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一章 華胥の夢
雲外蒼天
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……ドッペルゲンガー?
幻覚か?
だが、この状況ではどの道助からないんだ。
それなら、希望を抱いたままの方がいい。
俺は、差し出された手を取った。
次の瞬間。
俺の周りから、熱気が引いた。
真っ白の、何も無い空間。
*****
『何でもする、と言ったな?』
俺と同じ顔をしたそいつは言った。
同じ顔なのに、やたらオーラというか。迫力がある。
「あ、ハイ」
『朕の代わりに、かの国を導け。それが為すべき天命である』
え? 同じ顔だから、自分の国で影武者でもやれってことか?
そりゃ、俺の頭脳ならどこでもそつなくやってはいけるだろうけど。さすがに親しい者を騙すのは難しいぞ? 共通の思い出がゼロなんだし。
『そち、名は何と申す』
「あ、東、亮です」
つい敬語になってしまう。
『朕は朱亮。姓は朱、諱は亮、字は劫。ひとは炎帝と呼ぶ。天子である』
天子は、皇帝のことだ。諱は同じ亮、か。
運命的、というのか。
炎帝……炎の中から出てきたし、火に強い皇帝なのだろうか?
俺と同じ顔をした皇帝は、にやりと笑った。
こんな笑い方、俺はしない。
『否、諡号だ。炎に焼かれ弑逆された故』
諡号って。死後につける名前じゃないですかヤダー!
弑逆とは、臣下・子など目下の者が、主君や親などを殺すことだ。
握ってる手、あったかいのに。
死人なのか!?
『朕は天命故、ここで消えるが。最期の力で悪足掻きをしてみたのだ』
きらきらと、光の粒子が皇帝を取り巻いている。
『先ほど披露した名推理とやらで、我が寝所に火を放った犯人を見事捕らえてみせるがいい。後は好きに生きろ』
ええ!?
ちょっと待って。
それって。朱亮さん、命を狙われちゃってるってことかよ!?
奸智術策渦巻く朝廷へ、かよわい俺に、単身で飛び込めと仰るので!?
っていうことは。
入れ替わったら、俺。すげー危険じゃない?
皇帝はどこか遠いところを見ているような表情で呟いた。
『余 甚だ惑う。儻しくは所謂天道、是か非か』
辞世の句か?
いや、そんなのはいいから。
きらきらと光の粒子になって消えていかないで!?
待ってってば!
せめて状況説明してくれよ!
それと。
俺は元・クイズ王であって、探偵じゃないんだぞ!
*****
『陛下、いかがなされましたか?』
気がついたら。
中華風な拵えの部屋の中。
長椅子に座っている状態で。
なにやら甘い声で喋る男に手を取られて、親しげに微笑まれているんだが。
誰だ? このイケメン。
陛下って呼ばれてるってことは。
本当に、入れ替わっちゃったんだな、皇帝と。
服も、さっき皇帝が着てたものになってる。
黒と金の刺繍入りの上衣にT字の肩衣を垂らし、中央で玉堅という翡翠の飾りで留めている。
下は下裳……スカートみたいな服で。
蔽膝という膝掛けを白い大帯で巻いて紳という黒い帯でとめてる感じ。
頭も重い。
冕冠の飾りがじゃらじゃらしてるし。
冕板という長方形の木製の板に、旒っていう飾りを皇帝は前後に十二、合計二十四旒つけてるんだ。
でもって、冠側面から玉笄と呼ばれる簪をさして、底部には纓と呼ばれる組紐がつく。
更に冕板の中央には天河帯と呼ばれる赤帯がついてて、前に垂れさせてる。
そりゃ重いわ。
運動不足の引きこもりニートには重過ぎる衣装である。
*****
皇帝は、自分は死者だというようなことを言ってた。
大騒ぎになっていない様子から見て、自分が死ぬ前まで時間を巻き戻して、俺と入れ替えたってことか?
昔の皇帝には、神様のような力があったというが。
伝説じゃなかったのか。
そんなとんでもない能力があるのに、何で俺と入れ替わることに使ったんだろう。
天命だからか?
自分の運命までは変えられなかったのか?
まあ、とりあえず命が助かったのは感謝するが。
誰に狙われてるんだ、俺。
というか皇帝は。
せめて登場人物の説明くらいしていってもいいだろうに。
幻覚か?
だが、この状況ではどの道助からないんだ。
それなら、希望を抱いたままの方がいい。
俺は、差し出された手を取った。
次の瞬間。
俺の周りから、熱気が引いた。
真っ白の、何も無い空間。
*****
『何でもする、と言ったな?』
俺と同じ顔をしたそいつは言った。
同じ顔なのに、やたらオーラというか。迫力がある。
「あ、ハイ」
『朕の代わりに、かの国を導け。それが為すべき天命である』
え? 同じ顔だから、自分の国で影武者でもやれってことか?
そりゃ、俺の頭脳ならどこでもそつなくやってはいけるだろうけど。さすがに親しい者を騙すのは難しいぞ? 共通の思い出がゼロなんだし。
『そち、名は何と申す』
「あ、東、亮です」
つい敬語になってしまう。
『朕は朱亮。姓は朱、諱は亮、字は劫。ひとは炎帝と呼ぶ。天子である』
天子は、皇帝のことだ。諱は同じ亮、か。
運命的、というのか。
炎帝……炎の中から出てきたし、火に強い皇帝なのだろうか?
俺と同じ顔をした皇帝は、にやりと笑った。
こんな笑い方、俺はしない。
『否、諡号だ。炎に焼かれ弑逆された故』
諡号って。死後につける名前じゃないですかヤダー!
弑逆とは、臣下・子など目下の者が、主君や親などを殺すことだ。
握ってる手、あったかいのに。
死人なのか!?
『朕は天命故、ここで消えるが。最期の力で悪足掻きをしてみたのだ』
きらきらと、光の粒子が皇帝を取り巻いている。
『先ほど披露した名推理とやらで、我が寝所に火を放った犯人を見事捕らえてみせるがいい。後は好きに生きろ』
ええ!?
ちょっと待って。
それって。朱亮さん、命を狙われちゃってるってことかよ!?
奸智術策渦巻く朝廷へ、かよわい俺に、単身で飛び込めと仰るので!?
っていうことは。
入れ替わったら、俺。すげー危険じゃない?
皇帝はどこか遠いところを見ているような表情で呟いた。
『余 甚だ惑う。儻しくは所謂天道、是か非か』
辞世の句か?
いや、そんなのはいいから。
きらきらと光の粒子になって消えていかないで!?
待ってってば!
せめて状況説明してくれよ!
それと。
俺は元・クイズ王であって、探偵じゃないんだぞ!
*****
『陛下、いかがなされましたか?』
気がついたら。
中華風な拵えの部屋の中。
長椅子に座っている状態で。
なにやら甘い声で喋る男に手を取られて、親しげに微笑まれているんだが。
誰だ? このイケメン。
陛下って呼ばれてるってことは。
本当に、入れ替わっちゃったんだな、皇帝と。
服も、さっき皇帝が着てたものになってる。
黒と金の刺繍入りの上衣にT字の肩衣を垂らし、中央で玉堅という翡翠の飾りで留めている。
下は下裳……スカートみたいな服で。
蔽膝という膝掛けを白い大帯で巻いて紳という黒い帯でとめてる感じ。
頭も重い。
冕冠の飾りがじゃらじゃらしてるし。
冕板という長方形の木製の板に、旒っていう飾りを皇帝は前後に十二、合計二十四旒つけてるんだ。
でもって、冠側面から玉笄と呼ばれる簪をさして、底部には纓と呼ばれる組紐がつく。
更に冕板の中央には天河帯と呼ばれる赤帯がついてて、前に垂れさせてる。
そりゃ重いわ。
運動不足の引きこもりニートには重過ぎる衣装である。
*****
皇帝は、自分は死者だというようなことを言ってた。
大騒ぎになっていない様子から見て、自分が死ぬ前まで時間を巻き戻して、俺と入れ替えたってことか?
昔の皇帝には、神様のような力があったというが。
伝説じゃなかったのか。
そんなとんでもない能力があるのに、何で俺と入れ替わることに使ったんだろう。
天命だからか?
自分の運命までは変えられなかったのか?
まあ、とりあえず命が助かったのは感謝するが。
誰に狙われてるんだ、俺。
というか皇帝は。
せめて登場人物の説明くらいしていってもいいだろうに。
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