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母が祖母を看取った話

昔話・亡き母の想い

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(※)母のブログからの転載です。





 前に、恐山に行った時のことを書いて・・・
 続く・・・としていました。

 そう、どうしても書いておきたかった。
 私と、今は亡き姉とともに体験したことです。

 結婚し、娘が二人生まれ、手が離れた頃に仕事を始め、家事との両立で忙しくしていましたが、母への申し訳ないという思いはいつも私の心の中にありました。

 そんなある時、仕事先での雑談で霊感のある方の存在を聞き、興味を持ちつつも、壺やら印鑑やら買わせるエセ霊感やエセ神様で「騙された!」

 そんなニュースが日常茶飯事だったから、半信半疑ながらも姉に話してみました。

 その方は金銭を要求しないという・・・
 お礼をしたいと思うなら気持ちだけ包めば良いと聞き、その一点で「騙されてもまぁいいか」と思い、行ってみようかとなりました。

 電話で予約をし、電車とバス、そしてタクシーを乗り継ぎ、片田舎のそこまでは小旅行の道のりでした。

 おぼろげな記憶ですが、決して立派な家ではなく、どこにでもあるような古い日本家屋で、年老いたご夫婦が出迎えてくれました。

 そして、通された先の部屋には神棚と祭壇があり、その前に中年の女性が・・・
 出迎えてくれたのは、ご両親でした。

 姉と私が名前と生年月日を告げると、その方は書きとめ、訪問した用向きを尋ねました。

 始めは姉が相談・・・
 そして 私・・・
 母への思いの丈を、謝りたかったことを話し始めて、間もなく・・・
 その方が言いました。

「今、お母さんが貴女達の間に来ましたよ・・・」

 えーーーー!?

「お母さんは怒ってなんかいませんよ・・・逆にすまなかったねぇ・・・」

 そんな当たり障りのない会話のやり取りに、少しばかりシラケて疑いの気持ちになってきた時・・・
 その方が首を傾げ、耳を澄まし、じっと何かを聞いている様子でした。

「お母さんが小さな声で・・・三味線・・・あの時、本当は三味線が欲しかった・・・恥ずかしそうに、そう言ってます」

 その瞬間、姉が声を上げて泣き出しました!
 母と姉しか知らないエピソードがあったんです。

 母は娘時代に三味線を習いたくて親に言ったそうです。
 でも、父親に「芸者にでもなるのか!」とひどく叱られ、諦めたとか・・・ 
 それを知った姉が、親孝行で母にプレゼントしようとしたところ、母の返事は「要らない」と・・・

 ちょうど家を建てた頃で、大変だろうからと母は遠慮したんだろうと、その時の姉は思い、いずれそのうちに・・・
 結果、そのままになってしまったことを姉は思い出したんです。

 そして、その方が言いました。

「一棹の三味線を仏壇の前に供え、ときどき爪弾いて音を聴かせてあげるとお母様への供養になりますよ・・・」

 姉はもちろんのこと、私も嗚咽が止まりませんでした。

 不慮の亡くなり方をした父。
 南方で戦死した通信兵だった叔父。
 まったく心当たりのない長刀を揮う女性。

 ・・・数名の霊が降りてきたようですが、姉が後から言うには、母が私達の間に来てくれたと告げられるその一瞬前に、後ろへ身体が引っ張られたとか・・・。
 思い込み?もあると思うけど、その三味線の一件は不思議としか思えません。

 そして、亡くなった人を忘れることなく思うことが供養になること。
 一日の終わりには枕元へ一杯の水を置き、その日の無事に感謝をし合掌すること。

 静かに話される一言一句が心に響きました。

 その後、姉は三味線を購入し、自らお稽古通いを始めました。

 さらに、下の娘が音大に進んだ時に、ピアノ専攻でありながら三味線をやりたいと言い、習いだしたんです。

 大喜びの姉から三味線のプレゼントもあり、大学での発表会には姉と共に行きました。
 きっと母もここに来ているね・・・なーんて話したことが思い出されます。

 ずっと胸につかえていた母への想いは、自分自身が母となったとき、何だか分かる気がしました。

 そう、あの時・・・鏡越しに見えた悲しげな母の目は、「世話をかけたね・・・ありがとう・・・」

 そんな風に言っている、優しく穏やかな目だったんです。

 でも、やっぱり、お母さんごめんね。
 生きている時に親孝行ができなかった・・・
 ただ、せっかく生んでくれた命、粗末にすることなく、精いっぱいに生きること、それも笑顔でね。

 子供の幸せが一番の親孝行だと今は思えるから!!
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