3 / 251
2
しおりを挟む「お前ってゲイなの?」
「ちょっ!?いやっ…えーっと」
廊下へと足を進めながら何気なく聞いたら、面白いほど茹でダコ状態で身振り手振りテンパられた。
挙動不審すぎる。
「えっと…ち、違うと思う」
「でも俺の事好きなんだろ?」
「あ…わっ…それは」
なんなんだ。
しどろもどろで口をモゴモゴとさせる真島に目を細める。
俺が好きじゃないならそれはそれでいいが、だったらあの告白はなんだ。
そもそも俺の一言一言にこう毎度アタフタされていたら会話が成り立たない。
女なら許せるが男のこの態度とか、正直苛立ちしか湧かないんだが。
「ご、ごめん。俺緊張しててっ…。でもそのっ、好きになったのは高瀬くんが初めてだから…」
「へー」
やっとのことでそう言った真島の言葉を軽くあしらって、俺は「うめのーん」と手を振ってきた数人の女子にニヘラと笑って手を振り返す。
うめのんとは女子が呼ぶ俺の愛称で、梅乃というどこぞのばーちゃんみたいな俺の下の名前からきている。
あ、全国の梅乃さんごめんなさい。
まあどうせ真島と一緒にいるからわざわざ俺の名前呼んできたんだろうが、それでも女子に構われれば嬉しいと思うのは男の性か。
「高瀬くんって、ほんと友達たくさんいるよね」
「そうか?お前に比べれば大したことねーよ」
「えっ、俺全然そんなことないけど…」
いやいや学園のアイドルが何をおっしゃりますか。
謙遜も過ぎれば嫌味ってもんですよ王子。
なんて思うがコイツはわりと真面目に言っているからタチが悪い。
真島と付き合い始めてまだ数日だが、コイツが噂通りの裏表のない爽やかくんだということはよく分かった。
正直その素直な性格が眩しいほどだ。
なんてひねくれたことを考えていたら、さっき俺を呼んだ数人の女子が駆け寄ってきた。
「うめのん、今帰り?これからカラオケ行くんだけど一緒に行かない?」
「おー、いいよ。暇だし」
誘われることは珍しくない。
だが一つ返事で返してから、ああそうか。と思い出す。
こいつら目的は真島か。
「おい、お前も暇だよな?」
「えっ、うん。大丈夫だけど…」
「真島くんも来てくれるの?すごーい!」
きゃあっと女子が途端に色めき出す。
俺と反応が違いすぎるだろ。失礼な奴らめ。
まあでもその真島は俺の事が好きという、非常に残念すぎるイケメンだけどな。
それじゃあ合コンじゃないが人数合わせとして他の男友達も呼ぶことにして、後で駅前のカラオケ店集合という約束を交わした。
スマホで適当な奴に連絡いれながら、駅前へ向けて歩き出す。
女子が来るって言ったら一つ返事で返す俺の友人達。
「すごいね。一言声かけたらみんな集まっちゃうなんて」
「ばーか。女子が来るからに決まってんだろ。まあお前がいたら女子も喜ぶしいいんじゃね」
「えっ…じょ、女子が喜ぶ…って」
あ、いけね。この言い方は無神経だったか。
そういや俺達付き合ってるんだっけ。男同士とか距離感がよくわからん。
そもそも真島とは今までに仲良かったわけでもないし、クラスどころか学科が違う。
普通科の俺に対してコイツは特進科。
まあクラス分けしてる程度で教室自体はさほど遠くないが。
そんなわけで、高校二年になる今の今までコイツと会話した記憶すら無い。
なぜコイツが泣くほど俺のことを好きで告白してきたのか、マジでさっぱり分からない。
だがこいつは本気らしく、俺の一挙一動に驚くほどビクついたり顔を赤くしたり、今だっていきなり泣きそうな顔するし。
俺は自分で言うのもなんだが割りと器用に対人関係作れる性格なだけあって、今までに付き合ってきた女の子の数はそこそこいる。
が、当然男と付き合うなんてのは初めてだ。
気を抜いて完全にただの男友達として扱っていたが、コイツの望むところはそうじゃない。
「…あー、ほらあれだ。俺もお前と一緒に遊びに行くの初めてだし」
取り繕うようにニカッと笑ってみれば、どこかしょげたような顔がみるみるうちに赤くなる。
分かりやすい奴だな。
だがこうも俺の一挙一動に学園のアイドルである真島が振り回されているのかと思うと、正直コイツには悪いが楽しすぎる。
キャーキャー言ってる女子共も、前の俺と同様に嫉妬していた男共にまで妙な優越感がわいてくるというか。
なんて俺がこんな考えを持って付き合っているなんて知ったら、コイツはさすがに俺のことを嫌いになるんだろうか。
だが今目の前のコイツは赤い顔のまま、惚けたように俺を見つめていた。
5
お気に入りに追加
866
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話
【完結】私立秀麗学園高校ホスト科⭐︎
亜沙美多郎
BL
本編完結!番外編も無事完結しました♡
「私立秀麗学園高校ホスト科」とは、通常の必須科目に加え、顔面偏差値やスタイルまでもが受験合格の要因となる。芸能界を目指す(もしくは既に芸能活動をしている)人が多く在籍している男子校。
そんな煌びやかな高校に、中学生まで虐められっ子だった僕が何故か合格!
更にいきなり生徒会に入るわ、両思いになるわ……一体何が起こってるんでしょう……。
これまでとは真逆の生活を送る事に戸惑いながらも、好きな人の為、自分の為に強くなろうと奮闘する毎日。
友達や恋人に守られながらも、無自覚に周りをキュンキュンさせる二階堂椿に周りもどんどん魅力されていき……
椿の恋と友情の1年間を追ったストーリーです。
.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇
※R-18バージョンはムーンライトノベルズさんに投稿しています。アルファポリスは全年齢対象となっております。
※お気に入り登録、しおり、ありがとうございます!投稿の励みになります。
楽しんで頂けると幸いです(^^)
今後ともどうぞ宜しくお願いします♪
※誤字脱字、見つけ次第コッソリ直しております。すみません(T ^ T)
侯爵令息、はじめての婚約破棄
muku
BL
侯爵家三男のエヴァンは、家庭教師で魔術師のフィアリスと恋仲であった。
身分違いでありながらも両想いで楽しい日々を送っていた中、男爵令嬢ティリシアが、エヴァンと自分は婚約する予定だと言い始める。
ごたごたの末にティリシアは相思相愛のエヴァンとフィアリスを応援し始めるが、今度は尻込みしたフィアリスがエヴァンとティリシアが結婚するべきではと迷い始めてしまう。
両想い師弟の、両想いを確かめるための面倒くさい戦いが、ここに幕を開ける。
※全年齢向け作品です。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる