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天才剣士、異世界へ
海辺で朝練。
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翌朝。
さすがに基礎体力から違う竜人とは同じメニューはこなせないので。
自主練として、砂浜の走り込みとか柔軟とか素振りをしていた。
『し……神子、俺と手合わせしようぜー』
オリオンが木の棒を投げて寄越した。
……ん? オリオンが持ってるのは木じゃないな。
一見、棒のように見えるが、ふにゃっとしてる。
何だ?
『これ? 海綿。ゲオルグに「嫁に傷ひとつでも付けたら殺す」って渡されたー』
オリオンは笑顔だ。
ゲオルギオス……。仁王像みたいな形相でオリオンを見ている。こわっ。
っていうか、過保護すぎ!
「いや、大丈夫だから」
万一怪我をしても、キスすれば……って。ここで言うのはちょっとあれか。
『や、こんなんでも当たるとわりと痛いよ? んじゃ行くぜー、』
*****
次の瞬間にはもう目の前に来ていたオリオンの初撃を、何とか木刀で弾くことができた。
あっぶね。ヒヤっとした。
確かに、やわらかい材質でも、打撃が重い。
竜人の力は、相当強いからな。
『ん、いい反応』
オリオンは、にやりと笑って。
次は、足元を薙ぎ払うような一撃を出された。
咄嗟に後ろに跳んで、脇を狙う攻撃を防ぐ。
防戦するので手一杯だ。
これでも、かなり手加減はしてくれているのだろう。
しかし、自分よりも強い相手との手合わせは、とてもためになるものだ。
オリオンは単調的に見えて、意外に変則的な攻撃をしてくる。
人間型になって、まだ日も浅いのに。
さすがは赤の騎士隊長だ。
『それまで、』
クリストファーの合図で、試合終了。
うわ、手、痺れた……。
お互い、汗ひとつかいてないように見えるが。
俺の汗は、単にゲオルギオスの魔法で全部回収されてるだけだったり。竜人の体力、凄いな……。
「お疲れ様。相手してくれてありがとう」
『俺も勉強になったし、面白かったよ。まさか、全部防がれるとは思わなかった。俺もまだまだだなあ』
頭をかきながら、そんな謙遜を言って。
お疲れ、とユージンに背中を叩かれていた。
*****
二回戦はユージンだ。
さすがに強い。身も軽く、動きも切れがいい。
オリオンとの試合でエンジンが上がってなければ、とっくに一本取られてたところだ。危なかった。
やはり、攻撃を避けたり受けるだけで精一杯で。こちらからは打つ手なしだ。
『それまで、』
ようやくタイムアウトになった。
『ホントに全部防がれた……。さすが”死の光線”を察知するだけあるね』
びっくりしてる。
ユージンはわりと本気で当てに来ていたらしい。
『例の修行、やってみるかなあ。あれ、身につければ相当有利になるよ?』
『今からでも間に合いますかね……』
みんなで、気配を察知する修行を取り入れるかの検討をしている。
『修行って何です?』
地道に砂浜を走っていたオバデアが、ひょっこり顔を出した。
ユージンに修行内容を説明されて。
『さすがにそんなの不可能でしょ!?』と耳をぴんと立たせている。
是非お手本を見たい、と言われたので。
目隠しをして、海綿ボールを避けるデモンストレーションをすることになった。
投げるのは、ランダムな位置に立っているオバデア、オリオン、ユージンの三名だ。
投げる場所は移動してもOKだ。
クリストファーは本気出しそうだから、とゲオルギオスが止めていた。
見るからに不満そうなのを、例の珠を与えて黙らせていた。
飴玉やおしゃぶりじゃないんだからさあ……。
クリストファーがもぐもぐしてるのを横目に、目隠しをつける。
*****
『始め、』
クリストファーの合図で、意識を研ぎ澄ませる。
……左斜め後ろ。
気配を読んで、木刀でそれを弾き返す。……なんかふぎゃ、って聞こえた気が。
右足を狙う気配が来たので避けて。
……もうひとつ。
いくつか飛んできたのをかわしたり、木刀で弾いていく。
妙にしん、としているな。
何だ?
『それまで。終了です。お見事』
クリストファーの終了宣言で、目隠しを外すと。
オバデアがひっくり返っていた。
弾いたのが、モロに顔面に当たったようだ。
さっきのカエルが潰されたみたいな声は、オバデアだったのか。
「わあ、ごめん。痛かった?」
『いえいえ、驚いただけです。おれなんか、目を開けてても避けられないってのに。すごいっすね!』
目がキラキラしている……。
『ほんとすごいよ。暴投したのは無反応なのに、見事に当たる玉だけ避けてた……』
ユージンもキラキラしている。
みんな感心して、思わず黙り込んでしまったという。
これから、今のを朝の練習メニューに組み込んでみるそうだ。
剣崎流古武術の門下生が増えた。
「最初は、わざと殺気をこめてボールを投げて、徐々に慣らしてくといいよ」
みんな、殺気は読めるようなので。
目隠しをして、殺気のこもったボールを避ける練習からだ。
慣れてきたら、普通に不意打ちで投げるようにしていけばいいと思う。
『なるほど……』
*****
朝練を終えて。
ゲオルギオスはみんなに例の珠を配って回復させて。
俺は個別にキスされた。
……すっかり回復したよ。ありがとう。
周りの視線がアレだけど。
って、何でわざわざ人前でするんだよ!?
何のアピールなんだよ!?
新婚だからなあ、って感じで生温かく見守られてしまっている。
もういいや。旅の恥はかきすてだ!
さすがに基礎体力から違う竜人とは同じメニューはこなせないので。
自主練として、砂浜の走り込みとか柔軟とか素振りをしていた。
『し……神子、俺と手合わせしようぜー』
オリオンが木の棒を投げて寄越した。
……ん? オリオンが持ってるのは木じゃないな。
一見、棒のように見えるが、ふにゃっとしてる。
何だ?
『これ? 海綿。ゲオルグに「嫁に傷ひとつでも付けたら殺す」って渡されたー』
オリオンは笑顔だ。
ゲオルギオス……。仁王像みたいな形相でオリオンを見ている。こわっ。
っていうか、過保護すぎ!
「いや、大丈夫だから」
万一怪我をしても、キスすれば……って。ここで言うのはちょっとあれか。
『や、こんなんでも当たるとわりと痛いよ? んじゃ行くぜー、』
*****
次の瞬間にはもう目の前に来ていたオリオンの初撃を、何とか木刀で弾くことができた。
あっぶね。ヒヤっとした。
確かに、やわらかい材質でも、打撃が重い。
竜人の力は、相当強いからな。
『ん、いい反応』
オリオンは、にやりと笑って。
次は、足元を薙ぎ払うような一撃を出された。
咄嗟に後ろに跳んで、脇を狙う攻撃を防ぐ。
防戦するので手一杯だ。
これでも、かなり手加減はしてくれているのだろう。
しかし、自分よりも強い相手との手合わせは、とてもためになるものだ。
オリオンは単調的に見えて、意外に変則的な攻撃をしてくる。
人間型になって、まだ日も浅いのに。
さすがは赤の騎士隊長だ。
『それまで、』
クリストファーの合図で、試合終了。
うわ、手、痺れた……。
お互い、汗ひとつかいてないように見えるが。
俺の汗は、単にゲオルギオスの魔法で全部回収されてるだけだったり。竜人の体力、凄いな……。
「お疲れ様。相手してくれてありがとう」
『俺も勉強になったし、面白かったよ。まさか、全部防がれるとは思わなかった。俺もまだまだだなあ』
頭をかきながら、そんな謙遜を言って。
お疲れ、とユージンに背中を叩かれていた。
*****
二回戦はユージンだ。
さすがに強い。身も軽く、動きも切れがいい。
オリオンとの試合でエンジンが上がってなければ、とっくに一本取られてたところだ。危なかった。
やはり、攻撃を避けたり受けるだけで精一杯で。こちらからは打つ手なしだ。
『それまで、』
ようやくタイムアウトになった。
『ホントに全部防がれた……。さすが”死の光線”を察知するだけあるね』
びっくりしてる。
ユージンはわりと本気で当てに来ていたらしい。
『例の修行、やってみるかなあ。あれ、身につければ相当有利になるよ?』
『今からでも間に合いますかね……』
みんなで、気配を察知する修行を取り入れるかの検討をしている。
『修行って何です?』
地道に砂浜を走っていたオバデアが、ひょっこり顔を出した。
ユージンに修行内容を説明されて。
『さすがにそんなの不可能でしょ!?』と耳をぴんと立たせている。
是非お手本を見たい、と言われたので。
目隠しをして、海綿ボールを避けるデモンストレーションをすることになった。
投げるのは、ランダムな位置に立っているオバデア、オリオン、ユージンの三名だ。
投げる場所は移動してもOKだ。
クリストファーは本気出しそうだから、とゲオルギオスが止めていた。
見るからに不満そうなのを、例の珠を与えて黙らせていた。
飴玉やおしゃぶりじゃないんだからさあ……。
クリストファーがもぐもぐしてるのを横目に、目隠しをつける。
*****
『始め、』
クリストファーの合図で、意識を研ぎ澄ませる。
……左斜め後ろ。
気配を読んで、木刀でそれを弾き返す。……なんかふぎゃ、って聞こえた気が。
右足を狙う気配が来たので避けて。
……もうひとつ。
いくつか飛んできたのをかわしたり、木刀で弾いていく。
妙にしん、としているな。
何だ?
『それまで。終了です。お見事』
クリストファーの終了宣言で、目隠しを外すと。
オバデアがひっくり返っていた。
弾いたのが、モロに顔面に当たったようだ。
さっきのカエルが潰されたみたいな声は、オバデアだったのか。
「わあ、ごめん。痛かった?」
『いえいえ、驚いただけです。おれなんか、目を開けてても避けられないってのに。すごいっすね!』
目がキラキラしている……。
『ほんとすごいよ。暴投したのは無反応なのに、見事に当たる玉だけ避けてた……』
ユージンもキラキラしている。
みんな感心して、思わず黙り込んでしまったという。
これから、今のを朝の練習メニューに組み込んでみるそうだ。
剣崎流古武術の門下生が増えた。
「最初は、わざと殺気をこめてボールを投げて、徐々に慣らしてくといいよ」
みんな、殺気は読めるようなので。
目隠しをして、殺気のこもったボールを避ける練習からだ。
慣れてきたら、普通に不意打ちで投げるようにしていけばいいと思う。
『なるほど……』
*****
朝練を終えて。
ゲオルギオスはみんなに例の珠を配って回復させて。
俺は個別にキスされた。
……すっかり回復したよ。ありがとう。
周りの視線がアレだけど。
って、何でわざわざ人前でするんだよ!?
何のアピールなんだよ!?
新婚だからなあ、って感じで生温かく見守られてしまっている。
もういいや。旅の恥はかきすてだ!
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