46 / 84
二章 図南鵬翼
多々益々弁ず
しおりを挟む
『終わった……ようやく、割り振りが終わった……』
宗元が、ふらふらと図書室に入ってきた。
目の下にはクマ。髭ももっさり伸びているし、げっそりとやつれている。
「よく頑張った……! お疲れ様、宗元」
よろよろしている宗元を、ひしっと抱きとめる。
痛みに耐えてよく頑張った! 感動した!
*****
「どうにかしてあげて?」
振り返ってみると。
信季は半眼で宗元を見ている。
『でも、幸せそうにニヤニヤしてますよ? その熊』
熊って。
「信季、お願い」
『仕方ないですねー。陛下のお願いなら、小汚いオッサンの手だって握りますよ』
と、しぶしぶ宗元の手を取った。
信季言うところのその小汚いオッサン、泣く子も黙る公安のトップなのに……。
『ハイ元気元気。陛下からとっとと離れて』
『むう、』
信季は宗元の背を押しやった。
「現場はどんな感じだった?」
すっかり元気になった宗元は、肩を竦めた。
『一部官僚より、不満の声がなくもなかったのですが。勅令である、の一言で何とか鎮めました』
宗元の私室がある御史台ビルは、司法省の管轄になるようだ。
結局、丞相・御史大夫・太尉、三公の名称は馴染みがあるのでそのままがいい、ということで続行。
何千年も続いていたんだもんな。旧名は旧名で、尊重しないと。
*****
増えた省の増築・移動もだいたい終わって。
土地の管理を国土資源省に割り振りしたお陰で、わかりやすくなったとか。
それなら良かった。
これで風通しがよくなれば御の字だ。
「あとは、人力資源社会保障省管轄の、労働基準法だな!」
『それがあったか……』
宗元は、がっくりと肩を落とした。
法律の制定は、国務院の三公が担当である。
でもって、おそらく完璧主義の宗元が仕切ることになる。
……頑張ろうな?
国民の声を聞きすぎても、君主制の崩壊に繋がりかねないけど。
この世界は天子の力によって天候が落ち着いて平和である、という根強い信仰がある。下手うって支持率下げないように気をつけないと。
毎月色々ある、国家安寧を祈る儀式や天候の神に祈る儀式とかも、何とかこなして。
朱亮ほどはこなせないにしても。
皇帝のふり……いや、皇帝らしさが身についてきた気がする。
頭上を見上げる。
主に皇帝が施政をする時に使う、乾正殿という建物である。
建物のネーミングは聞いたことがないものが多いので、長い歴史の中で変わったのかもしれないし、元々そうなのかもしれない。
玉座の上には大きな玉が吊るされていて。皇帝以外や皇帝に適さない人物がこの席に座ると、天罰により落下して頭をかち割る、という恐ろしい言い伝えがあるそうだ。
タライならギャグで済むけど。あれ、落ちてきたら、普通に死ぬよな。
まだあれが落ちてこないという事は。
俺は、皇帝として認められているのだろう。
『陛下、労働基準法の草稿、出来上がりました。どうぞお目通しください』
くたびれた様子の宗元が、分厚い書類の束を掲げ、正面へ。
「ご苦労であった。しばしそこで待たれよ」
宗元、お疲れ……。
とねぎらってやりたいけど。
尚書令や、他の官の目もあるので、皇帝モードだ。
*****
最低賃金を一律化してしまうと、地方や雇い主の経済状況により、支払えない事態に陥る。
平均収入から考えても、所得格差が激しい場合、低いほうが割りを食う。その辺も想定しないと。
商売というのは、原価を抑えても、人件費が一番掛かるんだよな。
そりゃみんなオートメーション化に走るよ。
機械は文句言わないし、休みもいらないもんな。問題は初期費用、メンテくらいだ。
労働者だけでなく、事業者も守る法律も整備しないといけない。
税金が高すぎる、と海外へ逃げた会社がいっぱいあったな。
結局、金型とか技術を盗まれただけで、ろくなことにならなかっただろうに。
先々のことを考えず、自分の欲や、目先の利だけを追うと、損をする。
この世界では海外の人件費が安いかどうか知らないけど。
知的財産は、国で守るべきだ。
デザイナーや先駆けが泣きを見るような世の中はいけない。著作権については厳しく行こう。
……おっと、主題がずれてきた。
宗元が、ふらふらと図書室に入ってきた。
目の下にはクマ。髭ももっさり伸びているし、げっそりとやつれている。
「よく頑張った……! お疲れ様、宗元」
よろよろしている宗元を、ひしっと抱きとめる。
痛みに耐えてよく頑張った! 感動した!
*****
「どうにかしてあげて?」
振り返ってみると。
信季は半眼で宗元を見ている。
『でも、幸せそうにニヤニヤしてますよ? その熊』
熊って。
「信季、お願い」
『仕方ないですねー。陛下のお願いなら、小汚いオッサンの手だって握りますよ』
と、しぶしぶ宗元の手を取った。
信季言うところのその小汚いオッサン、泣く子も黙る公安のトップなのに……。
『ハイ元気元気。陛下からとっとと離れて』
『むう、』
信季は宗元の背を押しやった。
「現場はどんな感じだった?」
すっかり元気になった宗元は、肩を竦めた。
『一部官僚より、不満の声がなくもなかったのですが。勅令である、の一言で何とか鎮めました』
宗元の私室がある御史台ビルは、司法省の管轄になるようだ。
結局、丞相・御史大夫・太尉、三公の名称は馴染みがあるのでそのままがいい、ということで続行。
何千年も続いていたんだもんな。旧名は旧名で、尊重しないと。
*****
増えた省の増築・移動もだいたい終わって。
土地の管理を国土資源省に割り振りしたお陰で、わかりやすくなったとか。
それなら良かった。
これで風通しがよくなれば御の字だ。
「あとは、人力資源社会保障省管轄の、労働基準法だな!」
『それがあったか……』
宗元は、がっくりと肩を落とした。
法律の制定は、国務院の三公が担当である。
でもって、おそらく完璧主義の宗元が仕切ることになる。
……頑張ろうな?
国民の声を聞きすぎても、君主制の崩壊に繋がりかねないけど。
この世界は天子の力によって天候が落ち着いて平和である、という根強い信仰がある。下手うって支持率下げないように気をつけないと。
毎月色々ある、国家安寧を祈る儀式や天候の神に祈る儀式とかも、何とかこなして。
朱亮ほどはこなせないにしても。
皇帝のふり……いや、皇帝らしさが身についてきた気がする。
頭上を見上げる。
主に皇帝が施政をする時に使う、乾正殿という建物である。
建物のネーミングは聞いたことがないものが多いので、長い歴史の中で変わったのかもしれないし、元々そうなのかもしれない。
玉座の上には大きな玉が吊るされていて。皇帝以外や皇帝に適さない人物がこの席に座ると、天罰により落下して頭をかち割る、という恐ろしい言い伝えがあるそうだ。
タライならギャグで済むけど。あれ、落ちてきたら、普通に死ぬよな。
まだあれが落ちてこないという事は。
俺は、皇帝として認められているのだろう。
『陛下、労働基準法の草稿、出来上がりました。どうぞお目通しください』
くたびれた様子の宗元が、分厚い書類の束を掲げ、正面へ。
「ご苦労であった。しばしそこで待たれよ」
宗元、お疲れ……。
とねぎらってやりたいけど。
尚書令や、他の官の目もあるので、皇帝モードだ。
*****
最低賃金を一律化してしまうと、地方や雇い主の経済状況により、支払えない事態に陥る。
平均収入から考えても、所得格差が激しい場合、低いほうが割りを食う。その辺も想定しないと。
商売というのは、原価を抑えても、人件費が一番掛かるんだよな。
そりゃみんなオートメーション化に走るよ。
機械は文句言わないし、休みもいらないもんな。問題は初期費用、メンテくらいだ。
労働者だけでなく、事業者も守る法律も整備しないといけない。
税金が高すぎる、と海外へ逃げた会社がいっぱいあったな。
結局、金型とか技術を盗まれただけで、ろくなことにならなかっただろうに。
先々のことを考えず、自分の欲や、目先の利だけを追うと、損をする。
この世界では海外の人件費が安いかどうか知らないけど。
知的財産は、国で守るべきだ。
デザイナーや先駆けが泣きを見るような世の中はいけない。著作権については厳しく行こう。
……おっと、主題がずれてきた。
0
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説
超絶美形だらけの異世界に普通な俺が送り込まれた訳だが。
篠崎笙
BL
斎藤一は平均的日本人顔、ごく普通の高校生だったが、神の戯れで超絶美形だらけの異世界に送られてしまった。その世界でイチは「カワイイ」存在として扱われてしまう。”夏の国”で保護され、国王から寵愛を受け、想いを通じ合ったが、春、冬、秋の国へと飛ばされ、それぞれの王から寵愛を受けることに……。
※子供は出来ますが、妊娠・出産シーンはありません。自然発生。
※複数の攻めと関係あります。(3Pとかはなく、個別イベント)
※「黒の王とスキーに行く」は最後まではしませんが、ザラーム×アブヤドな話になります。
異世界でチートをお願いしたら、代わりにショタ化しました!?
ミクリ21
BL
39歳の冴えないおっちゃんである相馬は、ある日上司に無理矢理苦手な酒を飲まされアル中で天に召されてしまった。
哀れに思った神様が、何か願いはあるかと聞くから「異世界でチートがほしい」と言った。
すると、神様は一つの条件付きで願いを叶えてくれた。
その条件とは………相馬のショタ化であった!
「陛下を誑かしたのはこの身体か!」って言われてエッチなポーズを沢山とらされました。もうお婿にいけないから責任を取って下さい!
うずみどり
BL
突発的に異世界転移をした男子高校生がバスローブ姿で縛られて近衛隊長にあちこち弄られていいようにされちゃう話です。
ほぼ全編エロで言葉責め。
無理矢理だけど痛くはないです。
【R18 完結】淫魔王の性奴隷ーペットー
藤崎 和
BL
【BL】傲慢な淫魔王×孤独で不憫なリーマンの快楽堕ち性奴隷調教
➡︎執着愛、調教、ヤンデレ、複数プレイ、触手攻め、洗脳あり。
家族から勘当され孤独に生きるサラリーマンの秋山彰(あきやましょう)は、ある夜残業帰りにアルカシスと名乗る美丈夫の男に、彼の統べる淫魔界へ強制転移させられる。
目を覚ました彰は、既にアルカシスと主従契約を結んだと聞き困惑する。困惑する彼に突きつけられたのは『主従契約書』と書かれた一枚の書類。
そこには、彰の自筆で“秋山彰”と書かれていた。
「この契約書がある限り、君は私の性奴隷だ。今から7日間、みっちりと私の性奴隷になった事をその身体と心に刻み込んであげる」
「ふっ、ふざけるな、ああっ・・・っ!」
アルカシスにより、身体は快楽を刻み込まれ、7日後アルカシスの性奴隷となった彰は再度突きつけられた主従契約書を前に自らアルカシスの性奴隷になった事を宣誓するのだった。
アルファポリス様他、小説家になろう様、pixiv様にて連載中!
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
童貞が尊ばれる獣人の異世界に召喚されて聖神扱いで神殿に祀られたけど、寝てる間にHなイタズラをされて困ってます。
篠崎笙
BL
四十歳童貞、売れない漫画家だった和久井智紀。流されていた猫を助け、川で転んで溺れ死んだ……はずが、聖神として異世界に召喚された。そこは獣の国で、獣王ヴァルラムのツガイと見込まれた智紀は、寝ている間に身体を慣らされてしまう。
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!
スイセイ
BL
夜勤バイト明けに倒れ込んだベッドの上で、スマホ片手に過労死した俺こと煤ヶ谷鍮太郎は、気がつけばきらびやかな七人の騎士サマたちが居並ぶ広間で立ちすくんでいた。
どうやらここは、死ぬ直前にコラボ報酬目当てでダウンロードしたBL恋愛ソーシャルゲーム『宝石の騎士と七つの耀燈(ランプ)』の世界のようだ。俺の立ち位置はどうやら主人公に対する悪役ライバル、しかも不人気ゆえ途中でフェードアウトするキャラらしい。
だが、俺は知ってしまった。最初のチュートリアルバトルにて、イケメンに守られチヤホヤされて、優しい言葉をかけてもらえる喜びを。
こんなやさしい世界を目の前にして、前世みたいに隅っこで丸まってるだけのダンゴムシとして生きてくなんてできっこない。過去の陰縁焼き捨てて、コンプラ無視のキラキラ王子を傍らに、同じく転生者の廃課金主人公とバチバチしつつ、俺は俺だけが全力でチヤホヤされる世界を目指す!
※頭の悪いギャグ・ソシャゲあるあると・メタネタ多めです。
※逆ハー要素もありますがカップリングは固定です。
※R18は最後にあります。
※愛され→嫌われ→愛されの要素がちょっとだけ入ります。
※表紙の背景は祭屋暦様よりお借りしております。
https://www.pixiv.net/artworks/54224680
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる