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二章 図南鵬翼
落花流水の情
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「ごめん宗元。俺、身も心も耀のものになっちゃったんだ。耀も、俺のだけど」
宗元は、机に頭をゴン、とぶつけた。
『あの時、無理にでも想いを遂げておくべきだったか……』
机に顔を伏せたまま、唸るように呟いた。
「でも、それだと俺の心は永遠に手に入らないけど?」
ぐう、と唸っている。
おお。リアルでぐうの音を出しているヒト、初めて見た……。
『くっそ、紳士ぶってないで、ヤっちゃえばよかった……!』
伯裕まで。
『僕はもう、広陵丞相が勃起不全になって捨てられる日を待つことにします。若いので』
信季……。
男の価値は、寝技だけじゃないんだぞ?
第一、俺は耀のエッチが上手かったから、好きになった訳じゃないし。
耀って、俺に見捨てられたらどこかでひっそり死んでそうで。何かほっとけないというか。
そんなヘタレなのに、ベッドじゃS入るとことか、好きかな。
……俺、Mっけがあったのかな……。
『…………若くない俺は? いや、生涯現役を目指すぞ!?』
『……オレも待つか……広陵丞相なんか、ヤりすぎて腎虚になればいい……』
40歳の宗元と23歳の伯裕は、19歳の信季の冗談に乗っかって憤ったり、呪ったりしている。
……冗談だよな?
*****
『親迎と、交杯酒と式の様子と入洞房は拍摄しようよ。ウケるよ?』
六礼はお互いの家族の事情から考えても無理そうなので。
皇帝の結婚式の様子をダイジェストで国民に流そう、というのは伯裕のアイデアだった。
「いや、別に結婚式でウケを取りたくないんだけど……」
親迎は、元の世界の中国でも未だに続いている結婚式の儀式というか、しきたりで。
式の当日に花婿が花嫁をリムジンや馬車で迎えに行き、お姫様抱っこで車まで連れて行くとか。
昔の女性は纏足だったからだろうか?
纏足は、女は足が小さいほうがいいと小さい頃から足を変形させ、小さいまま固めてしまうことで。
当然まともに歩けなくなるが、常に世話が必要=金持ちの証でもあり、珍重された。
足フェチにはたまらないとか何とか。
桃娘とか、中国の変態は一線を越えたの多いな。
交杯酒は、瓢箪を二つに割った杯で乾杯することらしい。
杯に注がれたお酒を半分だけ飲んだ後、杯を交換して飲み干す。二人の結婚が末永く続きますように、という意味を込め、飲み干した後の二つの杯は一つを上に向け、もう一つは裏返しにした状態で床に投げ捨てるという。
テキーラじゃないんだから……。
入洞房は、中国の古代伝説に登場する五帝の一人である堯が、鹿仙女を娶った際のエピソードをもとにした儀式だ。
二人は恋に落ち、 南仙洞という洞窟で初夜を過ごす。その時、洞窟の向かい側にあった 蜡烛山……蝋燭山の上から明るい光が洞窟を昼のように照らし出したという。
これをもとに、新婚の二人が新居の寝室に入る儀式を入洞房、新婚初夜を洞房 花燭夜と言うようになった。
で、新郎と新婦が結婚の儀式を済ませて、洞房と呼ばれる夫婦の寝室に入った後、二人だけになれたと思った頃。親友や親戚が部屋に乱入してきて大騒ぎをするのが 闹洞房。
闹は騒ぐ、という意味だ。
新婚の二人をわざとからかったり悪ふざけをするが、新郎新婦は決してムカついてはいけない。こうすることで邪気を取り除くと信じられているからである。
……昔のしきたりって、意味がわからないことをやらせるよな。
*****
千年ぶりの皇帝の結婚式なので。
こうなったら大々的にやっちまおう、と皆、お祭り感覚になってる。
そういやこの世界には、車あるのか?
古来の車って、牛車か馬車だろうけど。どんなやつだろう。乗り物も進化してるかな?
耀は、笑顔で言った。
『では、明日18時に8頭立ての馬車を18台連れて皇宮正門までお迎えに上がりますね?』
多いな!
てか馬車かよ。こっちでは8は縁起がいい数字なんだっけ?
本当は88台にしたかったけど、さすがにそこまで馬が居なくて断念したとか。
いや、8台でも充分多いよ。なのに18台って。144頭だよ?
そんなに馬がいたら、落し物が大変なことにならない? 運がつくからいいの?
宗元は、机に頭をゴン、とぶつけた。
『あの時、無理にでも想いを遂げておくべきだったか……』
机に顔を伏せたまま、唸るように呟いた。
「でも、それだと俺の心は永遠に手に入らないけど?」
ぐう、と唸っている。
おお。リアルでぐうの音を出しているヒト、初めて見た……。
『くっそ、紳士ぶってないで、ヤっちゃえばよかった……!』
伯裕まで。
『僕はもう、広陵丞相が勃起不全になって捨てられる日を待つことにします。若いので』
信季……。
男の価値は、寝技だけじゃないんだぞ?
第一、俺は耀のエッチが上手かったから、好きになった訳じゃないし。
耀って、俺に見捨てられたらどこかでひっそり死んでそうで。何かほっとけないというか。
そんなヘタレなのに、ベッドじゃS入るとことか、好きかな。
……俺、Mっけがあったのかな……。
『…………若くない俺は? いや、生涯現役を目指すぞ!?』
『……オレも待つか……広陵丞相なんか、ヤりすぎて腎虚になればいい……』
40歳の宗元と23歳の伯裕は、19歳の信季の冗談に乗っかって憤ったり、呪ったりしている。
……冗談だよな?
*****
『親迎と、交杯酒と式の様子と入洞房は拍摄しようよ。ウケるよ?』
六礼はお互いの家族の事情から考えても無理そうなので。
皇帝の結婚式の様子をダイジェストで国民に流そう、というのは伯裕のアイデアだった。
「いや、別に結婚式でウケを取りたくないんだけど……」
親迎は、元の世界の中国でも未だに続いている結婚式の儀式というか、しきたりで。
式の当日に花婿が花嫁をリムジンや馬車で迎えに行き、お姫様抱っこで車まで連れて行くとか。
昔の女性は纏足だったからだろうか?
纏足は、女は足が小さいほうがいいと小さい頃から足を変形させ、小さいまま固めてしまうことで。
当然まともに歩けなくなるが、常に世話が必要=金持ちの証でもあり、珍重された。
足フェチにはたまらないとか何とか。
桃娘とか、中国の変態は一線を越えたの多いな。
交杯酒は、瓢箪を二つに割った杯で乾杯することらしい。
杯に注がれたお酒を半分だけ飲んだ後、杯を交換して飲み干す。二人の結婚が末永く続きますように、という意味を込め、飲み干した後の二つの杯は一つを上に向け、もう一つは裏返しにした状態で床に投げ捨てるという。
テキーラじゃないんだから……。
入洞房は、中国の古代伝説に登場する五帝の一人である堯が、鹿仙女を娶った際のエピソードをもとにした儀式だ。
二人は恋に落ち、 南仙洞という洞窟で初夜を過ごす。その時、洞窟の向かい側にあった 蜡烛山……蝋燭山の上から明るい光が洞窟を昼のように照らし出したという。
これをもとに、新婚の二人が新居の寝室に入る儀式を入洞房、新婚初夜を洞房 花燭夜と言うようになった。
で、新郎と新婦が結婚の儀式を済ませて、洞房と呼ばれる夫婦の寝室に入った後、二人だけになれたと思った頃。親友や親戚が部屋に乱入してきて大騒ぎをするのが 闹洞房。
闹は騒ぐ、という意味だ。
新婚の二人をわざとからかったり悪ふざけをするが、新郎新婦は決してムカついてはいけない。こうすることで邪気を取り除くと信じられているからである。
……昔のしきたりって、意味がわからないことをやらせるよな。
*****
千年ぶりの皇帝の結婚式なので。
こうなったら大々的にやっちまおう、と皆、お祭り感覚になってる。
そういやこの世界には、車あるのか?
古来の車って、牛車か馬車だろうけど。どんなやつだろう。乗り物も進化してるかな?
耀は、笑顔で言った。
『では、明日18時に8頭立ての馬車を18台連れて皇宮正門までお迎えに上がりますね?』
多いな!
てか馬車かよ。こっちでは8は縁起がいい数字なんだっけ?
本当は88台にしたかったけど、さすがにそこまで馬が居なくて断念したとか。
いや、8台でも充分多いよ。なのに18台って。144頭だよ?
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