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しおりを挟むキスされて、無意識に開けた唇からすぐに舌が入り込んでくる。
舌を絡め合う気持ちよさに頭が蕩けて、ゾクゾクと込み上げる熱に耐えるように真島のシャツを握りしめる。
「…好き。大好きだよ」
鼻先がつく距離で甘く囁かれる。
目元に唇を押し付けられ、指先で頬や耳を愛おしむようにくすぐられる。
頭が酸欠になったみたいにぼーっとして、なんだか夢を見ているようだった。
愛されていることを強制的に覚え込ませるような仕草に、どうしようもなく身体が疼くような感覚を覚える。
それは二度と信じられない、なんて俺が思うことがないように、どこまでもどこまでも甘ったるく真島は俺に愛情を注ぐ。
ともすればずぶずぶに溺れさせて、二度と帰れなくさせようとしているんじゃないかと怖くなるほどに。
「高瀬くんだけだよ。…俺の大事な、大切な人」
言葉の一つ一つにも溢れるほどの愛情を感じて、耳まで痺れてしまうんじゃないかと思った。
顔が熱くて、心臓がうるさくて、もうどうにかなりそうだ。
耐えきれず目を伏せて息を吐き出したら、逃さないとでも言うようにまた唇を重ねられた。
本当にどこまでも俺を愛でるように、宝物のように扱われる。
与えられる愛情の大きさに心が苦しくて、だけど幸せで堪らない。
真島とずっと一緒にいたら、こんな風にずっと過剰なまでの愛情をもらえるんだろうか。
俺に触れる熱い手が、酷く求めてくる唇が、あまりにも気持ちいい。
「一緒にいようね。…約束、ちゃんと守ってくれる?」
こんなどろどろに甘やかしながらそれを聞くなんて、卑怯だ。
誤解は解けてもう約束を破るつもりはなかったが、それじゃなくてもこんなの、頷くしか無いに決まってる。
「…卒業まで、一緒にいる」
若干言わされたような感じがしたが、その言葉を口にした瞬間、どうしようもなく心が震えた。
必死に溢れ出しそうな涙を、真島を抱きしめることで隠す。
「一緒にいたい」
もう一度大事にその言葉を紡いで、俺はぎゅっと目の前の身体に縋り付いた。
俺を果てしなく求め続ける真島はもう歯止めが聞かない状態だったが、これ以上は俺の方も余計な事を口走ってしまいそうなので、そろそろ勉強しろと促した。
俺にばっかり気を取られてコイツの勉強を疎かにしてしまってはいけない。
こんな大事な時期に俺のせいで成績落ちても困るし。
「ずっと高瀬くんに触ってたいなぁ…」
真島は俺を抱きしめて、首に顔を埋めながらいやいやと首を振る。
その仕草に心掴まれる思いだったが、宥めるようにくしゃりと頭を撫でてやったら少ししてゆっくり俺の身体を離した。
だが不安そうに俺の瞳を覗き込んでくる。
「も、もう俺の事疑わない?」
「疑わねーよ。ちゃんと反省してる。ごめんな」
「うん、好きだよ」
なんかちょっと会話が噛み合ってない気もしたが、まあいいか、と微笑んでやる。
切なげに歪む顔に、また抱き締められた。
だから勉強をしろ。
なんとか真島を机に座らせ教科書とノートを開かせて、俺は対面の椅子に座る。
が、真島はちらちらと俺を見ている。
集中出来ないんだろう。
「帰るぞ」
「待ってっ。ちゃんとやる」
慌てたようにシャーペンを走らせ始める。
真島が勉強しているのを頬杖をついて眺めながら、俺はぼんやりとすぐそこに迫る夏休みに思いを馳せる。
去年は一緒に住んでるんじゃないかと思えるほど、真島を家に呼んでいた気がする。
暇さえあれば家事炊事雑用させていた。
今年の夏休みも真島と一緒にいられるんだろうか。
ゆっくりは出来なくても、それでも昼休みには必ず真島の顔を見れる学校のほうが今の俺としては有難かった。
こんなに待ち望んでいない夏休みは、初めてだった。
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