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二章 図南鵬翼

肝胆相照らす

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『最後の、崔公は何と言ったのですか?』

耀は私室に着いてから、俺に聞いてきた。
何やらむすっとしてる。

「ああ、アディオスのこと?」

『ええ。外国の言語ですよね?』
耀はわからなかったから、拗ねてるのか。


「アディオスはじゃあまたね、くらいの軽い別れの言葉で、アミーゴは友達だけど」

イタリア語にもアディーオさようならというけど。そっちは重い意味の別れの言葉になる。
同じような言葉でも、国によって意味が変わったりする。

『友達? 何故それで、愛してる、に?』
くっ、と眉間に皺が。

「伯裕はマイナー……ええと、あまり知られてない言葉を話すけど、俺には通じるから嬉しいんだって。ほら俺、天才だから物知りだし?」

『確かに。皇帝の儀式もほぼ記憶されてますし、驚嘆すべき記憶力です』
納得して頷いてるし。


『しかし、恋人が他の男と自分に通じない言語で話すのは、妬けます。狭量なものですから』
正直だな。


*****


『……身体、きつかった?』
甘く、耳元で囁かれる。

そうされると、ぞくぞくする。
ここって、性感帯なんだな。知らなかった。

「ん、でも、信季が治してくれたから、大丈夫」
『ここも?』

尻を撫でられて、頷いてみせると。

『では、もう一度。誰のものか、教えないといけませんね?』

そう囁かれて。
ベッドに、押し倒された。

「ん、」
先日の、奪うようなキスではなく、慈しむようなキスをされた。


耀は、一見おとなしい感じの、落ち着いた男に見えるけど。実は正反対の、激情型だよな。

ずっと、そんな自分を抑えていたが。朱亮皇帝という、唯一無二、揺るぎないはずの存在……心の支えを喪ったことによって、箍が外れてしまったのかもしれない。
朱亮は耀を支配し、意のままに動かすことで、耀の危うい心を守っていたのかも。


「耀、”亮”って呼び方、変えて欲しいんだけど……何か、愛称とかない?」

同じ、亮なんだけど。
朱亮を呼ぶのと同じだと、何というか。複雑な気持ちだ。

耀は別だってわかってるというけど。
心のうちは、見えないし。


『愛称……亮亮とか、小亮シャオリョウとか阿亮アリョウですかね? しかし、失礼では?』

子供に呼ぶような愛称だが。
そもそも皇帝の諱を呼び捨てだって、失礼だし。

「いい、気にしない。呼びやすいやつで呼んでくれればいいよ」


*****


『では……、私の可愛い小亮。貴方を、愛しています』
甘く囁かれて。
ドキドキしてしまう。

手であたためた香油で俺の性器を擦りながら、後ろを慣らされて。先に達したら、俺が辛くなるから、と。イきたいのにイかせてもらえない、というじらしプレイをかまされ。

耀の指を三本受け入れて。
それがスムーズに動くようになって、やっと指を引き抜かれた。


俺の足を抱え上げ。
耀は告げた。

『小亮、……私を、受け入れてくれますね?』

「ああ、耀。……いいから、お前の全部、受け止めてやるから。……来い!」

たまらない、という感じで。
抱き締められて。

ずぷっ、と。耀が入ってきた。


『……あまりの包容力に、亮先生、と呼びたくなりました』
にっこり笑っている。

「俺はまだ、二十歳になったばっかだぞ。28歳のオッサンに先生呼ばれるトシじゃな……ああっ、」
突き上げられて。

『そうですね。可愛い小亮は、まだまだ初心者でした』
ぐぷっ、ぐぷっ、と音がするくらい、腰を穿たれてしまう。


「ひっ、や、あっ、強い、もっと、ゆっくり、」

『昨日、この蕾を私に散らされたばかりで。こうされて、可愛く鳴くのが精一杯ですしね?』

俺だけを見て。耀の菫色の瞳が興奮で、鮮やかになってる。
この色、好きだ。

耀がこんなに興奮した姿は、朱亮ですら見たことがないんだ。


自分から、抱きたいと欲しがって。
獣のように圧し掛かってくる、この姿を。

俺だけが、知っている。


「好き、……耀、こんな気持ち、生まれて初めてで。どうしたらいいかわかんないけど……好き」
しがみついて、想いを伝える。

『ああ、もう……、どうして貴方はこうまで私を狂わせるのですか、小亮』
キスされて。


口を塞がれながら、突き上げられた。
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