ベタボレプリンス

うさき

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 あいつは一体なんだったんだろう、という疑問は思いの外早く解けた。

 翌日の昼休み、懲りずに弁当を持って俺の教室へと足を運んできた真島を見つける。
 その隣に、あの女男がいた。
 何やら真島に必死に女男が話しかけていて、真島が笑顔でそれに対応している。
 
 あまり関わりたくないとは思ったが、真島が弁当を持ってる限り避けては通れない道だ。
 真島も女男もどうでもいいが、あの弁当は食いたい。

「ダメだよ。ほら、教室戻ろ?普通科の生徒となんか関わらないほうがいいよ」

 少し近づいて聞こえてきた会話。
 なんか非常に失礼な事言ってんな。
 というか昨日俺と対峙した時とは、随分声のトーンが違うじゃねーか。
 
「ユキは心配性だなあ。高瀬くんは悪い人じゃないよ。友達もたくさんいるし、きっとユキも話したらすぐ好きになれるよ」

 ニコニコと真島が対応しているが、なるほど。
 昨日の出来事が何だったのか、全貌がようやく見えてきた。
 あの女男、真島の事で怒っていたのか。

 てっきり人違いの失礼な奴とばかり思っていたが、残念ながら全く人違いじゃなかった。
 というかお前ら目立つから、もめるなら他所でやれ。

「違うんだよ。騙されてるんだって、あいつはお前の名前すら――」
「奏志」

 その名前を呼んだら、ビクリと面白いほど肩を跳ねさせて真島はこちらに向いた。
 俺の発言にかなり驚いているようで、パクパクと金魚のように口を開閉させて赤くなっている。

 なるほど、奏志って真島の事だったのか。
 今呼んで確信したが、初めて下の名前知った。
 俺は真っ直ぐ真島の元へ行くと、その手を掴む。

「早く弁当食おうぜ。な、二人で」

 ニコリとわざとらしく笑顔を作る。

 真島は夢でも見ているんじゃないかと疑うレベルの、心ここにあらずな表情をしていた。
 ちらりとユキと呼ばれていた女男を見れば、『ありえない』みたいな顔で若干震えて固まっていてちょっと笑えた。

「あ…じゃあ、ユキ。俺行くね。またあとで」
「ちょっ…奏志」

 慌てたように言ったその女男の顔に、ニヤリと一つ勝ち誇ったように笑ってやる。
 それからさっさと真島の手を引いて屋上を目指した。

 別にここまでする必要は全く無いが、昨日の失礼すぎるアイツの発言はムカついたし、これくらいしてもバチは当たらねーだろ。
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