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教会へ

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今日は騎士として教会へ行く訳では無いので、ミリアンは私服を着ていた。

しかし顔がいいせいか、または騎士として知られているのか、街の人達(特に女性)の視線を集めていた。
薄い紫色の髪とはいえ、白に近い髪色である私にも、勘違いしているであろう視線が向けられているようだ。
きっと私を抱き上げているのにも原因があるだろう。

「早速教会へ行こうか~。途中でに気になるものがあったら寄ってもいいからね~?教会でそんなに時間はかからないと思うし~」

ミリアンはそう声をかけると歩き出した。


しばらく歩けば、店が沢山ある通りに出た。

そこは人で溢れかえって居り、道を埋めつくしていた。ミリアンに抱えられていなかったら、この貧弱な体ではすぐに迷子になっていただろう。

あちこちから呼び込みの声が聞こえる。子ども達の元気な笑い声も雑踏の中から聞こえてくる。

「ここはナティシニア王国の王都、ティラス。その中でも一際賑やいでいる通りだよ~。店が密集していて、近くにはギルドがあるから冒険者も来るからね~。
怖~い人もいるからあまり人にぶつからないよう気をつけるんだよ~?

まあ、しばらくは1人で外に出れないと思うけどね~」

小さく呟かれた最後の言葉に顔を引き攣らせたが気を取り直し、気になる所を繰り返して言った。

「ぎるど?」

ぎるどというのに、ぼうけんしゃというのが所属しているらしい。まるで小説の中の話のようだ。

「あ~ギルドっていうのはね、魔物っていう危ない生き物を倒したり、魔物や危ない場所にある薬草とか、必要な物を集める事をしている人達の事を冒険者っていうんだけど、その人達が物を売ったり、依頼を受ける所なんだけどぉ…言いたい事、わかる?」

「うーん…。冒険者っていう、危険な事をしてくれる、人達が、取ってきた物を売ったり、依頼、を受けるとこ」

「そ~そ~!伝わって良かった~」

ますます小説らしい。
確かに私は異世界転生という、いかにも小説でよくありそうな体験をしているから、不思議ではないのかもしれない。

でも、小説の主人公が自分かもしれない、なんて、そんな事は思えないけれどね。

「あ、見て見て~。珍しい果物だ~!それひとつくださ~い!
…はい、一口ど~ぞ?」

「わぁ~!可愛いネックレスがいっぱい!どれか欲しいのある?」

「あ、飴玉が売ってある~!これを2つください!ふふっこれ、僕のおすすめの味だよ~」

気になるところに寄ってもいいという言葉は、実は私ではなくミリアン自身に向けて言った言葉かと思うほど色々な場所を見ながら、やっとの事で教会に着く事が出来た。

「じゃあ、早速孤児院がどんな所か話を聞きに行こうか。ついでにどんな神様がいるのかも聞いちゃう~?」

そう言いながらミリアンは歩を進めた。












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