婚の二人が新居に入り初夜を迎えることだそうだが。
闹洞房という、親戚や友人がそこに邪魔に入るという行事が割り込んでくる。
そうすることで邪気を取り除くということだが。
意味がわからない。
私が花婿として、花嫁の陛下を迎えに行くという運びになった。
男性である皇帝が花嫁役、というのも前代未聞であるが。
陛下がその儀式がしたいとお望みであれば、是も非もない。
喜んで従おう。
*****
着々と準備が整っていく。
仁の葬儀以来疎遠であった広陵の一族に連絡を入れたところ、大喜びで。
寿ぎの言葉と共に、親迎用に120頭の良馬を用立てると言われたので、有り難く使わせていただくことにした。
向こうも、自分達の馬が皇帝の挙式に使われるとは光栄だと喜んでくれた。
こちらには式典用の馬が30頭ほど。
使用許可を取ったので、8頭立ての馬車を18台出すことが可能になった。
先程、馬車の用意が整ったとの連絡が入った。
「では、明日18時に8頭立ての馬車を18台連れて皇宮正門までお迎えに上がりますね?」
「144頭も馬、いるの?」
陛下は目を瞬かせている。
「はい。広陵の一族に連絡を入れたところ、親迎に使って欲しいと120頭用立ててくれたのです。本当は88台が目出度くてよかったのですが、さすがにそこまで馬をご用意できなくて……」
婚礼用の馬車を引くには、最低3頭は必要である。最低数でも、88台では264頭必要になる。
一番華やかに見えるものにしたいので、8頭立て18台にした。
「いや、多いよ!」
「馬車か、いいねえ! 戦車も引き連れて派手に行こうよ。8両でいい?」
崔公は、軍部の新兵器のお披露目も兼ねて派手に行きたい、という。
「うちの護衛車も88台つけよう」
武公も当日は護衛車に乗り、同行予定であるが。その数を大幅に増やすという。
どちらも使用許可はもう取ってあるので、後はこちらの了承だけだ。
私にしがみついて。可愛く鳴いている。
「昨日、この蕾を私に散らされたばかりで。こうされて、可愛く鳴くのが精一杯ですしね?」
「好き、……耀、こんな気持ち、生まれて初めてで。どうしたらいいかわかんないけど……好き」
ぎゅっとしがみつかれ。想いを伝えられる。
「ああ、もう……、どうして貴方はこうまで私を狂わせるのですか、小亮」
そんな告白をされては。
もう二度と、離せなくなってしまう。
貴方が私を見離したとしても。永劫に。
それ以上、可愛いことを言われて、心を乱されないように。
愛らしい唇を己の口で塞ぎながら。
どれだけ想っているかをその身体に教え込んでさしあげた。
*****
陛下が図書寮坤巻殿で何か調べ物をされていると思ったら。
皇帝の結婚、六礼について学んでいたようで。
「耀、結婚しようか。何なら俺が花嫁役でもいいよ?」
「……はい?」
突然の求婚であった。
皇帝と丞相の婚姻など、前代未聞である。
過去、伴侶となった三公も存在しないわけではないが。
婚姻はせず、後宮に住むくらいで。式まで行った例は、皆無である。
陛下の結婚宣言に、周囲は大反対かと思えばそうでもなく。陛下を狙っていたはずの武公は月下氷人となり。
崔公も一般人が入れない皇宮での拍摄は自分が引き受けるというほど乗り気であった。
李公は、呪師として吉凶を占う役を引き受けるとのこと。
あれよという間に、日取りが決まり。
皇帝の結婚式は国民にも周知され、確定となったのだ。
*****
互いの事情から六礼全てを行うことは不可能であると式を略し。
親迎、交杯酒、入洞房は行うことになった。
そして披露宴の様子も加え、それを国民放送で流す、というのだ。
親迎は、式の当日に花婿が花嫁を車で迎えに行き、抱き上げて車まで連れて行くという行事である。
車の数が多ければ多いほど良いこととされる。
交杯酒は、瓢箪を二つに割った杯で乾杯する儀式である。
杯に注がれた酒を半分飲み、杯を交換し飲み干す。
二人の結婚が末永く続くように、という意味を込め、飲み干した後の二つの杯は一つを上に向けて、もう一つは裏返しにした状態で床に投げ捨てる。
入洞房は、新婚の二人が新居に入り初夜を迎えることだそうだが。
闹洞房という、親戚や友人がそこに邪魔に入るという行事が割り込んでくる。
そうすることで邪気を取り除くということだが。
意味がわからない。
私が花婿として、花嫁の陛下を迎えに行くという運びになった。
男性である皇帝が花嫁役、というのも前代未聞であるが。
陛下がその儀式がしたいとお望みであれば、是も非もない。
喜んで従おう。
*****
着々と準備が整っていく。
仁の葬儀以来疎遠であった広陵の一族に連絡を入れたところ、大喜びで。
寿ぎの言葉と共に、親迎用に120頭の良馬を用立てると言われたので、有り難く使わせていただくことにした。
向こうも、自分達の馬が皇帝の挙式に使われるとは光栄だと喜んでくれた。
こちらには式典用の馬が30頭ほど。
使用許可を取ったので、8頭立ての馬車を18台出すことが可能になった。
先程、馬車の用意が整ったとの連絡が入った。
「では、明日18時に8頭立ての馬車を18台連れて皇宮正門までお迎えに上がりますね?」
「144頭も馬、いるの?」
陛下は目を瞬かせている。
「はい。広陵の一族に連絡を入れたところ、親迎に使って欲しいと120頭用立ててくれたのです。本当は88台が目出度くてよかったのですが、さすがにそこまで馬をご用意できなくて……」
婚礼用の馬車を引くには、最低3頭は必要である。最低数でも、88台では264頭必要になる。
一番華やかに見えるものにしたいので、8頭立て18台にした。
「いや、多いよ!」
「馬車か、いいねえ! 戦車も引き連れて派手に行こうよ。8両でいい?」
崔公は、軍部の新兵器のお披露目も兼ねて派手に行きたい、という。
「うちの護衛車も88台つけよう」
武公も当日は護衛車に乗り、同行予定であるが。その数を大幅に増やすという。
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