逆転スキル【みんな俺より弱くなる】で、勝ち組勇者パーティーを底辺に堕とします

鬱沢色素

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三章

17・弱くなったサラに石を投げる

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 フランバル大聖堂を去って、次に俺達が向かった場所は『ストローツ』という街である。

 都会的でもなく田舎でもなく、中間くらいの位置づけにある街。
 俺達がここを訪れたのは、なにも観光のためというわけではない。

「アルフ。ここはどこ?」
「ああ。ここはな——」

 問いかけるイーディスに答えようとした時、眼前に不愉快なものが目に入って、つい言葉に詰まってしまう。

『サラ様歓迎!』

 いや、目の前だけではなく。
 いたるところに横断幕があり、お店の看板にも書かれていて、プラカードらしきものを持って歩いている者も何人か見た。
 街全体がお祭りムードという感じだ。

「ここはな——あのクソ自意識過剰女戦士サラの生まれ故郷なんだ」

 一つ深呼吸をしてから、イーディスの質問に答えた。

「サラ……それもアルフの復讐対象だよね?」
「もちろん。道中話したと思うけど、今度のターゲットは女戦士サラだ」
「じゃあなに? 聖女の時と同じように、ここを復讐の舞台にするってこと?」
「イーディスは賢いなあ。その通りだ」
「わあい」

 イーディスの頭を撫でてやった。

 そう。
 今回もただ復讐するだけではつまらない。
 あの女の尊厳とか評判を底辺まで堕として、泥水を舐めるような生活を送らせてやる。

 そのため、俺はここストローツに訪れたわけだ。
 勇者パーティーとして旅をしている頃、訪れたこともあったので覚えていた。

「もしかして……ここの人達にもアルフ、イジめられた?」
「いや……ここの街はな、一泊しただけなんだ。ここの住民に、思い入れもない」

 いくら【みんな俺より弱くなる】という力を得たとしても、復讐対象以外に手を出すつもりはない。

「今回はサラだけに復讐するつもりだよ。イーディスはどう思う?」
「うん、それで良いと思う。慈悲深くて賢いアルフに、わたし、惚れ直した」
「だろ?」
「今から楽しみ」

 ルンルン、といった感じでイーディスが声を弾ませた。

「なにか適当な理由を付けてサラを呼び出すつもりだったけど、どうやらそれをしなくてもいいらしいな」

 情報収集がてら、街の中を歩き回る。

 すると……どうやら、街がお祭りムード一色に染められているのは、この街にサラが帰ってくるらしい。
 魔王も倒して、栄光の帰郷といったところだろうか。

 しかも都合の良いことに、三日後にサラはここに戻ってくるらしかった。
 好都合だ。運は俺を味方しているよう。

「折角だから、街の中をもう少し歩き回ろうか」
「やっぱり、アルフ。観光したい?」
「ハハハ! もしかしたら、そう思ってるかもしれないけど一応違うさ。街の中に復讐の道具かなにかあるかな、って思ってな。面白そうなものがあったら、サラへの復讐に使ってみるつもりだよ」
「準備を怠らないアルフ。素敵」

 とイーディスが俺の腕に抱きついた。

 うむ、というわけでもう少し街の中を歩いてみよう。
 歩きながら、住民の声に耳を傾けた。


「あのちっちゃなサラが、まさか魔王を倒すなんてな!」
「親戚として鼻が高い! 昔からサラは他のヤツ等とは違う……ってオレっちは思ってたんだ!」
「急に街を出て行った時はなにごとかと思ったよ! ビックリしたけど、後で勇者様に同伴してるって聞いた時は、さらにビックリした」
「サラ様はこの街の誇りだ! サラ様が帰ってきたら、目一杯歓迎してやろう!」


 その声を聞くと、不愉快な気分がだんだん増していく。

「みんな……サラに騙されてるんだ……」

 この街でサラがどういう女だったかは知らない。
 しかし勇者に付き添い、魔王を倒したサラをみんな誇りにしているらしい。
 あの女の裏側も知らなくて、よくそんなことを言えたもんだよ。

「アルフ。話聞いてると、そのサラって女は良い人-?」
「そんなわけないだろ。イーディスは笑わせるなあ」
「うん。一応言ってみただけ。アルフが復讐の相手にしてるってことは、聖女に負けず劣らずゴミみたいな人間」
「そう! その通り!」

 イーディスだけが物事の本質を見極めてる。
 さすが神だ!

「サラはな——」

 折角ので、俺はサラがどれだけクソ女かということをイーディスに語ってあげた。



 女戦士サラ。
 都会でも田舎でもない平凡な街に生まれ、幼い頃からあらゆる武器を使いこなす『天才』と言われていたらしい。
 これはサラから聞いたことだが、今回街の人の話を聞くに、それは本当のことみたいだな。

 さらにサラの特徴としては、狂信的に勇者エリオットのことを愛していることだ。
 マルレーネもエリオットのことが好き……なのかどうか知らないが、その中にはある種の打算も混じっている。腹黒聖女だからだ。

 一方、サラは純度百%。

 そのため俺が少しでもエリオットに対して、粗相そそうをすれば……。

『君は本当にダメなヤツだな! エリオットに申し訳ないと思わないのか!』

 怒声を上げて、剣で斬りつけられたこともある。

『エリオットを見習いたまえ。エリオットはあんなに素晴らしい男なのだ。それに比べて君は……性格もクソだし、顔も悪い。金も地位もなくて、君にはなにが出来るのだ?』

 とひらすら罵倒され、ストレス発散のために殴られたこともある。

 さらにちょっとしたサラの発言で、エリオットが気分を害してしまった時は……。

『全部全部君のせいだ! 君が目障りだから、エリオットが気を悪くしてしまったんだ! 責任を取れ!』

 鬱憤うっぷんを晴らすために、夜明けまで殴られたこともあった。
 もちろん、エリオットが怒ったのもただ気紛れなだけなので、朝には仲直りしていたが……そのたびに殴られていちゃ、俺の体が持たない。



「エリオットエリオットエリオット……ことあるごとに、あいつはエリオットと言っていた。多分俺はあいつの目からして、家畜かなにかにしか見えなかったんだろうな」
「ひどい……」
「エリオットが俺に対して暴行する時も、あいつは止めようとしなかった。『君が悪いんだ!』と言いながら、暴行に参加するのがほとんどだ」
「クソ女」
「うん。これは笑い話なんだけど、そんなあいつの将来の夢ってなんだと思う?」
「? 分からない」
「『お嫁さん』なんだってよ。ハハハ! 人をあれだけイジめておいて、自分だけ幸せになろうとするなんて、正真正銘のクソ女だ!」

 思い出せば思い出すほど、胸くそ悪くなってくる。
 だが、とうとうあの女にも鉄槌てっついを下せるのだ。
 それがもう少しで実現することを思えば、気が少し紛れた。

「よし——これ以上、住民の声を聞いてても不愉快だ。サラが来るまで、宿屋に泊まって復讐方法でも一緒に考えようか」
「うん。考える……それでアルフ。ちょっと気になったんだけど」
「なんだ?」
「この街に来る前に、ネックレスみたいなの買っていたよね? それは……」
「それも宿屋で話してあげるよ。俺の考えているようだったら、マルレーネ以上に面白いことになる」

 口元に手を当てると、ニイと笑っているみたいだ。

 ああ——サラよ。
 今すぐお前に復讐したいよ。

 ◆ ◆

 そして三日後。


「サラ様!」「サラ様!」「サラ様!」


 名前が何度も繰り返され、街に入ってきたサラを住民が歓迎していた。

「うむ! こんなに私のために来てくれて……感謝するぞ!」

 人々に見守られながら、サラは手を振る。

 気持ちよさそうに笑うなあ。
 まあ……その笑顔がもう少しでなくなるけどな。

 俺がお前の顔をで、もうお前のド底辺人生は決定してるんだ。

「よいしょっと」

 俺はそこらへんの地面から小石を拾い上げ。

「えいっ」

 と歩いているサラに向かって投げつけた。


「うわあああああああああ!」


 小石が当たると、サラは人々の群れまで吹っ飛ばされた。

 ハハハ!
 うわああああああ、だってよ!
 そんな声、お前から聞くのはじめてだぞ!

「さあ、早速はじめようか」
「行く行く」

 イーディスと手を繋ぎながら、地面に倒れている彼女の前まで向かった。
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