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しおりを挟む俺が真島と付き合って、二回目の夏休みが始まる。
この夏、俺の家に衝撃的な事件が起きた。
「噓だろ…」
「いやあああ」
母親の叫び声が耳をつんざく。
むわっとする暑い室内。窓の外でミーンとうるさいほど無く蝉の声。
滴り落ちる汗。
そう、エアコンが壊れた。
「もぉー、新しいの買うお金なんかないー。梅乃なんとかしてよ」
「俺は電気屋じゃねーんだよ」
「ちょっと私のお客さんに買ってもらえるか聞いてみるっ」
「やめろ」
ゲシっと背中を蹴る。
店以外で余計な金使わせるとか、どう考えても見返り求められんだろ。
「バイト代で買えるっちゃ買えるけど…。免許取りに行きたいんだよな」
「あーん、免許取ってくれたら便利だからそっちのがいいー」
「お前人をアシに使う気だろ」
テヘっとババアが舌を出してきたから殺意がわく。
どの道高校卒業するまで車は買えないし乗れないが。
「扇風機で我慢するか。夜は涼しくなんだろ」
「いいこと考えた!冷蔵庫ずっと開けてたら冷房代わりになるんじゃない?」
「中身腐んだろーが。それに電気代考えろ」
絶対やるなよ、と釘を刺してからさっさと出かける用意をする。
帰りにアイス買ってきてという呑気な声を無視して、電気屋へ行くため家を出た。
ジリジリと痛いほどの日差しを感じながら、熱い息を吐き出して太陽を見上げる。
もう8月に入ってしまった。
真島とは終業式以来、一度だけしか会ってない。
電話は毎日してる。
ただ俺のバイトと就職活動、アイツの夏期講習、おまけに塾に通い始めたせいでマジで時間が合わなくなってしまった。
その上7月下旬から真島は、塾主催のニ週間の勉強合宿だかに参加してしまって今はどこか遠い地で頑張っている。
合宿直前の夜、突然訪ねてきて寂しいと大泣きした真島が、なんだかもう夢のようだ。
「あれ、高瀬じゃん」
駅前通りを歩いていたら、声を掛けられた。
見れば最近はあまり絡んでなかった友人達がいた。
高一の頃はよく夜カラオケ行ったり安いチェーン店で飯食って暇潰したりと遊んでた奴らだ。
「おー、久しぶり」
「お前暇?これから合コンやろうって話なんだけど人足りなくてちょうど困ってたんだよ」
「無理。俺これから重要任務があるから」
「なに」
「エアコン壊れたから電気屋行く途中なんだよ」
「はぁ?そんなの親に任せろよ」
任せたら冷蔵庫が冷房になんだよバカ野郎。
とは言わないでおく。
「まあ暇なら良かった。最近プリンスばっかで付き合い悪いんだからたまには付き合え」
「無理だって言ってんだろ。それにそこまで真島と遊んでねーよ」
なんて言い合いしている間に、相手の女の子たちが来てしまった。
さすがにそうなったらいきなり帰るとか、初っ端から盛り下げるような台詞はタブーだ。
こうなったらもう仕方ない、どうせ暇だし少し付き合ってやるかと俺は髪を掻いた。
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