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ほろほろしょうゆの焼きむすび
ほろほろしょうゆの焼きむすび-1
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序
ふいに、甘い匂いがした。
おとっつあんの作るおからの匂いに違いない。しっとりとして、混ぜてある大根の葉がしゃきしゃきと音を立てる。考えるだけで口の中に唾が溜まる。
いけない、そろそろ店を開ける時間だ。
お鈴は床几から立ち上がろうとしたが、足が動かない。泥にめりこんでいるようだ。
おとっつあん、助けて。そう叫ぼうと厨房に顔を向けたとたん、景色が歪んだ。
「――おとっつあんには深いわけがあったんだ。必ず帰ってくるよ」
頬を撫でるおっかさんの指は枯れ木のように細く、皺ばんでいる。顔はやつれ、紙きれのように白い。
薬湯を飲ませてやりたいが、そんな銭はない。せめて白湯でもと思ったが、腕が動かない。大好きなおっかさんを助けたいのに、どうにもできない。
気づけばおっかさんが少しずつ遠ざかっていく。
――待って。行かないで。
――あたしを置いていかないで。
手も足も重く動かず、周りが黒に染められていった。夜の闇よりももっと暗い、光一つない黒。
しだいに瞼が重くなる中で、何かが聞こえた。
誰かの呼ぶ声。低くて、ざらついて、でもどこか安心する声だ。
手に感触があった。丸くて、もちもちしている。
ふと、おっかさんの握り飯を思い出した。
店を閉めた後、お櫃に残った飯でおっかさんは握り飯をこしらえてくれた。塩をぱらりと振っただけの、ただの握り飯。でも三人で肩を寄せて食べる時間は、一日の中で一番幸せだった。
――おっかさん。
小さくつぶやきながら、掴んだものを口に運ぶ。
柔らかな「それ」をそっと口に入れ、ゆっくりゆっくりと噛む。
噛むごとに広がり、とたんに口いっぱいになる――
とにかく甘ったるく、じょりじょりし、よく分からない苦み。
形容しがたい不味さ。
頭をがつんとやられたような衝撃を受け、お鈴は現実に引き戻された。
「おい、でえじょうぶか」
目をぱっちり開けると、いかつい男がしゃがんでいた。手には茶色いものを持っている。男は心配そうにお鈴に顔を寄せてきた。
「ま……」
「ま?」
「まずい」
叫ぶようにそれだけ伝えて、お鈴は再び意識を闇の中に落とした。
第一話 ほろほろ焼きむすび
一
「まあ、親分もそんくらいにしてやんなさいよ」
「ばかやろう、こっちは人助けしてやったんだぞ。飯も食わせてやって、それを『まずい』と言われて怒らねえ奴がどこにいる」
「まずいもんをまずいって言っただけじゃないのさ。嘘をつく奴はでえ嫌いだってよく言うじゃない」
「それとこれとは別もんだ」
親分と呼ばれる男と、たしなめる若い男。二人の前で縮こまりながら、お鈴は「本当にすみません」と謝り続けていた。
意識が朦朧としていたお鈴を助けてくれたのは、親分と呼ばれた男らしい。というのは、その経緯を若い男が説明してくれたからだ。
店を閉めようと外に出たところ、ふらふら歩くお鈴を見つけた。店に連れ帰って寝かし、疲れと察するや握り飯をこしらえて食べさせてくれた。ところが、お鈴は「まずい」と吐き捨て、再び倒れ込んだ。それを怒りに打ち震えながらも介抱してくれていたというから、感謝してもしきれない。
「――娘さんもさ、悪気があって言ったわけじゃなし」
先ほどからお鈴をかばってくれている男は二十代半ばくらい。鳩羽鼠色の着物に根付をたらし、整った顔には紅をさしていて、まるで女形のようだ。
親分と呼ばれた男が「ふん」と鼻を鳴らす。
ずんぐりと大柄な体に、平たい顔。いかつく目と目の間は少し広がっていて、どことなくひきがえるを思い出させる。年は五十くらいだろうか。髷は小さくちょこんと結われていたが、全身から貫禄が溢れていた。
再び謝ろうとしたお鈴を、若い男が止めた。
「あんたは気にしなくていいのよ。あたしは弥七。よろしくね」
「あ、ありがとうございます」
「あんた、名は何ていうんだい」
「鈴です」
「ふうん、いくつさ」
「十六です。あ、あの。助けてくださり、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げるお鈴を見て、ひきがえる男は再び鼻を鳴らした。
「お鈴ちゃんを助けたこの怖い親父さんはね、銀次郎って言うのさ。そしてここは料理屋『みと屋』」
弥七は両手を広げて、芝居がかった動きで体ごとぐるりと一回りした。
「昨年の暮れに開いたばっかりでねえ。店は綺麗だし、お足も安い。神田明神から歩いて少し、水道橋を渡ってすぐ。とりたてて不便なとこでなし」
お鈴はあらためて店の中を見回した。
壁の板がぴかぴかに白く、確かに店の設えは新しい。小上がりに、床几が二つ。紺の暖簾が入り口に立てかけられている。奥には厨房があり、調理台と竃が見えた。
――おとっつあんの店とよく似ている。
鼻の奥がつんとした。
「だけど、客足はさっぱり。なんでか分かるかい」
弥七が楽しげに顔を寄せる。ぷんと白粉の匂いが鼻先をかすめ、その拍子に先ほどの握り飯の味が口の中に甦った。
「あ、飯のせいだと思ったでしょ」
「あ、いえ、その」
銀次郎が「なんだと」とどすの利いた声を上げ、お鈴は「ひっ」とあとずさりした。
弥七はからりと笑う。
「たしかに親分の料理の腕はからっきしだけどね、そうじゃあないのよ」
「おい、弥七、やめねえか」
「この銀次郎の親分はね」
にやにやしながら弥七が言葉を継ぐ。
「やくざの親玉なのさ。それも札付きのね。そんな店、誰も来たくないわよねえ」
何と答えていいやら分からず、お鈴は目を白黒させた。
*
がらりと看板障子が引きあけられ、店に風が舞う。
一同が目を向けると、商人と思しき男が立っていた。肩で息をして、ずいぶんと慌てた様子だ。
「おう、客かい」
銀次郎がどすの利いた声を出す。本人はこれでも歓迎しているつもりなのだろうが、脅しているようにしか聞こえない。その迫力にたじろいだ男は、おどおどと返事をした。
「あいすみません。こ、この辺で男の子どもを見かけなかったでしょうか。年は八つくらい。絣の着物を着て、手の甲に黒子があります」
「なんでえ、客じゃねえのか」銀次郎はあからさまにがっかりし、「そんな小僧は見てねえよ」とぶっきらぼうに言う。
「あたしも見てないですねえ」
男は肩を落とし「そうですか」と立ち去ろうとした。
全身から疲れが漂っている後ろ姿。だらりと垂れた腕。
それを見ていると、お鈴はどうにもむずむずしてきた。おとっつあんの店にもよくこんな客が訪れた。そんな時、おとっつあんは必ず声をかけて――
思わず「あの」と、呼び止めていた。
男は「なんでしょう」と弱々しく振り向く。
「あの、よかったら、少し休まれてはいかがですか。ずいぶんお疲れのようですし」
男は少し戸惑ったものの「急ぎますので」と再び去ろうとする。
そこに、弥七が加勢した。
「そうよ、あんたふらふらじゃないの。休んでいきなさいよ」
「急いでいるんです」と少しむっとした様子の男を、銀次郎が一喝した。
「休んでけって言ってるのが分からねえのか、この野郎。人の親切はありがたく受け取るもんだろうが」
男はその場で飛び上がり、真っ青な顔で床几に座った。
「ちょっと親分、驚かせてどうするのさ」
「ふん」
弥七に叱られている銀次郎に、お鈴は声をかけた。
「あの、よかったら厨房を借りてもいいでしょうか」
「何の用だ」
訝しげな銀次郎に、おずおずと返事をする。
「飯を作りたいんです」
「飯だと」
鋭い眼光で射殺されそうになり、お鈴は目をそらしながら首肯した。
「わけを言え」
「あの人、ずいぶんと疲れているようだったので」
「見りゃあ分かる。それで、何で飯を食わそうと思ったんだ」
言おうか言うまいかためらった末、お鈴は口を開いた。
「め、飯が道を開くんです」
「道」
怯えながら、目をつむる。
「心と身体が疲れた時には、まず飯だ。どうにもならねえと思った時こそ、飯を食う。旨いもんで腹いっぱいになれば、道も開ける」
最後は叫ぶような声で言い切った。
あたりを包んだ沈黙に耐え切れず、お鈴がおそるおそる目を開けると、銀次郎がじっと見つめている。眼の奥に真剣な色があった。
「おめえ、その言葉、誰から聞いた」
「あ、あたしのおとっつあんです。おとっつあんは料理屋をやってました」
「おめえの親父はどうした」
「おとっつあんは」と言いかけて、涙が出そうになる。それをぐっと堪えて答えた。
「おとっつあんは突然いなくなりました。おっかさんも病で死んで、あたしはおとっつあんを捜しに江戸に来たんです」
銀次郎は袂に腕を入れ、お鈴の顔を見つめ続けた。値踏みしているようにも、睨んでいるようにも見える。
何か変なことを、まずいことを言ってしまったのだろうか。料理を作りたいなんて言わなければよかった。今すぐ謝って立ち去ろう。そんな思いが頭を駆け巡る。
「やってみろ」
「え」
「やってみろって言ってんだ、ばかやろう」
よく分からないまま銀次郎に一喝され、お鈴は慌てて台所に向かった。
台所はお世辞にも整っているとは言いがたかった。
まな板や包丁など、置き方がなっていない。料理人の命とも言える包丁は、置く場所や置き方一つで料理への向き合い方が見える。おまけに調理台には青菜が雑然と並んでいた。まるで料理屋とは思えない台所に、お鈴は深くため息をつく。
どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
道具を整理しながら思う。
助けてもらったのはありがたいが、こんなよく分からない所、早く出ていくべきだ。
女形のような男は調子がよくて怪しいし、ひきがえるのような男はやくざの親分だという。それが本当ならば、岡場所に叩き売られてしまうかもしれない。礼を述べて早く立ち去るべきなのだ。
それは分かっているのだけれど、疲れ切った男の姿を見ると、つい口を挟まずにはいられなかった。
『心と身体が疲れた時には、まず飯だ。どうにもならねえと思った時こそ、飯を食う。旨いもんで腹いっぱいになれば、道も開ける』
父の声が耳奥で響く。
よし、とお鈴は腹の底に力を入れた。
台所の食材を集め、包丁を握る。冷たい木の感触に懐かしさを覚え、もう一度ぐっと握りなおす。知らないうちに口元には笑みがこぼれていた。
「お待たせしました」
お鈴が盆の上に丼を載せて戻ってくると、男は小さくなって座り、銀次郎と弥七はぺちゃくちゃ話し続けていた。
「すみません、台所の野菜を使わせてもらいました」
頭を下げると、銀次郎は「ふん」と鼻を鳴らす。
「それは何だ」
「粥です」
「見栄きったわりに普通の食いもんじゃねえか」
「親分、そんなことは後でいいでしょ。ほら、これはあんたのためにお鈴ちゃんが作ったんだから、食べな」
男は目の前に置かれた丼をじっと見つめ、周りをきょろきょろと見回した後、覚悟を決めたように木杓子を手に取った。
丼にはどろりとしたものが盛られている。
それを掬い、口に運ぶ。一拍遅れて目が見開かれ、ごくりと呑み込んだ。
もう一口、二口。だんだん口に運ぶ回数が増える。その様子を三人は無言で見つめた。
「うまい」
しみじみとした声が漏れる。
お鈴は息を吐いて肩の力を抜いた。白くなるほど握りしめていた手をゆっくり開く。知らず知らずのうちに緊張して全身に力が入っていたようだ。
気づくと丼が空になっていた。
ふう、と息をついた男の眼には、落ち着いた光が戻っていた。
「本当に美味しかった。出汁が効いてるだけでなくさっぱりしていて、腹にするする入りました」
「生姜の汁を絞ったんです。あと、精が付くようにゆでた芋をすり潰して混ぜています」
「それは気づかなかった。添えてある三つ葉もしゃきしゃきしてとても旨かった」
「ありがとうございます」
「突然押し掛けたにも拘わらず、こんな美味しいものを食べさせてもらい、本当にすみません。私は仙一と申します。向島の紙問屋『高木屋』を営んでおります」
男は乱れた着物の袂を揃え、あらたまって三人に深々と頭を下げた。
そのつむじを見下げながら、銀次郎が言う。
「何があったか話したらどうだ」
男は顔を上げて一瞬迷ったが、両手に力を入れて口を開いた。
「実は、倅の仙太郎が昨日からいなくなったのです」
銀次郎の眉がぴくりと動いた。
「小僧はいくつだ」
「八つです」
「遊びざかりじゃねえか。放っておきゃあ帰ってくる。心配のしすぎじゃねえのか」
「それが、違うのです」
仙一が口調を強めた。
「仙太郎は屋敷の中で消えたのです」
仙一の話はこうだ。
帳場で仕事をしていたところ、女房が走ってきて「仙太郎が消えた」と言い出した。部屋で遊んでいたはずなのに、いつの間にかいなくなっていた。おおかた厠にでもいるのだろうと相手にしなかったが、女房は家じゅう捜したと言う。
女房の剣幕に負け、店の者も手伝って捜してみたが確かにいない。
高木屋の出入り口は二つ。店の玄関と裏戸のみ。店では仙一が仕事をしていたから、仙太郎が通れば分かるし、店の者も気づく。裏戸は長屋に面していて、外に出た者がいれば誰かが見ているはず。
つまり、家の中から忽然と姿を消してしまったのだ。
神隠しに違いないと女房は金切り声を上げ、捜してくるよう仙一に命じた――
「そいつは妙だな」
「方々捜したのですがどうにも見つからず。倅も心配ですが、このままでは仕事にも差しさわりが出てしまい、どうすればいいのか」
「仕事だと」
いらいらと体を細かく揺らす仙一に、銀次郎が鋭い目を向ける。
「紙問屋の仕事は大変なのです。同じ白い紙でも何種類もあり、用途によってまったく異なります。お客様のお求めを伺ってちゃんとした紙をご用意しなければいけません。私がいないと、店の者もどの紙を選べばいいか分からない。ああ、そうだ、早く帰らないと」
仙一は頭をがりがりとかき、はっとした顔で「すみません。いらぬ話をいたしました」と頭を下げ、「馳走になりました」と足早に店を去っていった。
「奇妙な話ねえ。家の中で姿を消すなんて、まるで黄表子だ」
弥七が障子を閉めながら言った。
「ほんとうに神隠しなんでしょうか」
なんとも気味の悪い話を聞いて、お鈴はぶるりと背筋を震わせる。気のせいか、店の空気が少し冷たくなったようにも感じた。
「さあて。神様なんてあたしは信じてないけど、思いもよらないことが起きるのがこの世だからねえ。それにしてもお鈴ちゃん、料理上手いじゃない」
「いえ、あの、勝手なことをしてすみませんでした」
「いきなりあんな飯を作れるなんてたいしたもんよ。どっかの誰かさんにも教えてやりたいわ」
弥七が目を向けたが、銀次郎はむっつりと黙っている。
「ちょっと親分、聞いてんの。ねえ」
銀次郎は腕組みをしたまま何やら考え込んでいたが、突然かっと目を見開き、お鈴を見据えて言った。
「おめえ、ここで働け」
二
「ありがとうございます。また来ます」
「お力になれず申し訳ございません」
口入れ屋を出て、お鈴は深いため息をついた。朝からこれで三軒目だが、どこにもいい働き口がない。
雲一つない青空を見上げ、「よし、もう一軒」とつぶやいた。
昨晩はみと屋の二階に泊めてもらった。銀次郎達は近くの長屋に住んでいるので、二階が空いていたのだ。
早く立ち去りたかったのだが、行き当たりばったりで町に出た身。多少の荷物を持っていたものの身を寄せるあてはなく、一晩を過ごさせてもらうことにした。
もともとは甲州街道の外れで暮らしていたので、江戸の町には頼る相手がいない。人のたくさんいる場所ならば、少しでもおとっつあんの情報が入るのではないか。その一心で出てきてしまったが、あらためて自分の無謀さに気づき恐ろしくなる。
お鈴に「ここで働け」と言った銀次郎だが、理由は語らなかった。月ぎめの給金を払うし、二階で暮らしていいという。
住むあてすらないお鈴にとっては、ありがたい話だ。どこかに腰を落ち着けて金を稼がないと、父を捜すことはできない。
ただ、さすがにその場で返事はしなかった。
ふいに、甘い匂いがした。
おとっつあんの作るおからの匂いに違いない。しっとりとして、混ぜてある大根の葉がしゃきしゃきと音を立てる。考えるだけで口の中に唾が溜まる。
いけない、そろそろ店を開ける時間だ。
お鈴は床几から立ち上がろうとしたが、足が動かない。泥にめりこんでいるようだ。
おとっつあん、助けて。そう叫ぼうと厨房に顔を向けたとたん、景色が歪んだ。
「――おとっつあんには深いわけがあったんだ。必ず帰ってくるよ」
頬を撫でるおっかさんの指は枯れ木のように細く、皺ばんでいる。顔はやつれ、紙きれのように白い。
薬湯を飲ませてやりたいが、そんな銭はない。せめて白湯でもと思ったが、腕が動かない。大好きなおっかさんを助けたいのに、どうにもできない。
気づけばおっかさんが少しずつ遠ざかっていく。
――待って。行かないで。
――あたしを置いていかないで。
手も足も重く動かず、周りが黒に染められていった。夜の闇よりももっと暗い、光一つない黒。
しだいに瞼が重くなる中で、何かが聞こえた。
誰かの呼ぶ声。低くて、ざらついて、でもどこか安心する声だ。
手に感触があった。丸くて、もちもちしている。
ふと、おっかさんの握り飯を思い出した。
店を閉めた後、お櫃に残った飯でおっかさんは握り飯をこしらえてくれた。塩をぱらりと振っただけの、ただの握り飯。でも三人で肩を寄せて食べる時間は、一日の中で一番幸せだった。
――おっかさん。
小さくつぶやきながら、掴んだものを口に運ぶ。
柔らかな「それ」をそっと口に入れ、ゆっくりゆっくりと噛む。
噛むごとに広がり、とたんに口いっぱいになる――
とにかく甘ったるく、じょりじょりし、よく分からない苦み。
形容しがたい不味さ。
頭をがつんとやられたような衝撃を受け、お鈴は現実に引き戻された。
「おい、でえじょうぶか」
目をぱっちり開けると、いかつい男がしゃがんでいた。手には茶色いものを持っている。男は心配そうにお鈴に顔を寄せてきた。
「ま……」
「ま?」
「まずい」
叫ぶようにそれだけ伝えて、お鈴は再び意識を闇の中に落とした。
第一話 ほろほろ焼きむすび
一
「まあ、親分もそんくらいにしてやんなさいよ」
「ばかやろう、こっちは人助けしてやったんだぞ。飯も食わせてやって、それを『まずい』と言われて怒らねえ奴がどこにいる」
「まずいもんをまずいって言っただけじゃないのさ。嘘をつく奴はでえ嫌いだってよく言うじゃない」
「それとこれとは別もんだ」
親分と呼ばれる男と、たしなめる若い男。二人の前で縮こまりながら、お鈴は「本当にすみません」と謝り続けていた。
意識が朦朧としていたお鈴を助けてくれたのは、親分と呼ばれた男らしい。というのは、その経緯を若い男が説明してくれたからだ。
店を閉めようと外に出たところ、ふらふら歩くお鈴を見つけた。店に連れ帰って寝かし、疲れと察するや握り飯をこしらえて食べさせてくれた。ところが、お鈴は「まずい」と吐き捨て、再び倒れ込んだ。それを怒りに打ち震えながらも介抱してくれていたというから、感謝してもしきれない。
「――娘さんもさ、悪気があって言ったわけじゃなし」
先ほどからお鈴をかばってくれている男は二十代半ばくらい。鳩羽鼠色の着物に根付をたらし、整った顔には紅をさしていて、まるで女形のようだ。
親分と呼ばれた男が「ふん」と鼻を鳴らす。
ずんぐりと大柄な体に、平たい顔。いかつく目と目の間は少し広がっていて、どことなくひきがえるを思い出させる。年は五十くらいだろうか。髷は小さくちょこんと結われていたが、全身から貫禄が溢れていた。
再び謝ろうとしたお鈴を、若い男が止めた。
「あんたは気にしなくていいのよ。あたしは弥七。よろしくね」
「あ、ありがとうございます」
「あんた、名は何ていうんだい」
「鈴です」
「ふうん、いくつさ」
「十六です。あ、あの。助けてくださり、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げるお鈴を見て、ひきがえる男は再び鼻を鳴らした。
「お鈴ちゃんを助けたこの怖い親父さんはね、銀次郎って言うのさ。そしてここは料理屋『みと屋』」
弥七は両手を広げて、芝居がかった動きで体ごとぐるりと一回りした。
「昨年の暮れに開いたばっかりでねえ。店は綺麗だし、お足も安い。神田明神から歩いて少し、水道橋を渡ってすぐ。とりたてて不便なとこでなし」
お鈴はあらためて店の中を見回した。
壁の板がぴかぴかに白く、確かに店の設えは新しい。小上がりに、床几が二つ。紺の暖簾が入り口に立てかけられている。奥には厨房があり、調理台と竃が見えた。
――おとっつあんの店とよく似ている。
鼻の奥がつんとした。
「だけど、客足はさっぱり。なんでか分かるかい」
弥七が楽しげに顔を寄せる。ぷんと白粉の匂いが鼻先をかすめ、その拍子に先ほどの握り飯の味が口の中に甦った。
「あ、飯のせいだと思ったでしょ」
「あ、いえ、その」
銀次郎が「なんだと」とどすの利いた声を上げ、お鈴は「ひっ」とあとずさりした。
弥七はからりと笑う。
「たしかに親分の料理の腕はからっきしだけどね、そうじゃあないのよ」
「おい、弥七、やめねえか」
「この銀次郎の親分はね」
にやにやしながら弥七が言葉を継ぐ。
「やくざの親玉なのさ。それも札付きのね。そんな店、誰も来たくないわよねえ」
何と答えていいやら分からず、お鈴は目を白黒させた。
*
がらりと看板障子が引きあけられ、店に風が舞う。
一同が目を向けると、商人と思しき男が立っていた。肩で息をして、ずいぶんと慌てた様子だ。
「おう、客かい」
銀次郎がどすの利いた声を出す。本人はこれでも歓迎しているつもりなのだろうが、脅しているようにしか聞こえない。その迫力にたじろいだ男は、おどおどと返事をした。
「あいすみません。こ、この辺で男の子どもを見かけなかったでしょうか。年は八つくらい。絣の着物を着て、手の甲に黒子があります」
「なんでえ、客じゃねえのか」銀次郎はあからさまにがっかりし、「そんな小僧は見てねえよ」とぶっきらぼうに言う。
「あたしも見てないですねえ」
男は肩を落とし「そうですか」と立ち去ろうとした。
全身から疲れが漂っている後ろ姿。だらりと垂れた腕。
それを見ていると、お鈴はどうにもむずむずしてきた。おとっつあんの店にもよくこんな客が訪れた。そんな時、おとっつあんは必ず声をかけて――
思わず「あの」と、呼び止めていた。
男は「なんでしょう」と弱々しく振り向く。
「あの、よかったら、少し休まれてはいかがですか。ずいぶんお疲れのようですし」
男は少し戸惑ったものの「急ぎますので」と再び去ろうとする。
そこに、弥七が加勢した。
「そうよ、あんたふらふらじゃないの。休んでいきなさいよ」
「急いでいるんです」と少しむっとした様子の男を、銀次郎が一喝した。
「休んでけって言ってるのが分からねえのか、この野郎。人の親切はありがたく受け取るもんだろうが」
男はその場で飛び上がり、真っ青な顔で床几に座った。
「ちょっと親分、驚かせてどうするのさ」
「ふん」
弥七に叱られている銀次郎に、お鈴は声をかけた。
「あの、よかったら厨房を借りてもいいでしょうか」
「何の用だ」
訝しげな銀次郎に、おずおずと返事をする。
「飯を作りたいんです」
「飯だと」
鋭い眼光で射殺されそうになり、お鈴は目をそらしながら首肯した。
「わけを言え」
「あの人、ずいぶんと疲れているようだったので」
「見りゃあ分かる。それで、何で飯を食わそうと思ったんだ」
言おうか言うまいかためらった末、お鈴は口を開いた。
「め、飯が道を開くんです」
「道」
怯えながら、目をつむる。
「心と身体が疲れた時には、まず飯だ。どうにもならねえと思った時こそ、飯を食う。旨いもんで腹いっぱいになれば、道も開ける」
最後は叫ぶような声で言い切った。
あたりを包んだ沈黙に耐え切れず、お鈴がおそるおそる目を開けると、銀次郎がじっと見つめている。眼の奥に真剣な色があった。
「おめえ、その言葉、誰から聞いた」
「あ、あたしのおとっつあんです。おとっつあんは料理屋をやってました」
「おめえの親父はどうした」
「おとっつあんは」と言いかけて、涙が出そうになる。それをぐっと堪えて答えた。
「おとっつあんは突然いなくなりました。おっかさんも病で死んで、あたしはおとっつあんを捜しに江戸に来たんです」
銀次郎は袂に腕を入れ、お鈴の顔を見つめ続けた。値踏みしているようにも、睨んでいるようにも見える。
何か変なことを、まずいことを言ってしまったのだろうか。料理を作りたいなんて言わなければよかった。今すぐ謝って立ち去ろう。そんな思いが頭を駆け巡る。
「やってみろ」
「え」
「やってみろって言ってんだ、ばかやろう」
よく分からないまま銀次郎に一喝され、お鈴は慌てて台所に向かった。
台所はお世辞にも整っているとは言いがたかった。
まな板や包丁など、置き方がなっていない。料理人の命とも言える包丁は、置く場所や置き方一つで料理への向き合い方が見える。おまけに調理台には青菜が雑然と並んでいた。まるで料理屋とは思えない台所に、お鈴は深くため息をつく。
どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
道具を整理しながら思う。
助けてもらったのはありがたいが、こんなよく分からない所、早く出ていくべきだ。
女形のような男は調子がよくて怪しいし、ひきがえるのような男はやくざの親分だという。それが本当ならば、岡場所に叩き売られてしまうかもしれない。礼を述べて早く立ち去るべきなのだ。
それは分かっているのだけれど、疲れ切った男の姿を見ると、つい口を挟まずにはいられなかった。
『心と身体が疲れた時には、まず飯だ。どうにもならねえと思った時こそ、飯を食う。旨いもんで腹いっぱいになれば、道も開ける』
父の声が耳奥で響く。
よし、とお鈴は腹の底に力を入れた。
台所の食材を集め、包丁を握る。冷たい木の感触に懐かしさを覚え、もう一度ぐっと握りなおす。知らないうちに口元には笑みがこぼれていた。
「お待たせしました」
お鈴が盆の上に丼を載せて戻ってくると、男は小さくなって座り、銀次郎と弥七はぺちゃくちゃ話し続けていた。
「すみません、台所の野菜を使わせてもらいました」
頭を下げると、銀次郎は「ふん」と鼻を鳴らす。
「それは何だ」
「粥です」
「見栄きったわりに普通の食いもんじゃねえか」
「親分、そんなことは後でいいでしょ。ほら、これはあんたのためにお鈴ちゃんが作ったんだから、食べな」
男は目の前に置かれた丼をじっと見つめ、周りをきょろきょろと見回した後、覚悟を決めたように木杓子を手に取った。
丼にはどろりとしたものが盛られている。
それを掬い、口に運ぶ。一拍遅れて目が見開かれ、ごくりと呑み込んだ。
もう一口、二口。だんだん口に運ぶ回数が増える。その様子を三人は無言で見つめた。
「うまい」
しみじみとした声が漏れる。
お鈴は息を吐いて肩の力を抜いた。白くなるほど握りしめていた手をゆっくり開く。知らず知らずのうちに緊張して全身に力が入っていたようだ。
気づくと丼が空になっていた。
ふう、と息をついた男の眼には、落ち着いた光が戻っていた。
「本当に美味しかった。出汁が効いてるだけでなくさっぱりしていて、腹にするする入りました」
「生姜の汁を絞ったんです。あと、精が付くようにゆでた芋をすり潰して混ぜています」
「それは気づかなかった。添えてある三つ葉もしゃきしゃきしてとても旨かった」
「ありがとうございます」
「突然押し掛けたにも拘わらず、こんな美味しいものを食べさせてもらい、本当にすみません。私は仙一と申します。向島の紙問屋『高木屋』を営んでおります」
男は乱れた着物の袂を揃え、あらたまって三人に深々と頭を下げた。
そのつむじを見下げながら、銀次郎が言う。
「何があったか話したらどうだ」
男は顔を上げて一瞬迷ったが、両手に力を入れて口を開いた。
「実は、倅の仙太郎が昨日からいなくなったのです」
銀次郎の眉がぴくりと動いた。
「小僧はいくつだ」
「八つです」
「遊びざかりじゃねえか。放っておきゃあ帰ってくる。心配のしすぎじゃねえのか」
「それが、違うのです」
仙一が口調を強めた。
「仙太郎は屋敷の中で消えたのです」
仙一の話はこうだ。
帳場で仕事をしていたところ、女房が走ってきて「仙太郎が消えた」と言い出した。部屋で遊んでいたはずなのに、いつの間にかいなくなっていた。おおかた厠にでもいるのだろうと相手にしなかったが、女房は家じゅう捜したと言う。
女房の剣幕に負け、店の者も手伝って捜してみたが確かにいない。
高木屋の出入り口は二つ。店の玄関と裏戸のみ。店では仙一が仕事をしていたから、仙太郎が通れば分かるし、店の者も気づく。裏戸は長屋に面していて、外に出た者がいれば誰かが見ているはず。
つまり、家の中から忽然と姿を消してしまったのだ。
神隠しに違いないと女房は金切り声を上げ、捜してくるよう仙一に命じた――
「そいつは妙だな」
「方々捜したのですがどうにも見つからず。倅も心配ですが、このままでは仕事にも差しさわりが出てしまい、どうすればいいのか」
「仕事だと」
いらいらと体を細かく揺らす仙一に、銀次郎が鋭い目を向ける。
「紙問屋の仕事は大変なのです。同じ白い紙でも何種類もあり、用途によってまったく異なります。お客様のお求めを伺ってちゃんとした紙をご用意しなければいけません。私がいないと、店の者もどの紙を選べばいいか分からない。ああ、そうだ、早く帰らないと」
仙一は頭をがりがりとかき、はっとした顔で「すみません。いらぬ話をいたしました」と頭を下げ、「馳走になりました」と足早に店を去っていった。
「奇妙な話ねえ。家の中で姿を消すなんて、まるで黄表子だ」
弥七が障子を閉めながら言った。
「ほんとうに神隠しなんでしょうか」
なんとも気味の悪い話を聞いて、お鈴はぶるりと背筋を震わせる。気のせいか、店の空気が少し冷たくなったようにも感じた。
「さあて。神様なんてあたしは信じてないけど、思いもよらないことが起きるのがこの世だからねえ。それにしてもお鈴ちゃん、料理上手いじゃない」
「いえ、あの、勝手なことをしてすみませんでした」
「いきなりあんな飯を作れるなんてたいしたもんよ。どっかの誰かさんにも教えてやりたいわ」
弥七が目を向けたが、銀次郎はむっつりと黙っている。
「ちょっと親分、聞いてんの。ねえ」
銀次郎は腕組みをしたまま何やら考え込んでいたが、突然かっと目を見開き、お鈴を見据えて言った。
「おめえ、ここで働け」
二
「ありがとうございます。また来ます」
「お力になれず申し訳ございません」
口入れ屋を出て、お鈴は深いため息をついた。朝からこれで三軒目だが、どこにもいい働き口がない。
雲一つない青空を見上げ、「よし、もう一軒」とつぶやいた。
昨晩はみと屋の二階に泊めてもらった。銀次郎達は近くの長屋に住んでいるので、二階が空いていたのだ。
早く立ち去りたかったのだが、行き当たりばったりで町に出た身。多少の荷物を持っていたものの身を寄せるあてはなく、一晩を過ごさせてもらうことにした。
もともとは甲州街道の外れで暮らしていたので、江戸の町には頼る相手がいない。人のたくさんいる場所ならば、少しでもおとっつあんの情報が入るのではないか。その一心で出てきてしまったが、あらためて自分の無謀さに気づき恐ろしくなる。
お鈴に「ここで働け」と言った銀次郎だが、理由は語らなかった。月ぎめの給金を払うし、二階で暮らしていいという。
住むあてすらないお鈴にとっては、ありがたい話だ。どこかに腰を落ち着けて金を稼がないと、父を捜すことはできない。
ただ、さすがにその場で返事はしなかった。
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