禍祓師・天羽翼の事件簿 ~半妖のヤンデレ弟子は夜毎師匠に精を注ぐ~

篠崎笙

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secretcase:善哉の告解

et perducant te(そして貴方を導く)

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「そんな淫らに腰を振って。すごくいやらしいですよ。この光景、永遠に見ていたい」
腰を掴み、更に激しく腰を叩き付ける。

じゅぷじゅぷといやらしい音が立ち、それが更に翼様の羞恥を煽るようだ。

「あ、……善哉、中、早く……っ、」
欲しい、と言われて。

ああ、わたしも貴方が欲しくてたまらない。


「貴方は永遠に、わたしのものだ……」
抱き締めて。中に精を放った。

翼様は、忘我の状態で。
それでも、こくりと頷いてくれた。


願わくば。
この時が、永遠に続くよう。


‡*‡*‡


翌朝。
大部屋で朝食を食べていたら、オスカーが拗ねていた。

二人で他の部屋に行ってしまったため、蛇神が拗ね、夜遅くまで愚痴につき合わされ。
朝、仲居に起こされて起き上がったら。蛇神が裸で抱きついていたそうだ。

百足や蛇は、じめっとした暖かい場所が好きだからな。
一昨日、わたしもやられかけたので、オスカーの方へ追いやったが。


「あれ、絶対誤解されたわ……!」
「貞操は無事だったなら良かったじゃないか。オスカーは好みじゃなかった?」

夜叉丸は男でも気にしない派だという。
何だと。

小学生の姿の翼様を見て以来、すっかり保護者ポジションだと思っていたが。


『小坊主か。まあ、好みの範囲ではあるが。我は合意の無い相手に手を出したりせぬ』
それならよし。

「翼様、おかわりは?」
「僕はもういい」

櫃に、かなりご飯が余ってしまっている。
男四人だからか、かなり多めに入れてくれたようだ。勿体無い。

『半妖、我はまだ足りぬぞ』
茶碗を差し出された。

「…………」
全部食わせるか。

差し出された茶碗に、残りのご飯を盛って渡した。
てんこ盛りになったが、気にしないだろう。本来これは仏に出す盛り方で、縁起が悪いものだが。神も仏も似たようなものだ。


『おお、気が利くな』
普通に喜んで食べている。

しかしよく食べるなこの蛇。


‡*‡*‡


宿を出、道成寺へ向かう。

「蛇神と一緒に道成寺参りって、考えてみればすごいな」
翼様は実体化している蛇神を見上げた。

『蛇の眷族の中では有名で、ここに参る者も多いと聞くぞ』
「ああ、だから夜叉丸も来たかったんだ」
などと雑談をしながら寺を見て回ったが、特に引っ掛かるものもなく。

蛇塚に向かった。


『もうし、そこなる位の高きお方』
『我のことか』
女の声がし、蛇神が返事をした。

『ええ、尊きお方。貴方様でございます。どうか、我があるじをおたすけくださいまし』
蛇塚の裏から、白い蛇が鎌首をもたげている。

邪気は無い。何かの眷族だろう。

蛇神は翼様からの許可を伺っている、頷かれたので。

『よし、話を聞こう』
話を請けた。


白蛇は、旅の法師が何も害を与えていないのに、蛇妖であるというだけの理由で自分の主を封じたのだ訴えている。

加害者はだいたいそう言う。
自覚が無いものだ。


蛇神は、ふむ、と頷いて。

『あいわかった、と言いたいところだが。今、我はこの者の守護神である。許可なくば動けぬのだ』
殊勝なことを。

白蛇は、ちらりと翼様の方を伺った。
『まあ。おかしなものを連れておいでで。……呪われものではございませぬか! しかも時逆とは』

「知ってるのか?」
詰め寄る翼様に、白蛇は驚いたように飛び上がった。蛇も飛ぶのか……。

『詳しくは、我があるじがご存知です』
「そうなると。……行ってみるしかないか」


もし邪悪なものでも、話だけ聞いて、退治すればいいだけだろう。


‡*‡*‡


白蛇の案内で、道成寺奥の院の方へ向かう。
とやらが封じられた場所は、更にその奥だという。


『避けよ』
蛇神は、植物に命じ、木や枝が自分から避けるようにしてわたしたちを通した。

神力か。
魔術や呪術とは違う系統の力だ。生物を傷つけない。


しばらく歩くと、朽ちた社があった。
その下から、妖気。

しかし、邪気は感じない。そこまで強くないものだろう。

「善哉、その社どかして」
「はい」

社を崩さないように持ち上げ。
別の場所に置いておく。もう一度、使うかもしれないので。

社の下には、封印の文字が書かれた大きな石があった。
この字、どこかで。

「あれ。これ、わりと最近のものだ。2,30年くらい前の封印だな」
「お爺ちゃん……」
オスカーは知らないようだ。
百年単位経過した封印を目にすることが多いので、これは新しいほうだと。


翼様が微妙な表情でそれを見ているので、気付いた。

ああ、見覚えがあると思えば。翼様のご実家の系統の術か。
おそらく孫弟子辺りが、腕試しに手当たり次第に封じたものなのだろう。

「……”解”」
翼様がすい、と指で文字をひと撫ですると、封印の文字は消えた。

「ひゃあ、それだけかいな!?」

それは。実家の術なのだから、解くのも簡単だろう。
言わぬが花である。


‡*‡*‡


石が割れ、白煙が出、裸体の女が現れた。

濡れたような長い黒髪、豊満な胸。下半身は蛇。蛇妖か。
白蛇が慌ててあるじに服を着せている。

『そなたがわらわを助けてくれたおのこかえ?』
蛇妖は、翼様の顔を覗き込んでいる。
『おや、時逆ではないか。これは素晴らしい。毎夜番えば、永遠の婿となるであろうな』

どこかの蛇神と同じようなことを言ったが。

「時逆の呪いについて何かご存知でしたら、教えてもらえると助かります」
翼様は完全にスルーして質問している。


蛇妖は、千姫と名乗った。
長らく越前に住んでいたが、全国を見て周りたいと思い旅立ったが、蛇姫の伝説があるという道成寺に向かう途中で旅の法師に封じられたと。

「越前……もしや、小浜という場所では?」
『そうじゃ。何故わかった?』

千姫は自我の残っていた水蛭子神とも知り合いだった。
当時、おかしな術を使うものが現れたと話題だった。それが”時逆の呪い”だったという。

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