39 / 84
二章 図南鵬翼
爾に出ずる者は爾に反る
しおりを挟む
まだまだ飲むぞ、とか言ってるけど。宗元は顔が真っ赤だ。飲みすぎだよ。
老酒って、度数高いんだっけ?
えーと、確か主に使われる酒は黄酒……紹興酒だけど、長年貯蔵された酒のことを老酒というんだ。
古いものほど希少価値も高く、珍重される。
アルコールの度数は14%から17%で、中には50度、60度を超えるものもある。
俺には絶対飲めない。
*****
『はーい、武師父はその辺でストップ。ウーロン茶くださーい』
伯裕は宦官に注文してる。
お店か!
「宦官も大変だな……。ちゃんと手当てとか、つくのかな?」
『宦官は、それが職務故。……手当てとは?』
宗元は首を傾げた。
「看病のことじゃないよ。んーとね、一週間や一ヶ月の内、何時間労働するかが決まってて。それ以外の時間の労働とか、深夜とか、お休みの日に出勤とかの場合に時間外手当っていう料金を足すの。余計に働いたら、その分報われないと嫌だろ?」
『なるほど』
『確かに、不満は出ておりますね』
耀も頷いている。
この世界、労働基準法がないのか……。
そりゃ辛いな。じゃあ。
カメラに向かって。
「では、国民のよりよい暮らしのために、労働基準法を制定します!」
『ちょ、陛下! 会議もせずに言い切っては、』
慌てた伯裕が止めようとしたが。
「勅令!」
『御意、』
恐るべき条件反射。みんな、すぐに跪いた。
自覚はなかったが。
俺も、相当酔っていたのだ。
*****
『海棠の睡り未だ足らず、といった風情ですが……』
朝っぱらから、何言ってんだ、耀?
寝ぼけてるのか?
耀は元気だな……。
酒、あんなに飲まされてたのに、ピンピンしてるよ。
なのに、その三分の一の量すら飲んでない俺は完全グロッキーである。
「ううう……頭が割れるように痛い……むしろ割れてない?」
『割れてません。水は飲めますか?』
「無理。飲んだはしから戻しそう……うぅ……気持ち悪い……」
頭の中の銅鑼を、ガンガン叩かれているようだ。
そして、ぐわんぐわん目が回って、更に気持ち悪い。
何このトリプルコンボ。呪いかよ。
衣装がきつかったので、あまり食べられなかったからか、吐く物はないけど。
こんな目に遭ってまで、もうお酒なんか飲みたくない……。
俺、アルコール分解酵素持ってないんだろうな。これからは酒は避けましゅ。とか言って。
……ダメだ脳細胞も死滅している。
ニート生活で、酒なんて飲んだことなかったし。文字でしか知らなかったけど。
二日酔いって、こんな辛いものなんだ。二度と経験したくない。
というか俺、二十歳になったばっかだし。未成年で飲酒するほど不良じゃなかったし。
杏露酒が甘くて飲みやすいのがいけない。
甘くて飲みやすいなら、ジュースとかでいいじゃないか。
『おかわいそうに……すぐに呪師を呼びます』
耀はスマフォもどきを手にした。
「いや、二日酔いくらいで信季呼ぶのもかわいそうだよ……」
夜遅くまで付き合ってくれてたんだし。
『それが仕事ですから。……そういえば、陛下。昨夜の勅令のことですが、』
勅令?
「え? 俺、なにかやっちゃった?」
*****
辛うじて、何となくは、覚えてたけど。
昨夜やらかしたことを、改めて教えられた。
勅令により、労働基準法制定。
お前ずっとニートだったくせに何寝言抜かしてんだ感強くて泣きそう。
……もちろんそれ、言いだしっぺの俺が考えるんだよね? この国の仕事の形態、労働環境とか色々見て、決めないといけないんだよね?
うっわ、めんどくせえ!
『それと、部屋に戻ってからの小亮は、とても愛らしく、素晴らしかった。……あの夜のことは、一生忘れません……』
しみじみと頷いてるけど。
何があったんだよ!?
『おはようございます、陛下!』
信季は、シジミの吸い物を手に、来てくれた。
ありがとう。優しさがしみるぜ。
シジミのオルニチンは二日酔いに効くのだ……。
『いやあ。陛下、やっちゃいましたね! 昨夜の放送で、国中大騒ぎだそうですよ。もちろん、宮内でも』
朝から元気で、羨ましい限りだ。
信季に手を握ってもらったら、塗炭の苦しみが楽になった。
素晴らしい。
心霊治療って、二日酔いにも効くのか。すごいな。
老酒って、度数高いんだっけ?
えーと、確か主に使われる酒は黄酒……紹興酒だけど、長年貯蔵された酒のことを老酒というんだ。
古いものほど希少価値も高く、珍重される。
アルコールの度数は14%から17%で、中には50度、60度を超えるものもある。
俺には絶対飲めない。
*****
『はーい、武師父はその辺でストップ。ウーロン茶くださーい』
伯裕は宦官に注文してる。
お店か!
「宦官も大変だな……。ちゃんと手当てとか、つくのかな?」
『宦官は、それが職務故。……手当てとは?』
宗元は首を傾げた。
「看病のことじゃないよ。んーとね、一週間や一ヶ月の内、何時間労働するかが決まってて。それ以外の時間の労働とか、深夜とか、お休みの日に出勤とかの場合に時間外手当っていう料金を足すの。余計に働いたら、その分報われないと嫌だろ?」
『なるほど』
『確かに、不満は出ておりますね』
耀も頷いている。
この世界、労働基準法がないのか……。
そりゃ辛いな。じゃあ。
カメラに向かって。
「では、国民のよりよい暮らしのために、労働基準法を制定します!」
『ちょ、陛下! 会議もせずに言い切っては、』
慌てた伯裕が止めようとしたが。
「勅令!」
『御意、』
恐るべき条件反射。みんな、すぐに跪いた。
自覚はなかったが。
俺も、相当酔っていたのだ。
*****
『海棠の睡り未だ足らず、といった風情ですが……』
朝っぱらから、何言ってんだ、耀?
寝ぼけてるのか?
耀は元気だな……。
酒、あんなに飲まされてたのに、ピンピンしてるよ。
なのに、その三分の一の量すら飲んでない俺は完全グロッキーである。
「ううう……頭が割れるように痛い……むしろ割れてない?」
『割れてません。水は飲めますか?』
「無理。飲んだはしから戻しそう……うぅ……気持ち悪い……」
頭の中の銅鑼を、ガンガン叩かれているようだ。
そして、ぐわんぐわん目が回って、更に気持ち悪い。
何このトリプルコンボ。呪いかよ。
衣装がきつかったので、あまり食べられなかったからか、吐く物はないけど。
こんな目に遭ってまで、もうお酒なんか飲みたくない……。
俺、アルコール分解酵素持ってないんだろうな。これからは酒は避けましゅ。とか言って。
……ダメだ脳細胞も死滅している。
ニート生活で、酒なんて飲んだことなかったし。文字でしか知らなかったけど。
二日酔いって、こんな辛いものなんだ。二度と経験したくない。
というか俺、二十歳になったばっかだし。未成年で飲酒するほど不良じゃなかったし。
杏露酒が甘くて飲みやすいのがいけない。
甘くて飲みやすいなら、ジュースとかでいいじゃないか。
『おかわいそうに……すぐに呪師を呼びます』
耀はスマフォもどきを手にした。
「いや、二日酔いくらいで信季呼ぶのもかわいそうだよ……」
夜遅くまで付き合ってくれてたんだし。
『それが仕事ですから。……そういえば、陛下。昨夜の勅令のことですが、』
勅令?
「え? 俺、なにかやっちゃった?」
*****
辛うじて、何となくは、覚えてたけど。
昨夜やらかしたことを、改めて教えられた。
勅令により、労働基準法制定。
お前ずっとニートだったくせに何寝言抜かしてんだ感強くて泣きそう。
……もちろんそれ、言いだしっぺの俺が考えるんだよね? この国の仕事の形態、労働環境とか色々見て、決めないといけないんだよね?
うっわ、めんどくせえ!
『それと、部屋に戻ってからの小亮は、とても愛らしく、素晴らしかった。……あの夜のことは、一生忘れません……』
しみじみと頷いてるけど。
何があったんだよ!?
『おはようございます、陛下!』
信季は、シジミの吸い物を手に、来てくれた。
ありがとう。優しさがしみるぜ。
シジミのオルニチンは二日酔いに効くのだ……。
『いやあ。陛下、やっちゃいましたね! 昨夜の放送で、国中大騒ぎだそうですよ。もちろん、宮内でも』
朝から元気で、羨ましい限りだ。
信季に手を握ってもらったら、塗炭の苦しみが楽になった。
素晴らしい。
心霊治療って、二日酔いにも効くのか。すごいな。
10
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる