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二章 図南鵬翼

乾を旋らし坤を転ず

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九寺は御史大夫の管轄で。
祭事を請け負う伯太常寺、宮殿の内務を請け負う光禄寺、宮門の警衛を請け負う衛尉寺、車馬、行幸の行列を請け負う太僕寺、刑罰、投獄を請け負う大理寺、賓客の接待、儀式を請け負う理藩院尚書、皇族を請け負う宗正寺、貨幣、穀物を請け負う戸部尚書、飲食、器物、庭園を請け負う太府寺からなる。

尚書省の尚書令は、政治の実行を受け持つ。
吏部尚書は官吏の任免と進退。戸部尚書は民事、戸籍、租税。

刑部尚書は、警視庁みたいなものだ。
兵部尚書は軍事、武官の進退。礼部尚書は礼楽祭喪、外交、学校。工部尚書は 宮中の器物用度、水利を受け持つ。

門下省は、詔勅の吟味、出納。

中書省は詔勅の記録・伝達。

秘書省は図書寮の長官。

殿中省と内侍省は宮内庁のようなもの。

地方官は、大雑把に言えば県警とか県庁のようなもの。


こうして整理すると、御史大夫って仕事内容やたら豊富っていうか、大変だな。
部下は大勢いるみたいだけど。
でも完璧主義だから、人がやってるの見てるとイライラするそうだ。

ただでさえ忙しいのに、仕事を増やしてしまって申し訳ない。


でも、これもすべて国民のため。
よりよい暮らしのためだから!


*****


そんな感じで、現状調査をほぼ宗元に丸投げした俺だったが。
何かもう、この行政のシステム自体、根本的に改善しないとダメじゃないか? という気になってきた。


御史大夫の担当、多すぎじゃない? ムダな部署多すぎじゃない?

丞相の担当も、いまいちわかりにくいし。
色々、不透明な部署もある。

太尉はまあ、このままでも大丈夫そうだけど。かといって、大幅リストラも問題がある。


科挙の内容も、昔の詩とか覚えてどうすんだよ的な。
そんなん嗜みであって、必須科目じゃないだろ。常識で考えて。

その分、法律とか覚えとけよ。仕事に必要な知識だけでいいだろ。
試験内容も改訂しないとな。

あと、官僚の試験とかもなあなあになり過ぎてるせいで、お偉いさんの親戚と偽って入ってきちゃったのもいたことだし。
合格最低ラインの点数とか、きちんと決めないと。


能力制がいいけど。
その認定も監督によるから難しいか。一律のチェック項目を決めとかないとな。


だいたい、部署名がわかりにくいんだよ。
名称はそのまま、管轄を変えるか。それともわかりやすい名称で、一から作り直すか。
後々のことを考えれば、後者だよな。

来年から変えます、と予告しておけば、混乱も少ないだろう。
よし。あちこち直すとこは直して。


すっきりさっぱり、クリーンな政治を目指すぞ!


*****


『大変職務に熱心なのはよろしいのですが。……新婚なのですけどね?』
耀は苦笑していた。

「仕事しなくていいのか、丞相?」

『私は部下の尚書令が優秀ですので。今のところ任せております』
涼しい顔である。

尚書令か……宴で紹介されたっけ。
確か名前は趙羽、字は玄。

なかなかの美中年だったのに、へろへろだったな……。
かわいそうに。


じゃあまあ、せっかく任せてあるなら、甘えてしまおうかな。

などと誘惑に弱い俺だった。
所詮はニートである。

見上げると。
耀は、俺の手を取って。

『では今から、夫婦の時間でよろしいですね?』
唇に、キスを落とした。


宦官は、下がらせて。
風呂で身体を磨くのも、全て耀がやってしまうようになった。

宦官が連続で事件を起こしたせいかと思ったら、違った。


『私は自分で思ったよりも、嫉妬深い男だったようです』

使用人であろうが、俺の肌を他人に見られたり触れられるのに、我慢できなくなったらしい。
耀も相当な恋愛脳だ……。

でも、今まで耀は、そういう事を一切考えていなかったわけだし。自分は特別愛されているのかと思うと、嬉しくなってしまう。
俺も俺である。


そういえば、風呂付の宦官は、俺と朱亮の身体が入れ替わったことに気づかなかったのかな?
布越しで、素手では絶対に触れられないけど。

見ればわかりそうなもんだけどな。筋肉量も違ってたっていうし。


聞いてみたら、大丈夫だという。
『天子の身を直接見てはならないので。視線を外すのです。違いがわかるほど見る者はいないかと』

そうなんだ。
触って別人だと気付いた伯裕や宗元がすごいのか。


信季はオーラが別人だったから、疑ってたようだけど。
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