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一章 華胥の夢

飛蛾の火に入るが如し

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俺は宗元の首に抱き付いて。
後ろを振り返り、あっち行ってろ、とばかりに手を払う仕草をした。

とどめに、ほっぺにチューをしてやる。


『………………!?』
耀はビタッと停止して。

『嘘でしょ……』
伯裕は涙目だった。

『ええ……』
信季はへたり込んでいる。


「よし、全員追うのを諦めて、停止したぞ」
『……罪作りな……』


*****


御史台の建物は皇宮とは違って、近代的というか。

……どう見ても、ビルだよな、これ。
皇宮を出たら、一気に世界観が変わったぞ!? まるで古代中国から未来世紀にタイムスリップしたようだ。

でも、出入り口を守っている哨兵しょうへいは、古代の兵隊風の服装だというミスマッチ。
何だこれ。


哨兵は俺と宗元を見て、目を剥いたが。
慌てて敬礼した。

指紋認証のエレベーターで最上階へ向かう。
宗元の私室には、指紋認証の上、網膜と静脈認証をクリアしないと入れないようだ。厳重だな。


中は、シンプルなオフィスのようだ。

大きなベッドは、仮眠用だろうか?

デスクには何も無かったが。手を置いたら、机からモニターが出てきて、キーボートらしき光が浮かんだ。ハイテクだー。
文字配列は、アルファベットではなかった。漢字に漢数字……。

パソコンもどきを立ち上げて、パスワードを入れている。

起動音が銅鑼っぽいのはギャグなのか?
MacintoshでもWindowsでもねえ……。计算机大能? どこの会社だよ?


*****


『……これが、現場照片しゃしんです』

画面には、爆破犯とされている宦官の遺体が写っている。
まるで、目の前にあるようにリアルな写真だ。

一見、自殺のように見えるが。

「吉川線……、ここ、抵抗の痕があるな。他殺だ。背後から首を絞められて、縄を外そうとしたんだ」
首に、引っ掻き傷。

『伯裕も同じことを言ってました。梁に縄を引っ掛けた状態で吊るし殺したのではないかと』


滑車みたいに、か?

索条痕が、斜めについている。
通常の首吊り自殺なら、こうはならない。病人が座った状態で手すりに紐をかけて自殺したケースならともかく。

「いや、顎に痕があるから、この角度だと、首に縄引っ掛けて、背負い投げみたいにして吊ったんじゃないか? この方法なら、力の弱い女性……はいないんだっけか。非力な俺でも、男一人吊り殺せる」


『……刑部尚書クビにして、陛下が兼任しませんか?』
本気の目だった。

皇帝を刑部尚書にスカウトすんな。
降格じゃねえか。


現役の刑部尚書は、犯行を気に病んでの自殺だと判断して、被疑者死亡で処理しようとしたらしい。
ダメじゃん。

「つか刑部尚書は普通、現場に出ないもんじゃないのか?」

警視総監みたいなもんだろ?
人を動かすほうじゃないか。

『皇宮には、身分が貴族以上でないと現場に入れないもので』
宗元は肩をすくめた。


なるほど。
だから犯人逮捕にわざわざ刑部尚書が来ていたのか。皇帝の住まいには、巡査レベルだと立ち入り禁止なんだな。

最近はどこの貴族も優秀な人材不足のようだ。
人口の偏りが問題なのか? 増えるのは主に金持ちがほとんどのようだし。


*****


皇宮に入るのが可能な人物は。
身分が高い者か、身元がわかっていて試験を通過し採用された宦官か。

とりあえず、皇宮勤めの他の宦官に、金回りなど怪しい素行の者はいなかったそうだ。


「そうなんだ。……足跡とか、採取できた?」

『それが、全自動掃除機が綺麗に土を慣らしてしまって……』
気まずそうに頭を掻いている。

吸い込んだゴミは、既に焼却炉だそうだ。

こうなると、全自動ってのも考えものだな。
皇宮だけでも広すぎるから、人力じゃきついんだろうけど。

『そもそも、皇宮……聖域で殺人事件自体、あってはならぬことです』


長い間、平和だったらしいしな。
まさか恋愛脳の宦官が皇帝殺害を企てるとか、誰も予想しねえよ。

その上、皇帝の寝所に爆発物仕込むとか。
そっちは動機もはっきりしてないんだからな。

しかし。
「俺を……を殺して、得する奴って。誰だ?」


そんな奴、いるのか?
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