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一章 華胥の夢

一葉落ちて天下の秋

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皇宮の、王宮内勤の宦官を全員集合させたところ。

出席しない者がいたので、皇宮周辺を捜索したら。皇宮の庭から、その宦官の首吊り死体が見つかったという。
その宦官は、特にどこの派閥にも属していない家の出だったという。

しかし、家族が金に困っていた。
それが最近、多額の送金があったという。

爆弾の材料を入手をしたのもその宦官名義で。それ以外、今のところ情報は無いらしい。

遺書もなく、犯行の動機も不明。
まさか恋愛脳宦官と同じではないだろう。


「口封じか……」

『あ、やっぱり口封じだよね。自殺に見せかけてあったけど、他殺だったし』
裏に、誰がいるのか。

『官僚の誰かですかねえ?』


皇帝には、もしもの時のために子供のクローンが用意されているらしい。
御しやすい子供を新しく皇帝に仕立て上げて、権力を自分達のものにする計画なのでは、と伯裕は言った。

へえ、クローンとか、SFの世界だな。


*****


『陛下ぁ、この件も陛下の華麗な名推理でちゃちゃっと解決しちゃってくださいよ~』
伯裕に肩を揺すられる。

「だから、俺は元クイズ王であって、探偵じゃないんだって……」
それも、異世界の元クイズ王ではあまり意味がない気がする。


今日も図書室で、国の歴史についてとか外交についての勉強中である。

皇帝をやるには、あまりにも知識不足だ。頼りがいのある三公に任せれば問題ないんだろうが。
お飾りの皇帝なんて、志半ばで亡くなった朱亮に申し訳ないからな。
やれるだけのことはやりたい。


『くいず王って何です?』
信季がカモミール茶を持ってきた。

お茶請けは焼き菓子。
カモミールには健胃効果があるんだよな。甘味があって、わりと好きだ。キク科のアレルギー持ちは飲んじゃ駄目だが。

「難しい問題を出されて、それに答える大会の優勝者……?」

改めて説明すると、アホみたいだな。
そんなので優勝して、何を得るというのだろう。

どんな難題だろうが、ググりゃ数秒で出るというのに。


『なるほど。でしたら、難事件も正解できるんじゃないですか? 実際、宦官による放火殺人を事前に防いでみせたじゃないですか』
『そうそう。爆破犯の犯行も未然に防いだことになるよね』

くっ、2人がかりで……。

「そりゃ、宗元が仕事熱心だったお陰だろ? 爆破物の存在まではわからなかったんだから」


*****


『それを含めて、陛下の”天命”かと存じます』

耀は、俺の髪を結いながら言った。
宦官の背後関係を一度洗いなおすため、その代理で、耀が俺の身の回りの世話を引き受けているのだ。
丞相なのに。

『前の陛下も、偶然なされたことが解決の糸口になった、ということが数多くありました』


『そうそう。天子は””を持っている、っていうしね』
伯裕も頷いている。

そうかなあ。
「本物と違って、俺は不思議な力なんか持ってないけど」

誇れるのは、ムダ知識の多さくらいだけど。
女もいない、歴史も違うこの世界では。半分以上、役に立たないものなんじゃないか?


『陛下……貴方は神に認められたの天子ですよ?』

本物とか言い切ったし。
何を根拠に。

『……次は冠ですが、重いと仰られていたので、簡易版でよろしいでしょうか』
優しい微笑みに、思わず見惚れてしまった。

「うん……、」


*****


『広陵丞相、吹っ切れたような感じだけど。何かあった?』
伯裕が耳打ちしてきた。
『……もしかして、捧げちゃった?』

「何を?」
捧げる?


『あ、OK。わかった。まだヤってないね。よかった』
ホッとしたように息を吐いている。

ああ、何だ。
エロい意味だったのか。

……純潔を捧げる、とか? 男の尻穴に純潔も何もないだろ。


「まだも何も。耀とはヤらないだろ。常識で考えて……」

『え、何で!? 嫌いなの!?』
伯裕は、目を剥かんばかりに驚いている。


「いや、嫌いなわけじゃないけど。だって、俺と同じ顔の恋人だったんだぞ。命張ってまであいつを助けた朱亮に対して、不貞にならないか?」


むう、と口を尖らせるな。いいトシした男が。
それでもイケメンなのが腹立つな。

そう、嫉妬である。
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