ベタボレプリンス

うさき

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 五限目中に送ったメッセはあっさりOKを貰って、放課後昇降口で待ち合わせることにした。
 HRを終えてさっさと向かおうとしたら、教室前の廊下に真島が立っているのが見えた。

 ソワソワしてるし、あれはどう見ても俺待ちだろう。
 かと思ったらなんか女子に話しかけられてるし。
 俺に対する態度とはエライ違う様子で、何やらきゃいきゃいとはしゃいでる女子に爽やか笑顔で対応している。

 おいそこの女子共知ってるか?お前らの目の前にいるイケメンは号泣して俺に告白してきたんだぜ?
 なんて胸中で妙な優越感に浸る俺は、相当性格悪いと思う。

「おい真島、お前部活じゃねーの」
「たっ、高瀬くん!」

 そろそろ女子に囲まれてる真島を救出してやるかと声を掛けたら、真島はぱっと女子の集団を飛び出してこっちに来た。
 マジで犬かよ。

 どこか残念そうでいて高嶺の花でも見るような女子の視線をチクチクと感じるが、そんなのは知ったこっちゃない。
 ほんと俺が真島なら女子にヤリたい放題しまくっているが、コイツには女子とヤリたいとかって性欲はないんだろうか。

「これから部活なんだけど…その、高瀬くんが帰る前にもう一度顔見たいなって」
「えーと、昼会ったよな?」
「はは、うん。変だよね。ごめん」
「いや謝らなくていいけどさ。お前ってほんと趣味おかしいよな」

 まあ色々と完璧な奴だから、一つくらい変なところがあってもおかしくはないが。
 あれ、ってことはコイツの欠点って俺を好きなことじゃね?

「おかしくないよ。本当はずっと見ていたい」

 そう言って真島は少し顔を赤くして、はにかんだように表情を崩した。
 それは男でもハッとするほど綺麗な笑顔で、俺はとっさに次の言葉がでてこなかった。

「あ、それじゃあ俺部活行くね。帰り道気をつけて」
「あ…ああ。真島も部活頑張れよ」
「うんっ。ありがとう」

 もう一度満面の笑みを俺に向けて、真島は機嫌良さそうに踵を返していく。
 俺はといえば一瞬でも真島の笑顔にあてられた事実に気付き、今頃になってげんなりとしていた。




 咲希ちゃんとの放課後デートはわりといい感じの雰囲気で終わり、ちょっと押せば今日中にヤれたんじゃねーかなという感じだった。
 まあ初日にいきなりヤろうなんてがっつきは良くない。
 それに一応真島と付き合ってるわけだし、俺はグレーゾーンはあっても二股はしない主義だ。

 というわけで日もとっぷりくれた帰り道。
 俺はあっさりと決めた。

「よし、真島と別れるか」

 俺に従順すぎる真島を楽しめなくなるのは少し残念だが、まあどの道長く続けるようなモンじゃない。
 少しの間しか真島のことは知らないが、悪いやつじゃないしさっさとあいつの目を覚まさせてやろう。
 そういや明日弁当作ってきてくれるって言ってたし、ちょうどいいからその時にでも話せばいい。
 
「つか真島の弁当楽しみだな。肉いれてってメッセ送っとこ」
 
 この時の俺はまだ、真島がどれほど本気で自分の事を好きなのかということがちっとも分かっていなかった。
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