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しおりを挟む剥き出しになった上半身に、ゴクリと真島の喉が上下する。
いつもの情けない顔も柔らかな眼差しもどこにもなくて、ただそれは欲に塗れた男の目だった。
真島に欲情されている。
半ば強制的に知ってしまって、怖気づきそうになる気持ちを隠すように額に手の甲を当てて顔を覆う。
「…あ、ご、ごめんっ。怖がらないで。大好きだよ。酷いことしないから…っ」
真島はそんな俺の行動にハッとしたようで、取り繕うように俺の頬に手を伸ばす。
だけどその呼気は苦しそうにあがっていて、これ以上を求めているのがもう見て取れた。
「…こ、怖がってない。いいから好きにしろ」
「――うん、ごめん」
本当に余裕がないんだろう。
前に喧嘩した時は意地でも手を出さない、みたいな感じだったくせに、真島はすぐに俺の身体に口付けてきた。
いけない、これ以上はしてはいけない、そう思いながらも止められないんだろう。
肌をなぞられ舌で確かめられて、生々しい感触に身体が反応してしまう。
渇望するように何度も繰り返されて、その度にビクリと身体が疼く。
意図してない甘い声が口から漏れてしまって、羞恥に燃えるような熱さが込み上げてくる。
「…っあ、なんかも…すげー…恥ずい」
「うん、ごめん…っ」
壁に押し付けられながら、必死に俺の身体に口付ける真島の頭を見下ろす。
顔が見たくなってずぶ濡れになっている髪に手を伸ばすと、その前髪をかきあげた。
匂い立つほど酷く色気を含んだ視線が俺を見上げて、ゾクリと背筋に甘い響きが這い上がる。
「…欲しい。高瀬くんが欲しいんだ。心も身体も、全部欲しい。高瀬くん、全部、全部俺にちょうだい」
まるで洗脳するような甘ったるい声音で言われた。
堪らず目を瞑る。
ああもう、俺の持っているものなんか全部真島にくれてやる。
心も身体も全てがずぶずぶに真島に浸かっていて、何も考えられない。
「…好きだよ。愛してる。ね、高瀬くんこっち見て」
もう色々いっぱいいっぱいだから目を閉じたのに、真島はこっちを見ろと強要してくる。
目の前の顔が見られず目を堅く閉じたままでいたら、瞼に口付けられ、啄むように何度も唇にキスされた。
ぐずぐずな気持ちになりながらうっすらと目をあけると、待ち望んでいたようにコツンと額を合わせられる。
綺麗な瞳と視線が絡んだ。
「――俺を好きだと言って、高瀬くん」
ああ、やばい。
コイツまた人をこんな状態にさせてから、おねだりして来る。
真島はどうしても、俺の言葉が欲しいらしい。
限界まで堪えながら、あとは俺の言葉一つを待ち望んでいる。
その言葉を聞こうと、必死に俺を甘やかす。
与えられる愛情の深さに耐えきれず手を離したら、逃さないと指先を絡め取られる。
後ずさろうと逃げ腰になればピッタリと真島に付くように腰を引き寄せられる。
なんとか覚まそうと吐き出した熱ごとキスで絡め取られて、目を閉じれば耳が痺れてしまいそうな愛の言葉を囁かれる。
限界だった。
顔が熱くて頭の芯がくらくらして、俺は腰砕けになりながら力なく真島の胸を押す。
「た、高瀬くん?」
「ちょ…ちょっと待ってくれ。…ちょっと、タイム」
「…っえ?えっ?」
俺は肩で息をしながら、咽返りそうなほど濃厚な愛情に目眩を覚えていた。
出しっぱなしのシャワーには、頭を冷やす効果なんか全くなかった。
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