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火の王国編

え、私殺される?

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 ゲームでも見たシーン。約束と共に盃を交わす――。実際目の当たりにすると任侠な……いや忍侠な印象がある。

「なんだ? 何もないのか?」

 私が忍頭の言葉の意味を考えていると急かすように言われる。報酬、望み……。何でも叶えるというのは流石に方便だとして、そこに私たちを試す意図もありそう。
 依頼に対する適切な報酬を考え、答えないといけない。過去に営業として仕事をしていた時はフットインザドアやドアインザフェイスなどの交渉術などを勉強して相手によって使い分けたりしていた。けれど今はそのどちらかを使うべきか。そもそも私たちの旅において必要な報酬は何か……。

「1点だけ質問させてください」
「それが報酬か?」
「からかわないでください」
「ついな。言ってみろ」

 まるで普通の村人のように自然に笑う忍頭。それも忍びのスキルなのだろう。

「報酬とは金銭や物でなくても良いですか?」
「もちろん。要人の暗殺でも」

 さも当たり前のように言う姿にアリスとクロードは怪訝な顔をする。リラは何も気にしてない様子で、これがジェネレーションギャップかなんて呑気なことを思ったりした。

「居場所を探して欲しい人がいます。できれば動向も知りたいです」
「承った。では依頼の話をしよう。こちらに」

 そう言って忍頭は人数分揃えられている座布団に案内する。私たちが4人でここに来ることが分かっていたのか。これはちょっと怖くもなる。それに居場所を探して欲しい人が誰かも聞かずに承諾したのも、おそらく誰を探しているのか分かっていてのことなのだろう。

「俺たちが探している物。それは一族に受け継がれていた秘伝の巻物だ。俺が正式に長を継ぐにあたり習得しなければならない忍術が記されている。その保管場所に行くのに協力して欲しい」

 まさしくゲームと同じ依頼内容。ゲームだとその忍術を使って枯れていた温泉を元に戻すのだけど、それ以外にも必要性があったということか。

「分かりました」
「詳しく聞こうとしないのか? 隠し部屋にたどり着くまでの早さといい、何か知っているな?」

 忍頭は突然厳しい目つきをして私を睨む。殺気に当てられるというのはこういうことなのか。体が動かない。息が深く吸えない。返答によっては殺されるのではないかと思った。そんな中でどうにか返す言葉を探して思考を巡らせる。

「レジーナ様に危害を加えるつもりなら……と言ったはずだが?」
「狙ったらと言っていたと思うが? まあ今は争う必要もないか。情報戦においてそのような動揺は何かあると言っているようなもの。今後は気をつけることだ」
「……肝に銘じておきます」

 それ以上は追及してこなかったが、こっそり調べられたりするかもしれない。人がいなさそうなところでも発言には気をつけよう。

「ところで、その保管場所までの案内は任せて良いんですか?」
「ああ。しかし今日はもう遅い。動くのは明日の朝にしよう。それまでは旅館で旅の疲れを癒すと良い」
「やった!」
「……レジーナ様?」
「あ、ごめんクロード。つい」

 旅館と言えば美味しい御膳料理に温泉。そう思うと声も出るでしょう?

「ちなみに、お名前とか教えてもらえます?」
「サスケだ。代々受け継がれている名だがな」

 そう言って忍頭のサスケは立ち上がって私たちに背を向けた。何か思うところがあるのか、聞いて欲しくなさそうな雰囲気があった。それすらも忍びの演技かもしれないけれど。
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