逆転スキル【みんな俺より弱くなる】で、勝ち組勇者パーティーを底辺に堕とします

鬱沢色素

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四章

28・復讐の序章

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 辺境の地チェールズ。
 のどかな田園風景が広がる農村だ。
 人口も少なく、冒険者ギルドといった施設もない。
 なのでもし村にモンスターが出たら、近くの街から冒険者を派遣してもらうようになっている。

 そんな田舎村で。
 俺と——幼馴染みのフェリシーは生まれた。

「おう、久しぶり」

 田んぼで農作業をしていたお婆ちゃんに話しかける。

「おお~、アルフじゃないか~」

 この人はアメリアというのだが……お婆ちゃんは目を丸くして、俺の手を取った。

「久しぶりだね~。何年ぶりだろう」
「うーん、忘れた」

 それくらい、勇者パーティーとして長く旅をしていたように感じた。

 しばらくアメリアさんと話していると、

「おっ、アルフ! 久しぶりだな、お前!」
「元気にしてたか?」
「ああ、そうそう。魔王を倒したって聞いたぞ! お前ってやっぱ凄かったんだな!」
「サインでもくれよ!」

 村中の人達が集まってきて、俺を囲みだした。

 勇者エリオットに誘われてこの村を出て行ったきり、今まで一度も帰ってきたことはなかった。
 まあ正しくは、帰りたくてもエリオットが許してくれなかっただけのことだが。

 ——王都から離れ、情報もあまり入ってこない村なもんだから、俺がどんな状況にあったか分かってないようだ。
 だからこそ、俺を見るなりこんなにちやほやしてくれるんだ。

「ん? そっちの耳を生やした可愛い女の子。もしかしてアルフの彼女か~」

 肘で突いてくる、昔の友人ベンノ。

 獣人族差別……っていうのも、この田舎村にはないようだな。都会特有のものなんだろう。
 そういえば、田舎村ってのは動物達と共存して暮らしている。
 だから今更獣人族を見たところで「ん? それがなにか?」な感じかもしれない。

「ハハハ。そんなんじゃないさ」
「そうだよな。だってお前にはフェリシーっていう幼馴染みがいるもんな!」
「——!」
「そういや、フェリシーは帰ってきてないのか?」

 フェリシーの名前を出されて、俺は思わず言葉が詰まってしまった。

 はっきり宣言するが、俺はフェリシーをかばうつもりはない。

 この田舎村には、フェリシーのクソ女っぷりを教えたくない……。
 そんな生やさしいことなど微塵も考えていないのだ。

 しかしいざ聞かれると、さすがの俺でも一瞬思考が停止してしまった。

 俺は深呼吸をしてから、

「ああ。フェリシーなんだが……」

 と言葉を続けた。



「アルフ。ここは?」

 みんなとあれからしばらく話してから、俺とイーディスは村の外れにあるお花畑を訪れた。

「思い出の地……まあ今となっては、ただの胸くそ悪い場所だがな」

 辺り一帯には色取り取りの花が並んでいる。

 花は太陽の光を反射して、キラキラ輝いていた。
 そんな場所だった。

「またアルフ、辛そうな顔をしてる」
「辛そう? 辛くないさ。逆にここを見てるとふつふつと怒りが込み上げてきて、同時に嬉しくなってくる」

 まだ復讐の気持ちは薄れていないってな。

 昔、まだ俺がフェリシーと仲の良かった頃。
 幼かった俺はここの花で指輪を作り、フェリシーに求婚したのだ。

『ありがとう! 一生大事にするね!』

 あの時のフェリシーは顔に笑顔の花を咲かせていた。

 だが、俺はフェリシーに裏切られた。
 フェリシーは負け組の俺より、勝ち組勇者エリオットに乗り換えたのだ。
 もう、あの時の花の指輪も持っていないだろう。

「でもアルフ、村の人気者だった。凄い」

 励ましてくれてるのだろうか、イーディスがそう言った。

「ありがとう」
「アルフにはいっぱい味方がいる」
「一番の味方はイーディスさ。俺はイーディスしか信じない」
「そう言ってくれて嬉しい」

 イーディスがほのかに顔を赤くした。

 昔は——エリオットに虐げられている時代——フェリシーのことだけは信じてたんだがな……。
 今となってはあの時の愚かな自分を殴りたくなってくる。

「やっぱり辛そうな顔してる、アルフ。これあげる」

 昔のことを思い出してる俺に、イーディスが一輪の花を摘んで渡してきた。
 俺はそれを受け取り、茎を持ってクルクルと回す。

「……悪いな、イーディス。花に罪はないけれど——俺、花嫌いなんだ」

 と花を手から離した。

 ひらひらと風に揺られ、花がどこかに舞っていく。

「アルフ。これからどうするの?」
「決まっている」

 お花畑を背景にして。
 俺はこう宣言した。

「このお花畑をフェリシーの血で塗り替えてやるのさ」

 ◆ ◆

 それから俺はここ故郷でフェリシーと再会した。

「ごめん! アルフ君! あの時の私はどうかしてたんだっ。もう一度、アルフ君の『彼女』に立候補していいかな?」

 ボロボロのフェリシー。
 一体何日間風呂に入らず、服も入ってないんだろうか。
 鼻がつーんとするような悪臭が漂ってきた。

「…………」

 手を合わせ、頭を下げているフェリシー。

 そんなフェリシーの頭に、俺は——。


「は? していいわけないだろうが」


 思い切り、持っていたを振り下ろした。
 血が花に舞い散る。
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