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しおりを挟むそれから二人でのんびりと歩いた。
ここに来たのは三回目なのに、今日が初めてなんじゃないかというほど目にした光景は新鮮に見えた。
今まで俺は本当に適当に女の子と付き合ってきたんだなと、若干申し訳ない気持ちになるくらいだ。
いよいよ土産コーナーまで来てそれじゃあ帰ろうかと言ったところで、真島がまた何か言いたげな顔で足を止める。
「なに、まだなんか心残りあんのかよ」
真島が思い残すことがないように、行きたい場所は全部回ってやりたい。
そう思って首を傾けたら、真島はチラチラと土産コーナーを見る。
「あ、あの…。だ、ダメかもしれないけどっ…」
そう言ってデートに誘ってきた時みたいに、顔を真っ赤にさせて俯かせる。
相当言いづらいことがあるらしい。
だが別にコイツの発言が突拍子もない事はもう分かっていて、今更引いたりなんかしない。
「早く言えよ。なんでも聞いてやるから」
一体今度は何を言うつもりなんだと若干期待が入り混じった視線で見上げる。
大抵のことは今の俺なら叶えてやれる。
真島のことを甘やかしてやりたい。
コイツの喜ぶ顔がもっと見たい。
真島は俺の言葉にパアッと表情を明るくしてから、照れたように口を開く。
「な、なにかね。記念にお揃いのものがほしいんだけど…」
――ドクリ、と心臓が音を立てた。
急激に背筋に冷たい何かが這い上がっていく。
「それは駄目だ」
何か思うより先に、言葉がもう出ていた。
思いの外低く響いた俺の言葉に、ビクリと真島の肩が揺れる。
そんなものを持ったら、残ってしまう。
別れた後に俺を思い出すものなんか、一つだって無いほうが良い。
「…あっ、ご、ごめ――」
あっという間に真島の瞳がどこか怯えたように一変する。
視線が彷徨い、自分の言葉に酷く後悔したように顔が青褪めていく。
それでようやく俺は今しがたの自分の発言に気付いた。
なんでも聞いてやると言ったくせに、酷い言い方をしてしまった。
「…あ、悪い。ほらお揃いとか恥ずかしいんだよ。ほんとお前はガキだな」
「う…ご、ごめん」
そう言って俺はさっさと帰るぞと真島に背を向ける。
さっきまで大喜びしてた顔が、あっという間にシュンと意気消沈してしまった。
その表情にまた胸が締め付けられる。
恥ずかしいなんて思ってない。
本当は真島の言葉が、素直に嬉しかった。
別れた後も真島と一緒にいたこの高校生活を忘れないように、繋がっていられるものが欲しいと思ってしまった。
だけどそんな一時の感情に流されて、真島をずっと縛り付けるような物を持ってはいけない。
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