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一章 華胥の夢

嚆矢濫觴

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十歳とおで神童、十五歳じゅうごで才子、二十歳はたち過ぎればただの人。
または、A man at five may be a fool at fifteen(五歳で大人並みの子は十五歳で馬鹿になる)……などと、誰が最初に言い出したのか。

真実である。ぐうの音も出ない。

ぐうの音の”ぐう”は呼吸がつまった時に発する声、擬声語という説と、日光にっこう東照宮とうしょうぐうのぐう説があったな。

日光を見ずして結構と言うな、というくらいで。
徳川家康は偉大なため、他に敵うものはないから宮の音も出ない、とか。
無理ありすぎだろ。

んなこたどうだっていい。
つい、ネタ元を探してしまうのは、もはや悪習ともいえる。


中学生まで、俺はクイズ王と呼ばれていた。

高学歴芸人だろうが現役T大生だろうが、俺の敵ではなかった。
IQは180以上。天才少年と謳われていたものだ。

当然、周りの人たちは末は博士か大臣か。有名進学校からT大または留学コースへ行くだろうと考えていた。
実際、中学は偏差値79のT大付属K中学へ通っていた。

そこでも勿論、成績はトップだった。


しかし。
世の中そう上手くはいかないものである。


*****


余裕ぶっこいて、推薦じゃなく一般入試に挑むはずだった数日前。

俺はインフルエンザに罹ってしまったのだ。
どっかのアホが、俺にうつしたせいだ。

インフル罹ったのに出歩くアホは死ね。特にマスクしない奴は地獄に堕ちろ。
だいたいインフルエンザウイルスは普通のマスクじゃ防げないんだっつの。無いよりはマシだが。
その上、ウイルスがついた手で触りまくれば、服なら10時間、床なら24時間は余裕で感染可能なウイルスが付着している。
テロリストと同じだ。バイオテロリスト。

ついでに歩き煙草をする奴も一緒に射殺されろ。
だいたい日本専売公社が煙草を兵隊に支給したり女子供が騙されるようなCM流してヤク中にしたのが悪い。
今更吸い過ぎは身体に悪いとか副流煙が何だとか言い出すなら販売自体中止にしろアホが。

日本に売り込んだアメリカなんかとっくに毒扱いだっていうのに。
鬼畜米英許すまじ。あいつら諸悪の根源じゃないか。
そもそもキリs(ry


などと、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いが如く。
憎しみが伝染させた奴から世界にまで発展し、世の中のすべてを呪いながら、三日寝込んだ。


*****


補欠で入ればいい?

冗談じゃない。
現役合格、首席以外はありえない。と、追試を蹴った。

それまで失敗という失敗を経験したことがなかった俺には、耐えられない屈辱であった。


外に出れば、あの子は高校受験に失敗したクイズ王の子だわー、などと噂をされるので、外に出るのも嫌になって。
そのままニートまっしぐらである。

そう、ニート。
 Not in Education, Employment or Training、その頭文字を取ってNEETという。

15~34歳までの非労働力人口のうち、通学・家事を行っていない者をニートと呼ぶのだ。二十歳な俺は、ニート真っ盛りだ。


家事労働? するかんなもん。めんどくせえ。

それまで出演料やら賞金やらでガッポリ稼いでたしな。
金を使うような趣味もないし。

癖で、知らないことなどあったら自分が納得するまで調べてしまうから、ひたすらネサフの日々だ。

ゲームとかやってる暇があったら知らない言葉を調べる。
そっちの方が楽しいし。

なのでゲームやアニメの用語も、やってもいないし観てもいないのに知ってたりする。
オタクにはにわかとかエアプと言われて嫌われるタイプの知識である。

食事はケータリングで充分。
健康食の弁当なんてもんも、冷凍であるし。

掃除だって、何でも屋に頼めば清掃業者より安い場合もある。
それに多少散らかってても死にはしない。


*****


ちなみに両親は、俺の出演料とか金の問題で揉めて、中学の時に離婚していた。
大金というのは、人の心を狂わせるものである。

母親が俺の稼いだ金で宝石とか買って、それを父親が咎めて大喧嘩。
そういう父親も、車を買おうとしたのがバレて。親戚中巻き込んでの大騒ぎだ。

そんな中、俺は自分の通帳持って、家出した。

唯一味方してくれた叔父さんを保証人に中古マンションの一室を買って。
それから悠々自適の一人暮らし、ってわけだ。


34歳まであと14年。
贅沢しなけりゃ暮らしていけるだろう。ニート万歳。

ありがとう、天才少年だった昔の俺!

”あの人は今”みたいな番組には絶対出ねえぞ!
いや、出演料による。

最低一本(業界用語で百万のこと)。
それ以下なら却下だ。


そんな俺の素敵なニート生活は、突然終止符を打った。
いや、打つことになりそうだ。
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