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二章 図南鵬翼

華燭の典

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都の、皇宮がある山の周りを一周して、行列は皇宮に戻る。

二人で皇宮内の王廟に参り、婚姻の誓いを交わして。
それから宴だ。


宴会は、皇宮内ではなく、皇宮の左横にある式典用の祝華殿しゅくかでんというところで行うそうだ。あぶれた人たちは右横の祝泰殿しゅくさいでんで待機。

まずは三公のうち御史大夫の宗元、太尉の伯裕が挨拶に来て。
また後で、と去っていく。

次は医局代表、呪師の信季。

50の国の王に、刑部尚書など長官クラスの大勢の官僚。
トリは、外国からもわざわざ祝いに駆けつけてくれた賓客だ。


インド周辺を統べている羅国の王と、ロシアの露州の皇帝、アメリカ大陸から来てくれた墨西州の王。
トップが来ちゃって、大丈夫なのか?

『おめでとうございます』
通訳が、伝えようとしたけど。

朱亮が何かしたのか、言葉が理解できた。
そういや、ここの言葉も普通にわかったしな。これが天子パワーか。


「お祝いにいらしてくださり、ありがとうございます。宴を用意してますので、どうぞごゆっくりお過ごしください」
返すと、びっくりしていた。

この先もどうぞよろしく、これを機会に、商業的な取引などもお願いしたいとか言われて。
にこやかに握手したりして。


宴は、和やかに終了した。


*****


次は、入洞房である。

皇宮に、洞窟を模した部屋を作って、そこで行われる。
耀と二人、先に入った。

『……皆、貴方に見惚れていましたね。外国からの賓客も虜にするとは、罪なお方だ』

何でしょっぱなから口説きモード全開なんだよ!
いいけど。

「耀、その格好、すごく似合ってて素敵だよ。惚れ直しちゃった」
『小亮の美しさには誰も敵いはしません』


『ちょっと。入りにくい雰囲気、作らないでくれないかな!?』
伯裕が乱入してきた。

『徹底的に邪魔してやろう』
宗元も。

『僕、もういい加減眠いんだけど』
信季はすでに眠そうだった。


『へいへーい、お二人さん、こっち向いて笑ってー?』

皇宮内なので、国民放送用の撮影係は伯裕が引き受けたらしい。
ビデオカメラのようなものを向けられる。

俺が知っているビデオカメラと形が全然違うので、戸惑うが。
二人で寄り添って、レンズに笑顔を向ける。


テーブルには、飲み物と。おつまみはナッツだけ?
甘い物食いたいんだけど。

あ、頼めば宦官が持ってきてくれるのか。ありがたいな。
でも、帯が苦しくて食べられそうにない。まだ脱いじゃだめなのか、これ。

放送するから?
じゃあ、下手にだらけた姿も見せられないな。


*****


「そういえば、入洞房って、具体的に何するの?」

本来は親戚と、仲の良い友人が来るというが。
俺と耀にはそういう親類がいないので、伯裕と宗元と信季に来てもらったんだけど。


『え、』
みんな、固まった。

『ごめん、李君ちょっとパス』
『”ぱす”とは? え、持ってるだけで良いんですか、これ?』

伯裕は、カメラを信季に預け。

俺の耳元で囁いて、教えてくれたが。横に下がっている旒が邪魔なので、ビーズの暖簾みたいにかき分けているのが笑いを誘う。
宗元なんて、それを見て腹を抱えて笑ってる。

『あのね、本来今日は、待ちに待った初夜なわけだから。これは、二人っきりになって甘~い新婚夫婦の時間を過ごすはずが、オレ達に邪魔される、っていう儀式イベントなわけよ』

「はぁ? 初夜も何も俺たちとっくに寝うぷ、」
口を、大きな手のひらで塞がれた。

伯裕は、あくまでもイケメンな笑顔で圧をかけてきた。

『放・送・中☆』

あ、そうだった。


「っていうか。生放送なのかこれ。編集しないの?」
『もうすぐ宮廷チャンネルで入洞房生放送、って速報入れたら、視聴率が90%超えたんだもん。国民の皆さんの期待には応えないと』

みんな暇か!


てか、宮廷チャンネルって何だよ。
今初めて聞いたぞ?

さすがに披露宴の間は場を持たせるため、賓客の説明を入れたり、各儀式の説明を入れたりしていたらしいが。
皇帝の結婚式は、そんなに興味津々なイベントなのだろうか?

まあ確かに他人事なら見ちゃうかもしれないな。何しろ千年ぶりなわけだし。
さぞ珍しかろう。
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