高校受験失敗してから引きこもりニートな俺が中華風異世界で皇帝にされて、部下からモテモテ逆ハーレム状態なんですが。

篠崎笙

文字の大きさ
上 下
62 / 84
三章 一陽来復

忘我混沌

しおりを挟む
「陛下……、それでは、」

私が至らないせいで。
静電気か何かが床単シーツなどに引火したのが、火事の原因だというのだろうか。

「いや、景気良く油をぶっかけたりしない限り、ここまでは染み込まない。燃えやすいように、わざと寝具に油を染み込ませた犯人がいる」


では。
他に犯人が、居るのか。

殺意を持って、ここに香油を者が。
それは、誰だ?


陛下は、まるで悪戯を思いついた少年のような表情で。
「犯人を捕まえるための作戦があるんだが……乗るか?」

「……当然です。何でも致します」


「よし、いい覚悟だ。……じゃあ、」
耳元で囁かれた作戦は。


*****


智能手机けいたいで武公と崔公に此度の作戦を知らせ。
宦官らに見つからないよう待機して欲しい、と通達した。

準備完了の報せを受け、作戦を開始する。


「あ、懐剣めちゃくちゃ震えてる。……どうしよう、これ」
受け取り、枕元に置いた。

懐剣が震えたのならば。そろそろ頃合だろう。


「……亮、」
いみなを呼ぶのが、開始の合図である。

陛下は頷いて。私の背へ手を回した。
自分は経験がないから私に全て任せる、と言われた。

普段通りにして欲しい、とのことだが。
……本当は、こんな風に上になり、抱き合ったことなど無かった。

しかし。普段通りに上に乗られるより、私が覆い被さっていた方が、陛下への危険度が減るだろう。


抱き締めて。
愛撫をする振りをする。

「ん、」
息が掛かるのか。くすぐったそうに身を竦ませている。

薄い絹の夜着一枚なので、こうして腕に抱いていると、体温が伝わってくる。
あたたかい。


私をぎゅっと抱き締めている、細い腕。
片腕に納まるほどの細い腰。
すりすりと、甘えるように胸板に頬を摺り寄せてくる。

……何と愛らしいのか。


*****


「え、」
足を抱え上げ、股間を押し付ける。

私が勃起していることに、気付いたのであろう。


「っ、あ、」
淡い月明かりに浮かぶ、戸惑う表情も愛らしく。情欲を掻き立てられる。

細い腰を掴み。
打ち付けるように、腰を振る。


「亮……、」
「ひゃ、あ、だめ、」

逃げようとする腰を、引き寄せ。

「あ、……耀、やめ、……んぅ、」
たまらず、唇を奪った。


貪るように、その甘い唇を味わう。
「んん、……っは、」

もう一度、唇を重ねる。

抗議するように背を叩いていた手は、今はしがみついている。
初心うぶで、可愛らしい反応。

……このまま、犯してしまいたい。


*****


大量の水が、何者かに浴びせられている音で、我に返った。


……私は今。
何を。


「そこまでだ! 放火の現行犯、神妙に縛につけ!」
武公が、ずぶ濡れの男を押さえ付けた。

男は叫んだ。
「御史大夫様!? 何故ここに……!?」


灯りがつき。
薄暗かった部屋を、煌々と照らした。

武公は、刑部尚書けいぶしょうしょに手錠をかけさせていた。
皇宮には一定以上の身分でないと入れないためだ。

居合わせている皆、官僚級の者たちばかりだ。
そんな耳目のある中、私は。何という無様を晒したのだ。


「いやあ、熱演でしたね、陛下。ほんとにヤってるみたいでしたよ!」
どこからか様子を伺っていたらしい崔公も。私兵を連れ、入ってきた。

熱演も何も無い。
置かれた状況を完全に忘れ、かれを貪ることに、溺れてしまっていた。


何を考えているのだ、私は。
犯人確保のために、演技をしていた筈ではなかったのか。


「で、犯人ホシは。……ええと……誰?」
崔公は、首を傾げた。

目立たないようにだろう、全身、黒い装束。

顔に見覚えは、あるような、無いような。
すれ違っても、記憶に残らなさそうで。どこにでも居そうな、平凡な容姿の男だ。

御史大夫である武公も、見知らぬ顔だと言う。


陛下は、乱れた裾を直しながら。
「そいつは使用人……宦官の一人だ。耀に、……広陵丞相に、横恋慕していたんだろう」


「宦官……!?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

究極の雨男で疎まれていた俺ですが異世界では熱烈歓迎を受けています

まつぼっくり
BL
ずっとこの可笑しな体質が嫌だった。でも、いつかこの体質で救える命もあるんじゃないかと思っていた。 シリアスそうでシリアスではない 攻 異世界の虎さん✕ 受 究極の雨男 ムーンさんからの転載です

ハーバルお兄さん~転生したら、イケおじ辺境伯と魔王の子息を魅了ヒーリングしちゃいました~

沼田桃弥
BL
 三国誠は退職後、ハーバリストとして独立し、充実した日々を過ごしていた。そんなある日、誠は庭の草むしりをしていた時、勢い余って後頭部を強打し、帰らぬ人となる。  それを哀れに思った大地の女神が彼を異世界転生させたが、誤って人間界と魔界の間にある廃村へ転生させてしまい……。 ※濡れ場は★つけています

恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる

琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。 落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。 異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。 そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

魔王様が子供化したので勇者の俺が責任持って育てたらいつの間にか溺愛されてるみたい

カミヤルイ
BL
顔だけが取り柄の勇者の血を引くジェイミーは、民衆を苦しめていると噂の魔王の討伐を指示され、嫌々家を出た。 ジェイミーの住む村には実害が無い為、噂だけだろうと思っていた魔王は実在し、ジェイミーは為すすべなく倒れそうになる。しかし絶体絶命の瞬間、雷が魔王の身体を貫き、目の前で倒れた。 それでも剣でとどめを刺せない気弱なジェイミーは、魔王の森に来る途中に買った怪しい薬を魔王に使う。 ……あれ?小さくなっちゃった!このまま放っておけないよ! そんなわけで、魔王様が子供化したので子育てスキル0の勇者が連れて帰って育てることになりました。 でも、いろいろありながらも成長していく魔王はなんだかジェイミーへの態度がおかしくて……。 時々シリアスですが、ふわふわんなご都合設定のお話です。 こちらは2021年に創作したものを掲載しています。 初めてのファンタジーで右往左往していたので、設定が甘いですが、ご容赦ください 素敵な表紙は漫画家さんのミミさんにお願いしました。 @Nd1KsPcwB6l90ko

処理中です...