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三章
22・サラの評価が堕ちていく
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翌朝になって。
俺はサラを連れて、街のギルドに向かった。
「あっ、サラ様! 昨日は大丈夫でしたか!」
到着するなり、受付嬢にサラは心配された。
「ああ、大丈夫だ……」
「とはいっても、まだ傷は癒えてないようですし……」
「これくらいなら大丈夫だ。魔王と戦った時は、もっと傷を負っていたからな」
「魔王と戦う……! やっぱりサラ様は凄いです! 昨日は調子が悪かっただけですよ。また魔王の話、聞かせてくださいね!」
「ああ」
悪い気はしてないのか、サラが誇らしげに胸を張った。
「よく言うよ。お前、なんにもしてないだろうが」
むかついたので、横から口をはさんだ。
「なっ——! なにもしてないのは、貴様の方だろうが!」
「魔王は勇者のワンパンで倒したから、お前はなにもしてない。なに偉そうにしてやがるんだ」
「貴様が言うな! 貴様だって……」
「いえ……でも昨日のことを思い出したら、もしかしたら……って思っちゃいますね」
受付嬢がそう言った後「あっ」といった感じで、口を手で押さえた。
「貴様もなにを言っている!」
そんな受付嬢の失礼な態度に、サラは激昂した。
「す、すいませんっ!」
「今度変なことを言ったら、辺境の地のギルドに飛ばしてやるからな! 私はそれくらいなら出来る力があるんだぞ?」
ニヤリと口角を釣り上げるサラ。
受付嬢はサラの言葉にびくびくしていた。
「おいおい、サラ。滅多なこと言うんじゃねえよ。受付の人が怖がってるじゃないか」
「貴様はなにも言うな!」
昨日、あれだけボコボコにしてやったというのに、こいつはもう忘れたんだろうか?
試しに拳をサラに向けてみた。
「ひっ……!」
すると体が震えて、サラは俺から距離を取ったのだ。
うむ。
深ーい意識の下では、俺には恐怖心があるみたいだな。
「あ、ありがとうございます……私をかばっていただいて」
「いやいや」
大したことありませんよ、といった具合に受付嬢に手を振った。
受付嬢の瞳が輝いてるように見えた。
「それで……今日はどのようなご用で?」
「ああ。しばらくこの街に滞在させてもらってるからな。モンスター討伐にでも行こうと思って」
「モンスター討伐ですか……そうですね。今は魔王も倒れたので、大した依頼はないのですが……あっ、これだったらどうですか?」
受付嬢が紙を一枚差し出してきた。
マッドマウスか……かなり弱いモンスターだ。スキルを使わなくても、俺だって倒せるだろう。
だが、これくらいなら丁度いい。
「よし、じゃあ受けるよ」
「頑張ってくださいね!」
と受付嬢に見送られようとすると、
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 私も行くぞ!」
横からサラが割り込んできた。
「お前が?」
「ああ! 昨日はたまたま調子が悪かっただけだ。貴様との格の違いを見せてやろう」
「別にいいが……足を引っ張るんじゃないぞ?」
「それはこっちの台詞だ! マッドマウスごとき、私が倒せないとでも思っているのか?」
すっかりサラは頭に血が昇ってるらしい。
ここまで全て俺の計算通りだ。
後はこのクエストが終わったら、すっかりサラの評価は全部俺のものになってるだろう。
笑うのはまだ早い。
「あの……サラ様、大丈夫ですか?」
「なにがだ!」
びくびくするようにして問いかけた受付嬢に、威圧するようにしてサラが言った。
「いえ……昨日のことを見ていたら、心配になりまして……そちらの男性は大丈夫だと思いますが。それに昨日のこともありまして、サラ様は勇者パーティーの中でも戦闘係じゃなくて、あの……もっと後方支援だったという噂もありまして……」
「なんだ? 私が弱いというのか!」
「ち、違いますっ!」
受付嬢は必死に言葉を選んでいるが、そう言っているのは明白であろう。
サラがもの凄い形相でテーブルから身を乗り出してるため、受付嬢がさらにびくびくしている。
「おいおい、止めたげろよ。それに実力で示せばいいだろうが」
「貴様は黙れ! ……だが、ここで色々言っていても仕方がないな。さあ、行こう! マッドマウス討伐に!」
そう言って、サラはさっさとギルドから出て行ってしまった。
「大丈夫か? 気にするなよ。サラはパーティーにいる頃から、あんな感じだったから」
「え、ええ……大丈夫です。それにしても……」
「ん? なんだ?」
「私、サラ様ってもっと立派な人物だと思っていました。誰からも信頼されるような……でも昨日の件といい、見てたらそうは思えなくて」
「うーん、どうだろうな。まあそろそろ分かってくるんじゃないか?」
今までの評価が高すぎるから、これだけのことがあってもまだサラのことは尊敬している人が多いだろう。
しかしだんだん陰りが見えてきた。
「アルフ。行こう」
「ああ。弱い弱いサラがマッドマウスに倒されちゃうかもしれないからな」
と俺とイーディスは、サラの後を追いかけた。
◆ ◆
「痛あああああああああああい!」
森に着くと、マッドマウスがわんさか湧いてきた。
マッドマウスとは土を主食とする、見た目少し大きいネズミのようなモンスターである。
しかしただのネズミとは違い凶暴で人を襲い、農作物を荒らすこともある。
とはいってもあまり強くなく、冒険者なりたての人達でも狩っているようなモンスターだ。
だが、そんなマッドマウスに囲まれながら、サラは泣き叫いていた。
「ど、どうしてだっ! どうして、マッドマウスがこれだけ頑丈なんだ! ここのマッドマウスは突然変異でもしているのか?」
「そんなわけないだろう。現に俺でも——」
近付いてくるマッドマウスを、持ってきた剣で突き刺す。
「こんだけ簡単に倒せるんだからな」
「!?!?!?!?!?」
サラが混乱したように、前につんのめる。
「どうしてなのだ……? ごとき、何故倒せない。私は弱いのか……? マッドマウス以下? いや、そんなわけない! 私は最強の戦士なの——」
なにか言いかけてきたが、そんなサラの横っ腹にマッドマウスが噛み付いた。
「痛い痛い痛い!」
たかがマッドマウスなのに、近くの木まで吹っ飛ばされたサラ。
「ハハハ! どうだ、イーディス? 面白いだろう。マッドマウスごときに、あんな苦戦するヤツ見たことあるかっ?」
「見たことない。あの女、弱い」
マッドマウスに追いかけ回され、ボロボロになっていくサラを俺達は高笑いしていた。
「はあっ、はあっ……こ、このままでは殺されてしまう! ラグナロクを返してくれ……あれがあったら!」
「嫌なこった」
それに弱くなったお前では、ラグナロクはもう使いこなせない。
あまりにも滑稽だ!
マッドマウスごときに一生懸命剣を振るっているサラは!
「ハハハ! ——ん?」
笑っていたら、どこかで子どもの声が聞こえてきた。
「どうやら、助けを呼んでいるようだ。おい、サラとイーディス行くぞ」
これは俺にとって好都合なことが起こっているらしい。
俺はマッドマウスに囲まれているサラを引きずって、声のもとへと急いだ。
「た、助けて!」
そこまで行くと、子どもが一際大きいマッドマウスに襲われているのを発見した。
「あれは……レオ君か?」
「あっ、昨日のお兄ちゃん! 助けて! ボクもマッドマウスくらいなら倒せると思ってたんだけど……」
昨日俺が渡した模擬剣を持って、レオ君がマッドマウスと対峙している。
確かあいつはただのマッドマウスじゃない。
ビッグマッドマウスと呼ばれるマッドマウスの変異体だ。
マッドマウスよりも数段強く、俺一人だったら倒せないだろう。
だが……。
「弱くなっちまえ」
スキルを発動する。
するとビッグマッドマウスの動きが明らかに遅くなった。
「よいしょっと」
そこまで歩いて行きビッグマッドマウスを斬って、レオ君を救出する。
「大丈夫かい、レオ君」
「うん、ありがとうお兄ちゃん! お兄ちゃんはやっぱ強いや!」
キラキラした純真な瞳を向けてくれるレオ君。
そんな俺達を見て……。
「手柄を横取りするな! こんなもの、私だって倒せる!」
大股でサラがこっちに来た。
コラコラ。
あまりにも怒っているものだから、レオ君が怖がっているだろう。
「なにを言っている。お前じゃ倒せないよ」
「バカなことを言うな! ビッグマッドマウスくらいなら——」
そうこう話しているうちに、近くから他のマッドマウスも現れた。
「じゃあ普通のマッドマウスを倒してからにしろよ」
「あの……昨日戦ってみたけど、サラ様って弱っちいよね? それなのにマッドマウスなんて倒せるの?」
レオ君が言う。
レオ君からしたら、子どもながらの純粋な発言だろう。
だが、それがあまりにもサラのプライドを逆撫でした。
「バカにするな! この子ども! 帰ったら、たっぷり説教してやる!」
剣を振り上げ、マッドマウスの方へと向かっていた。
……全くこの脳筋が。
さっきマッドマウスに手も足も出なかっただろうが。
そんなバカだから、今俺が考えている策にも頭が回らないんだ。
「はあっ、はあっ……体が重い……まるで水の中にいるようだ」
満身創痍の状態で、今にも倒れそうなサラの姿があった。
「えっ? どうしたのお姉ちゃん! 普通のマッドマウスなんて、大したことないよ! ボクだって、頑張ったら一体くらい倒せるのに!」
「だ、黙れ……」
サラが剣を杖にして立ち上がる。
「ほら、頑張って頑張ってお姉ちゃん! もっと早く走って! 歩いてるみたいだよ?」
「私が歩いてる……?」
きっとサラ本人的には全力で動いているつもりなんだろうな。
でも弱くなっているサラでは、マッドマウスを回避出来ない。
子どもに心配されるほど、弱くなったサラではマッドマウスを倒せない。
「どうだ? レオ君。サラってどう思う?」
「うーん……やっぱり弱いや!」
レオ君は俺を見て、子どもらしい笑みを浮かべたのであった。
——だんだんサラの評価が堕ちていく。
底辺まで真っ逆さまと。サラが堕ちて堕ちて堕ちていく。
俺はサラを連れて、街のギルドに向かった。
「あっ、サラ様! 昨日は大丈夫でしたか!」
到着するなり、受付嬢にサラは心配された。
「ああ、大丈夫だ……」
「とはいっても、まだ傷は癒えてないようですし……」
「これくらいなら大丈夫だ。魔王と戦った時は、もっと傷を負っていたからな」
「魔王と戦う……! やっぱりサラ様は凄いです! 昨日は調子が悪かっただけですよ。また魔王の話、聞かせてくださいね!」
「ああ」
悪い気はしてないのか、サラが誇らしげに胸を張った。
「よく言うよ。お前、なんにもしてないだろうが」
むかついたので、横から口をはさんだ。
「なっ——! なにもしてないのは、貴様の方だろうが!」
「魔王は勇者のワンパンで倒したから、お前はなにもしてない。なに偉そうにしてやがるんだ」
「貴様が言うな! 貴様だって……」
「いえ……でも昨日のことを思い出したら、もしかしたら……って思っちゃいますね」
受付嬢がそう言った後「あっ」といった感じで、口を手で押さえた。
「貴様もなにを言っている!」
そんな受付嬢の失礼な態度に、サラは激昂した。
「す、すいませんっ!」
「今度変なことを言ったら、辺境の地のギルドに飛ばしてやるからな! 私はそれくらいなら出来る力があるんだぞ?」
ニヤリと口角を釣り上げるサラ。
受付嬢はサラの言葉にびくびくしていた。
「おいおい、サラ。滅多なこと言うんじゃねえよ。受付の人が怖がってるじゃないか」
「貴様はなにも言うな!」
昨日、あれだけボコボコにしてやったというのに、こいつはもう忘れたんだろうか?
試しに拳をサラに向けてみた。
「ひっ……!」
すると体が震えて、サラは俺から距離を取ったのだ。
うむ。
深ーい意識の下では、俺には恐怖心があるみたいだな。
「あ、ありがとうございます……私をかばっていただいて」
「いやいや」
大したことありませんよ、といった具合に受付嬢に手を振った。
受付嬢の瞳が輝いてるように見えた。
「それで……今日はどのようなご用で?」
「ああ。しばらくこの街に滞在させてもらってるからな。モンスター討伐にでも行こうと思って」
「モンスター討伐ですか……そうですね。今は魔王も倒れたので、大した依頼はないのですが……あっ、これだったらどうですか?」
受付嬢が紙を一枚差し出してきた。
マッドマウスか……かなり弱いモンスターだ。スキルを使わなくても、俺だって倒せるだろう。
だが、これくらいなら丁度いい。
「よし、じゃあ受けるよ」
「頑張ってくださいね!」
と受付嬢に見送られようとすると、
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 私も行くぞ!」
横からサラが割り込んできた。
「お前が?」
「ああ! 昨日はたまたま調子が悪かっただけだ。貴様との格の違いを見せてやろう」
「別にいいが……足を引っ張るんじゃないぞ?」
「それはこっちの台詞だ! マッドマウスごとき、私が倒せないとでも思っているのか?」
すっかりサラは頭に血が昇ってるらしい。
ここまで全て俺の計算通りだ。
後はこのクエストが終わったら、すっかりサラの評価は全部俺のものになってるだろう。
笑うのはまだ早い。
「あの……サラ様、大丈夫ですか?」
「なにがだ!」
びくびくするようにして問いかけた受付嬢に、威圧するようにしてサラが言った。
「いえ……昨日のことを見ていたら、心配になりまして……そちらの男性は大丈夫だと思いますが。それに昨日のこともありまして、サラ様は勇者パーティーの中でも戦闘係じゃなくて、あの……もっと後方支援だったという噂もありまして……」
「なんだ? 私が弱いというのか!」
「ち、違いますっ!」
受付嬢は必死に言葉を選んでいるが、そう言っているのは明白であろう。
サラがもの凄い形相でテーブルから身を乗り出してるため、受付嬢がさらにびくびくしている。
「おいおい、止めたげろよ。それに実力で示せばいいだろうが」
「貴様は黙れ! ……だが、ここで色々言っていても仕方がないな。さあ、行こう! マッドマウス討伐に!」
そう言って、サラはさっさとギルドから出て行ってしまった。
「大丈夫か? 気にするなよ。サラはパーティーにいる頃から、あんな感じだったから」
「え、ええ……大丈夫です。それにしても……」
「ん? なんだ?」
「私、サラ様ってもっと立派な人物だと思っていました。誰からも信頼されるような……でも昨日の件といい、見てたらそうは思えなくて」
「うーん、どうだろうな。まあそろそろ分かってくるんじゃないか?」
今までの評価が高すぎるから、これだけのことがあってもまだサラのことは尊敬している人が多いだろう。
しかしだんだん陰りが見えてきた。
「アルフ。行こう」
「ああ。弱い弱いサラがマッドマウスに倒されちゃうかもしれないからな」
と俺とイーディスは、サラの後を追いかけた。
◆ ◆
「痛あああああああああああい!」
森に着くと、マッドマウスがわんさか湧いてきた。
マッドマウスとは土を主食とする、見た目少し大きいネズミのようなモンスターである。
しかしただのネズミとは違い凶暴で人を襲い、農作物を荒らすこともある。
とはいってもあまり強くなく、冒険者なりたての人達でも狩っているようなモンスターだ。
だが、そんなマッドマウスに囲まれながら、サラは泣き叫いていた。
「ど、どうしてだっ! どうして、マッドマウスがこれだけ頑丈なんだ! ここのマッドマウスは突然変異でもしているのか?」
「そんなわけないだろう。現に俺でも——」
近付いてくるマッドマウスを、持ってきた剣で突き刺す。
「こんだけ簡単に倒せるんだからな」
「!?!?!?!?!?」
サラが混乱したように、前につんのめる。
「どうしてなのだ……? ごとき、何故倒せない。私は弱いのか……? マッドマウス以下? いや、そんなわけない! 私は最強の戦士なの——」
なにか言いかけてきたが、そんなサラの横っ腹にマッドマウスが噛み付いた。
「痛い痛い痛い!」
たかがマッドマウスなのに、近くの木まで吹っ飛ばされたサラ。
「ハハハ! どうだ、イーディス? 面白いだろう。マッドマウスごときに、あんな苦戦するヤツ見たことあるかっ?」
「見たことない。あの女、弱い」
マッドマウスに追いかけ回され、ボロボロになっていくサラを俺達は高笑いしていた。
「はあっ、はあっ……こ、このままでは殺されてしまう! ラグナロクを返してくれ……あれがあったら!」
「嫌なこった」
それに弱くなったお前では、ラグナロクはもう使いこなせない。
あまりにも滑稽だ!
マッドマウスごときに一生懸命剣を振るっているサラは!
「ハハハ! ——ん?」
笑っていたら、どこかで子どもの声が聞こえてきた。
「どうやら、助けを呼んでいるようだ。おい、サラとイーディス行くぞ」
これは俺にとって好都合なことが起こっているらしい。
俺はマッドマウスに囲まれているサラを引きずって、声のもとへと急いだ。
「た、助けて!」
そこまで行くと、子どもが一際大きいマッドマウスに襲われているのを発見した。
「あれは……レオ君か?」
「あっ、昨日のお兄ちゃん! 助けて! ボクもマッドマウスくらいなら倒せると思ってたんだけど……」
昨日俺が渡した模擬剣を持って、レオ君がマッドマウスと対峙している。
確かあいつはただのマッドマウスじゃない。
ビッグマッドマウスと呼ばれるマッドマウスの変異体だ。
マッドマウスよりも数段強く、俺一人だったら倒せないだろう。
だが……。
「弱くなっちまえ」
スキルを発動する。
するとビッグマッドマウスの動きが明らかに遅くなった。
「よいしょっと」
そこまで歩いて行きビッグマッドマウスを斬って、レオ君を救出する。
「大丈夫かい、レオ君」
「うん、ありがとうお兄ちゃん! お兄ちゃんはやっぱ強いや!」
キラキラした純真な瞳を向けてくれるレオ君。
そんな俺達を見て……。
「手柄を横取りするな! こんなもの、私だって倒せる!」
大股でサラがこっちに来た。
コラコラ。
あまりにも怒っているものだから、レオ君が怖がっているだろう。
「なにを言っている。お前じゃ倒せないよ」
「バカなことを言うな! ビッグマッドマウスくらいなら——」
そうこう話しているうちに、近くから他のマッドマウスも現れた。
「じゃあ普通のマッドマウスを倒してからにしろよ」
「あの……昨日戦ってみたけど、サラ様って弱っちいよね? それなのにマッドマウスなんて倒せるの?」
レオ君が言う。
レオ君からしたら、子どもながらの純粋な発言だろう。
だが、それがあまりにもサラのプライドを逆撫でした。
「バカにするな! この子ども! 帰ったら、たっぷり説教してやる!」
剣を振り上げ、マッドマウスの方へと向かっていた。
……全くこの脳筋が。
さっきマッドマウスに手も足も出なかっただろうが。
そんなバカだから、今俺が考えている策にも頭が回らないんだ。
「はあっ、はあっ……体が重い……まるで水の中にいるようだ」
満身創痍の状態で、今にも倒れそうなサラの姿があった。
「えっ? どうしたのお姉ちゃん! 普通のマッドマウスなんて、大したことないよ! ボクだって、頑張ったら一体くらい倒せるのに!」
「だ、黙れ……」
サラが剣を杖にして立ち上がる。
「ほら、頑張って頑張ってお姉ちゃん! もっと早く走って! 歩いてるみたいだよ?」
「私が歩いてる……?」
きっとサラ本人的には全力で動いているつもりなんだろうな。
でも弱くなっているサラでは、マッドマウスを回避出来ない。
子どもに心配されるほど、弱くなったサラではマッドマウスを倒せない。
「どうだ? レオ君。サラってどう思う?」
「うーん……やっぱり弱いや!」
レオ君は俺を見て、子どもらしい笑みを浮かべたのであった。
——だんだんサラの評価が堕ちていく。
底辺まで真っ逆さまと。サラが堕ちて堕ちて堕ちていく。
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