願い!時を超えて

色部耀

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記憶フェイカー

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 超記憶症候群、またの名をハイパーサイメシアと言うものがある。これは今まで経験した出来事をほぼ全て詳細に記憶することができる能力だ。何年前の何月何日の夕飯は何だったのかとか、この服を買ったのは何年前の何月何日何曜日だったのかとか。その時どんな天気でどんな格好で買いに行ったのかとか、誰とどんな会話をしたのかとか。超記憶症候群の人達はそんな事を瞬時に思い出す事ができると言う。
 楽しかった記憶を思い出せば当時と全く同じ感情に浸り、また悲しかった出来事を思い出せば同じく悲しみに暮れる。メリットもあればデメリットもある――そんな能力。

 なぜこんな話を始めたのか。それは俺、丸岡薫の人となりを説明するに当たって欠かせない要素の一つだからだ。最も、俺の場合は超記憶症候群とは違って思い出すのに時間がかかると言う欠点がある。過去の出来事を当時の時間軸で早送りすることなく映画のように再生して思い出す。自分の過去を客観的に五感全ての情報で再生する。そこに感情が乗らない事だけは超記憶症候群でなくて良かったところだ。
 しかし、デメリットが何もないと言う訳ではない。学校での勉強にも役立つ形で活用させてもらっている能力。相応の代償と言うのも仕方がない。

「何だって?! 今日テストだとぉ! 聞いてねぇよ! おい薫お願いだ、どうにかしてくれよ」

 ちょうど朝のホームルームが終わる。そこで俺の能力を知る友人である新田雄介は何の臆面もなく俺に縋り付いてくる。まあ、先ほどぼやかせてもらったデメリットと言うのはこの事だ。……能力を知る人間から記憶を頼りにされてしまう。実際のところ少し面倒に感じる時があるという程度で大したデメリットではない。
 俺の記憶を当てにしてやってきた雄介は授業中に良く居眠りをして、放課後の部活に精を出す典型的な体力バカ。高校二年と言う今の時期には彼のようなタイプはまだまだ人気者で、学力以外はクラスでも信頼があるし友人も多い。しかし、そんな雄介には彼女がいない。その理由は追々説明することになるだろう。

 まあそんなことはさて置いて、こいつが泣きついてきたのには一応理由がある。先程のホームルームで担任の山本が突然一時間目にテストをするなんて言い出したからだ。授業中に良く寝ている雄介と言えど、抜き打ちで無ければどうにか再試を逃れる点数は取れる。なんていったって再試となると部活の時間が削られてしまうからな。部活の為には頑張る奴だ。

「あと十分しかねぇんだよ。山でいいから教えてくれよぉ」

 十分あれば十分だなどと言ってやりたいところだが、雄介が再試になって部活を休まれると困るのは俺だ。渋々と言った体でテスト範囲のページを開いて指を指すと優しく雄介に教える。

「ここ。絶対に出るから。先生って癖のせいで、テストに出す箇所は分かるんだよね」

「うおっ! マジかよ! ありがとな薫! 先生の癖なんて、俺には全く分かんねぇけどよ」

 事実、ウチの担任である山本先生は分かりやすい。なぜなら、テストに出す文を読むときは語尾に「うん」って言う癖があるからだ。ただそんなことをいちいち覚えているのは俺だけだろう。ちなみに、山本先生の担当教科は歴史だ。

「薫はいいよなぁ。勉強しなくても点数とれるんだから。てかノートすらとってねぇじゃん」

「まあ……そういう能力みたいなもんだからな。教科書見ながら授業聞いてたら覚える。てか、そんなこと言ってる暇があるなら俺が言った所を覚えたほうが良いぞ」

 全く反論する余地も余裕もない雄介は、机に居直って教科書にかじりついた。一方、俺はと言うと只々窓から空を見上げているだけだ。見上げた空は雲一つなく晴れやかそのもの。突然の知らせに嵐のような喧騒を立てている教室とは大違いの静かさだ。あああの澄んだ空になりたい――などと憂鬱なことを考えてしまっても仕方がないというものだろう。俺がそんなくだらないことを考えながら空を眺めていると、案の定と言うか、いつも通りと言うか。雄介以外に、もう一人俺に絡んでくる野郎がいた。
 いや、野郎という表現はここでは正しくない。正しくは女郎だな。女郎と言うと、俺はついついジョロウグモを思い出してしまうが、なかなかどうして蜘蛛って奴はグロテスクな格好であんなに綺麗な巣を作り上げてしまうのだろう。自分の身に無い美しさを身の回りの物で補填しているかのようだ。そう思うと蜘蛛と言えども、人間味があって可愛らしい。
 まあ、そんな着飾る人間はあまり友達にはなれないんだけど――。しかし、効率を最優先に考えた機能美としてなら話は別だ。実際、ジョロウグモも高機能で効率的な巣作りをしているので俺の目にも綺麗に映るのだろう。獲物が引っかかる糸と自分が移動するための糸を効率的に編み上げることが結果として幾何科学的な美しさを作っているのかもしれない。着飾る目的で作られた巣なら綺麗とは思っていないだろう。分からないけど――。
 話は逸れたが、その絡んできた奴。春菜と言えば分かるかな? うん、分からないよな。これから説明がてら、会話が行われるので、注意して聞いていただきたい。しかし、耳を傾けていただく前に注意点を述べさせて貰おう。春菜と言う女はどうしようもなく春菜なのである。
 春と言うものがどうしようもなく春だと言うことと同じように――。

「おっはよー! かーおーるー!! 朝っぱらから元気そうねー!!」

 肩まで伸びた黒い髪を風に靡かせながら嵐のようなウザさで挨拶をかましてきたのが春菜。どれだけウザいかを数値化しようとするなら、挨拶の中のポイントマークの数掛ける十が今のウザポイントと言ったところだろうか。ちなみに、寝苦しい夜に耳元を飛ぶ蚊が五ウザポイント。

「ああ、おはよう。ホームルームサボった割には朝っぱらから元気な奴だな。俺は見ての通り大して元気でも何でもねぇよ」

「病気?」

「極端なんだよお前は! 元気じゃないイコール病気なんて発想俺にはなかったよ!! 俺が悪かったよ!! 分かったならお前もさっさと勉強しろ!!」

 あーあ。七十ウザポイント獲得だ。

「何? あんた一時間目が始まる前から勉強なんてするの? おかしな事言うのね」

 そうだった。春菜はホームルームにいなかったからテストがあることを知らないんだ。教えるべきか否か――。このまま黙っていればいくらか点数を落としてしまうだろう。朝から稼いだウザポイントを消費してここはいたずらに黙っているのも有りかもしれない。しかし、不思議そうに首を傾げる春菜を見ていると事実を教えて絶望する顔を見るのも良いんじゃないかと思った。後でリアクションを見るか今リアクションを見るか。その二つを天秤にかけた結果、俺は後者を選ぶことにした。

「実は先生がホームルームの時間に突然テストをするって言ったんだよ」

 俺の言葉を聞いた春菜は、この世の終わりを宣告されたような顔をしていた。アニメや漫画なら、がーん! って効果音が鳴っていた事だろう。

「がーん!」

 思ったそばから、がーんって言いやがった。ノーリアクションな俺を見て、今度は、ががーん! って言いやがった。めんどくさい奴だ。でも、そういうノリ嫌いじゃない。

「ホームルームでテストなんて……。もう終わったってこと? 先生もホームルーム中にテストするなんて酷いじゃない」

「ん? 何か勘違いしてないか? テストがあるのは一時間目で、ホームルームの時にはテストがあるって言っただけだぞ」

 流石の俺も、誤解を招くわけにはいかなかったので、早々に訂正させていただいた。

「そんなの分かってるわよ。冗談に決まってるじゃない。真面目に受け答えされたら、逆に反応に困るわ。どうしてくれるのよ。あたしは薫と違って、前文から内容を把握する能力があるんだから」

 そう言いながら人差し指を立て、チッチッチッと言った。ただ、チッチッチッのリズムが早すぎて、まるで小鳥を呼んでいるかのようだった。まあ、ここまでである程度分かって頂けたと思うが、春菜はノリがよくて、俺をからかう元気娘だ。元気印という言葉がよく似合う。品質問題で訴えられる事もない本物の元気印だ。

「分かってたんなら早く勉強しろよ。休み時間は後五分だぞ」

「大丈夫よ。あたし、運だけは良いの。いきなりのテストくらいどうにかなるんじゃない?」

 事実、春菜は普段から成績優秀だから心配要らないだろう。前回の実力テストでは学年四百人中八位を取っていたし。ちなみに俺の順位は一位。やべっ! 自慢しちゃった。まあ、生まれついての記憶力に物を言わせてるだけなんだけどな。

「薫だって勉強なんてしてないじゃない。まあ、あんたは霊の記憶力のおかげでテストくらい苦じゃないわけね」

「ま、そういうこと」

「ホントあんたの記憶力ってどうなってるのかしらね。そういえば先週、あたしが階段から飛び降りてスカートがめくれた事件があったんだけど、その時にそばにいてあたしのパンツを見た男の子覚えてる?」

 あれを事件と呼ぶなら、加害者はあなたで、被害者はその男の子なんだろう。

「一年生の中田って子だろ? 名札してたし。まあ、ピンクのフリフリを拝めたんだ。殴られた事に文句無さそうだったぞ。先月の白を見た先輩は足を踏まれてたな。去年のウサちゃんを見て笑った奴は酷かったな。鳩尾に一撃だったか?」

「しね」

「スネ!! ちょ! スネとか反則」

 春菜は休み時間最後に俺のスネを蹴って行った。痛くて涙が溢れる。いーなーとか言ってる他の男子にこの痛みを分けてあげたいくらいだ。春菜の後ろ姿を見ると、最低マジ最低と呟きながら席に戻って行く。俺の席に駆け寄ってきた時の笑顔は何処かに無くしてしまったんですね。多分、鞄の中も机の中も探したって見つからないんだろう。でも肩から下げているスパイクを履いていなかっただけまだましだったか。
 朝からスパイクを片手に教室に入って来ていたって事は、また朝練だったか……。何を隠そう、春菜は陸上部エースにして一万メートル県大会優勝。インターハイでも入賞を果たす長距離ランナーだ。彼女の姉であり、生徒会長の若菜さんが陸上部現部長なので、実質この姉妹が陸上部を牛耳っているようなものだ。今年は姉妹揃ってリレーに出て、インターハイも決めている。最後の県大会は終わり、若菜さんは来月のインターハイを期に引退する。次の部長は当然のごとく春菜になるのだろう。
 ちなみに俺はバスケ部の一般部員。やべっ! 自慢しちゃった。……しょうがないだろ。雄介を筆頭に周りが皆強いからな。県大会を最後に引退した先輩たちも県内では有名なくらいに上手かったし。一応、一昨日あった県大会では二位、インターハイ出場は逃した。

「あんたが足を引っ張ったんじゃない? 周りは凄かったのにね。薫がレギュラーなんて、顧問の見る目がないのよ。とんだイレギュラーよ」

 俺のモノローグに口を挟むな! さっきの言葉をそのまま十ウザポイント加算して返してやるよ。

「しね!」

 そうして、一日が何事もなく終わり、俺と雄介は部活に勤しむために体育館へ向かった。

「結局今日中にはテスト帰ってこなかったな。薫が教えてくれたとこは解けたけど、ちょっと点数やばいかも」

「まあ、そんときはせめて一発で再試終わらせてくれよ」

「あたりまえだろ!!」

 再試を受けないってのを当たり前のラインにして欲しいところだ。そんな他愛のない会話をしつつ俺と雄介が体育館の中に足を踏み入れると、後輩である一年生達が挨拶の声を上げた。

「「チューーッス」」

 一応、礼儀にはうるさい部活だ。特に部長と副部長が来たのだ挨拶の声が聞こえないなんて有り得ない。ちなみに雄介が部長で俺が副部長だ。勉強以外の事となると雄介は本当に頼りになる。後輩の面倒見も良く、本人のバスケの実力もトップクラス。部長に選ばれないはずがない。俺も副部長に選ばれてはいるがやることは一般部員と大して変わらない。選ばれた理由は、一応雄介の次にバスケの実力が認められたからってだけなのだろう。

「集合!」

 雄介の一言でランニングをしていた部員が集まる。部員は全部で十五人。二年生四人と一年生十一人だ。

「今日は先輩達が引退して二日目になる。三年生は人数も多かったから、俺達下級生は今まであんまり試合に出る機会が無かった。そこで、いきなりだけど今日は部内戦をやろうと思う。三十分後にもう一度集合をかけるから、各自アップとかを済ませとくように!」

 雄介がそう言うと、一時解散となった。部長になって二日目とは言え、小中と部長の経験もある雄介はすぐに部長らしいふるまいになっていた。各自アップと言っても全員でランニングシュートとタップで軽く汗を流し、皆体力を多く消費する練習はしたがらなかった。それだけ部内戦とは言え本気な証拠なのだろう。
 皆がアップをしている最中に、雄介はホワイトボードにチーム分けを書き出した。内訳は雄介をリーダーに四人の一年生。俺をリーダーに四人の一年生。残りの五人、と言った感じ。二十五分程アップを終えた頃、俺は休憩がてらチームを集めてちょっとしたミーティングをすることにした。

「基本的には俺がパスを回して試合を組み立てようかと思う。でも試合の中心は基本的に一年生らで作り上げてもらうつもりだ。ディフェンスの時は俺も声を出すけど自分達の中で最善を考えて行動することを優先させてくれ。特に決まった指示は無しって事で行ってみよう」

 俺がそう簡単に説明すると、後輩達は気持ちのよい返事をしてくれた。

「丸岡先輩のパスを受けられるなんて、俺楽しみです! 練習の時ですけど、先週の月曜日に見たバックパス! あれ、憧れてたんです!」

 後輩の一人が、返事の後にそんなことを言った。嬉しいことを言ってくれるが、俺には全く身に覚えのない事だった。

「いやいや、確かにバックパスはする事もあるけど先週の月曜日にそんなことをした覚えなんて無いぞ。第一、先週は月火と大雨で体育館が雨漏りして使えなかったし」

 俺は、さも当然かのように言い連ねたが後輩達は頭に?を浮かべている。そんな姿を見て俺は微笑んでいるしかなかったが、次の言葉を聞いてその余裕も無くなった。

「そんな訳無いじゃないですかー。先週は丸々晴れ続きでしたよ。そんな事より、あのとき丸岡先輩が片手キャッチからノールックで新田先輩にバックパスを通した瞬間! 俺鳥肌が立ちましたもん!」

「そうそう! その後、完全にフリーだった新田先輩も気持ちよくダンク決めたもんだから、大盛り上がりで! 僕も記憶に鮮烈に残ってますよ」

 うんうんとチームの一年生四人共が顔を見合わせて頷いてる。……おかしい。俺は確かに先週は皆でモップ掛けに勤しんだ記憶がある。いや、記憶には自信がある。後で確かめてみれば分かるはずだ。ネットで過去の天気を確認してもいい。
 俺は目を瞑って先週の事を思い出す。先週の月曜日、夕方四時半からの記憶を再生。脳裏に思い出されるのはやはり雨の中全員でモップ掛けをする映像。バスケ部員だけではなく体育館を使う部活生全員で雑巾を使ったりバケツを置いたり……。雨の匂いもみんなの会話も完全に記憶の中にある。――間違いない。
 少し時間を飛ばして再生してみよう。確か雨漏りの対策をした後、部室に集まって――確か六時くらいだ。……そうだ、あの時スコア表を水に浸けてしまって皺だらけになった。だから乾かすのにロッカーの一番上に置いている。それを見せればみんなが日にちを勘違いしていると分かってもらえるはず――。

 その後の試合は、俺自身あまり納得のできる内容ではなかった。後輩に期待されていたバックパスも、出しはしたもののキレの良いものとは言えない。結局、一番勝率の高かったのは雄介のチーム。しかし、ピンチになるとフォワードである雄介にボールが集まるという、この試合の目的にそぐわない形での勝利だったみたいだ。後でチームメイトは雄介から説教を受けていた。ちなみに、俺達は二位だった。モチベーションの上がっていた後輩たちが凄まじかったとだけ言っておこう。
 今は、部活終わりに雄介と着替えながら今日の反省を含めて二人で話をしている。部内戦の事とその後の練習の内容、それとこれからの練習について粗方話が付いたところで俺は気になっていた事について口を開いた。もちろん話題は先週の月曜日の事――。

「ああ。俺も覚えてるぜ。あれはかなり気持ちよかったからな。あの瞬間だけで言うなら、補欠で出た大会よりも記憶に残ってるくらいだ」

 そこまで言われると、俺も自信が揺らぐ。実はネットで過去の天気の記録を見ても晴れだったのだ。

「そうだ、スコア表! 濡れた体育館で落としてびしょびしょにした奴! あれを見れば確かめられる!」

 そう言って、俺はロッカーの上に手を伸ばす。

「あれ? 無いな」

 もしかしたら誰かが保管棚に戻したのかもしれない。そう思って保管棚を開けて濡れてしまったはずのスコア表を手に取った。
 そう……はず……だった――。

「ははっ。濡れてなんかいねーじゃねえか。らしくないな薫、きっと疲れてるんだよ。今日は帰ってゆっくりしろって」

 それでも、俺は諦めきれずに他の部員にも話を聞いた。しかし、それはどれもが徒労に終わった。諦めて……帰るしかなかった――。俺の記憶がおかしい……? 今まで一度も俺の記憶が間違っていた事は無かった。それで信頼を得ていた場面も多いし、何より俺の唯一の自信だ。俺にはこれ以外何も取り得が無いって言っても良い。だから……それだからこそこれだけ証拠を見せつけられるとショックが抑えられない。
 俺が肩落としてあれこれと思いを巡らせながら校門をくぐると、待ち構えていたかのように門の陰から春菜が顔を出した。なぜか満面の笑みで――。
 実のところ、こいつは朝から機嫌を損ねたせいで一日中嫌味しか口にしていなかった。たまには甘味も欲しい……なんて部活が始まる前までは思っていたりした。

「今日はウチでご飯食べるんでしょ? 丁度、ここでダウンがてらストレッチをしてた所なのよ。今終わったし、ついでに一緒に帰ろっか?」

 わざわざ校門前でストレッチする阿呆がいったいどれだけいるのだろうか? 遠回しなツンデレを披露しやがって。そんな言葉を聞くこっちとしては余計に疲労もたまるってもんだ。

「ああ。そうだな、わざわざ待っててくれてありがとな。まあ、頼んだ訳じゃ無いんだけどな」

 目には目を。ツンデレにはツンデレを。秘技ツンデレ返しとでも名付けようか。

「あたしだって、あんたを待ってたんじゃないわよ。ストレッチしてただけなのよ! そうよ、待ってたんじゃなくて舞ってたのよ!」

 ストレッチを舞いと表現するには、いささか忍びないが……。まあ構わないか。このやり取りにも疲れた。いや今日が疲れたからそう感じてしまうだけなのかもしれない。結局それ以上突っ込む事無く二人揃って帰ることになった。
 思い出せば、確かに俺は今日春菜の家でご飯を食べる事になっていた。こういう展開と言えば恋人同士が鉄板なのだろうが、そう言うわけではない。俺は今、一軒家で一人暮らしをしている訳だが、これも金持ちという訳じゃなく両親が死んでしまって家だけがあるという状態。暗い話はあまり長々としたくないので、そこは割愛しておく。
 そして春菜の家は俺の家の隣で、昔孤児院を営んでいた。ちなみに今は親父さんの仕事の関係で一年ちょっと前、俺が高校に上がる頃に辞めてしまっている。その孤児院で俺は長らく世話になっていたのだ。
 つまりは、春菜の姉である若菜さん、妹の玲菜、そしてこの隣を歩いている春菜の三人とは兄弟のように育った。昔は若菜さんを姉ちゃんと呼んでた頃もあったが、中学生になったときに呼び方を変えた。
 その孤児院には七歳の頃からお世話になっていて、一人暮らしを始めて一年以上が経った今でも、こうやって夕飯の誘いなどで伺うことがあるのだ。七歳の頃からお世話になっているとは言ったが、実際交流の長さで言えば物心をついた時からの付き合いになる。春菜も今こうして二人で下校している訳だが、違和感なく会話がずっと続く。どうでもいい話が延々と続く。まるで家族と話している様な感じ。そう思える程話が弾むし落ち着く。
 ……こうやって話をしていると、やっぱり部活での話をしたくなってくる。そう。あの記憶違いの話。皆にとってはどうでも良い話なのかもしれないけど。でも、どのみちどうでも良い会話をするんだ。構わないだろう。

「ところでさあ、春菜? 聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「好きな人ならいないわよ。何? あんたも誰かに頼まれたわけ? 紹介とかなら会うつもり無いって伝えといて」

「は?」

 やべっ! 間の抜けた声がつい口をついて出てしまった。

「何? 違ったの? いや、勘違いした言い訳をするんじゃないけど……。さっき部活の友達に同じ事言われてね。全く、あたしなんかの何が良いのやら……」

「確かに、お前に惚れる意味は分かんねぇよ。もしかして俺の知らないところで可愛い子ぶってんのか? 似合わないけど」

「一言余計よ! でも、ホントそれ! 可愛い子ぶってるはずなんか無いし。それに、あたしより可愛い子も良い子も沢山いるじゃない。総合的に見たら、あたしなんか底辺よ?」

 いや、客観的に見ると春菜は結構スペックの高い奴だとは思うし、実際に噂も絶えない。まあ本人は、本気で自分は無価値な人間だと思い込んでいるから皆にたいして謙虚なんだろう。周りに気を使って謙虚に言う女子は多いが、こいつは本気なんだ。

「でもお前、勉強もスポーツもできて、結構優秀じゃん。性格は破綻してるけど」

「だから! 一言余計だって言ってんの!!」

 スネ! だからスネ反則!! この暴力女め!!

「いつも言ってるでしょ? あたしは、運だけは良いの。たまたま結果が出ただけで、能力自体はそれに伴ってなんかいないわ。だから、あたしなんて大したことないのよ。まあ、あたしが世界で二番目に無能でも、あんたが一番だから辛くはないけどね」

 笑顔で振り返ってそんなことをを言う。肩口まで伸びた結ばれてない髪がそれに対してふわりとなびく。そこだけ見れば夕日に当てられてさぞかし綺麗なのだろう。しかし今の俺はスネを抱えてしゃがみこんでいる状態だ。それに、振り向いた時になびいたのは髪だけじゃない。

「お前は可愛くないけど、白のレースは可愛いと思うぞ」

「しね!!」

 飛び膝蹴りが顔面に食い込みました。お父さん、お母さん。今そちらに向かいます。

「ところで、あんたが聞きたかった事っていったい何だったのよ? 話がずれちゃったじゃない」

「奇遇だな、今俺の首の骨もずれちゃった所だ。聞きたかった事も脳震盪で忘れてしまったかもしれない」

「あら? じゃあ後ろから同じように蹴れば万事解決ね。ほら、遠慮してないで回れ右!」

「標的は後頭部だと!? 今度は記憶だけじゃなく、命まで飛ばすつもりか?」

「そうね。命って膝蹴りでどのくらい飛ぶのかしら? 百メートルくらい飛んだらオリンピックでも目指そうかしら? そうなったら長距離は引退ね」

「ファールをしても三回まで飛ばせますってか? 平和を謳うスポーツの祭典でそんな事させねえよ!」

「もっと分かりやすい突っ込みしてよ。ただでさえワケわからないノリで喋ってるんだから気を使って」

「お前にだけは言われたくない!!」

「で? 本題は?」

 全く……。話の腰を折って、首の骨をずらして、最後にはこれかよ。真面目な話をしようとしてたのにどうしてこうなった。しかも、会話の主導権を完全に奪われている。

「ここで冗談パート終了だ。ところで春菜は、確かに自分が覚えてた事が事実と違っていたなんて事あるか?」

「当たり前じゃない、人間なんだから。記憶違いくらいあるわよ。聞きたかった事ってそんな事?」

「いや、それだけじゃない。聞きたかった事は先週の月曜日が雨だったかどうかだ」

 俺が真剣に聞いているからだろう。春菜も真面目な顔をして考えてくれている。思い出すだけのことでそんなに時間をかけなくても良いと思うが、そこは触れずに待つ。しかし、春菜は口を開くと期待以上の物を話してくれた。

「つまり、薫は先週雨が降った記憶があって、思い違うはずもないような記憶がある。でも、周りの皆は晴れだった記憶がある。そんなところかしら?」

 俺はそこまで推測してくれたことに心底驚いた。いや、春菜にとってそのくらいの推測は当たり前なのかもしれない。なにせ、俺と違って前文を読み取る能力があるんだからな。

「そうなんだ。俺は雨が降った記憶があるんだよ。でも、周りの皆は晴れだった記憶が残ってる。春菜もやっぱり晴れだったって言うんだよな?」

 その質問に対して、春菜はしばらくしてから答えた。

「先週の月曜日は百パーセント晴れだったね。体育は外だったし、朝練も夕練もしたし。それにこの一週間、雨の日用の靴なんか履かずに毎日ランニングシューズで過ごしてたし」

 女子高生が毎日ランニングシューズな所には突っ込まないでおこう。ついでに言うと、部活のときはスパイクを履くくらいはしてるのだろうが、大差ないから省いたのだろう。

「ただ……」

「ただなんだ?」

「いや、なーんかどっかで似たような事を聞いたような気がしたの。うーん、気のせいかな? 全くはっきり思い出せない」

 そう言って、春菜は黙り込んでしまった。俺も気にはなったが、それ以上に春菜も気になっているようだった。結局それから俺達は沈黙のまま宮内家に到着した。
 宮内家に着くと俺は無意識に、ただいまと言ってしまう。自分の家という訳ではないが、今でも帰る場所の一つであることは間違いなかった。玄関を入ると、すぐに駆け寄ってくる音が聞こえる。俺はもう慣れたものだから、この足音は落ち着く音楽みたいなものだ。むしろ、聞こえなかったら不安になってしまう。

「薫お兄ちゃーーん!! おかえりなさーーい」

 大きな声を上げていつも飛び付いてくる少女。今俺にしがみついているちっちゃな子が玲菜。先程まで眉間に皺を寄せていた俺の顔もこの可愛い妹を見ると表情が和らぐ。
 ちっちゃいと言っても、身長的なものであって、今は中学三年生。二つの意味で、見た目以上に大きいのだ。女の子のみが持つ、神々の山脈も身長に反比例するかのように、イッツ・マウント富士である。ただし、玲菜が飛び付くとすぐに引き剥がしてしまうのが、隣にいる春菜。
 ちなみに春菜は普通だ。

「あのねっ! 今日は薫お兄ちゃんがウチで御飯を食べるって聞いたから、玲菜は急いで学校から帰って料理のお手伝いしてたんだよ!」

「おっ! さすが玲菜は偉いなー。美味しくできたか?」

「もちろん!」

 玲菜は、ぐっと握りこぶしを作ってそう話す。そして、ずっと嬉々とした笑顔。どんな時も何をしていても玲菜は可愛くてたまらない。

「薫お兄ちゃん! それじゃあ、いつもの今日の面白話! どうぞ!」

 ああ。これだけは可愛いとは思えない。何このハードル。ほぼ高跳びだよ。

「えっと、今日の朝友達が物凄く辛そうな顔をしてたから、話を聞いたんだよ。どうかしたのか? って」

「ふんふん、それで?」

「で、そいつは昨日ポールにぶつかってひどい目に遭ったって言うわけよ」

「えっ? でもポールにぶつかってもちょっと痛いだけだよね?」

「そう。俺もそう思ったんだけど、続きがあって。実はぶつかったのは、隣の高校で有名なスポーツ留学生のポール君だったんだ」

「あちゃー。ポール君て人はガラが悪かったんだね」

「いや、ゲイだったんだ。一晩中追いかけ回されたらしい」

 玲菜は、聞き終えて少しだけ笑っていた。含み笑い程度だ。四十点くらいかな。

「0点。下らない事言ってないでリビング行くわよ」

 春菜め! しかも玲菜にどんまいって肩を叩かれてしまった。ガックシと肩を落としてリビングに入ると、もうすでに夕飯が用意されていた。俺が自炊するときとは違って栄養の事も考えてくれている。俺はもっぱら、適当炒めと丼ものしか作らない。気が向いたらハンバーグ程度だ。料理は全くできないと言っても過言ではない。

「いらっしゃい薫君。一週間ぶりかしら?」

「そうですね。それでも毎週のようにご飯に誘ってくれてありがとうございます」

「いいのよ。薫君は息子のようなものなんだから。遠慮なく食べていってちょうだい」

 お母さんは本当にできた人である。落ち着きがあり、優しく。かと言って甘やかすわけではない。そんな感じの人だ。お父さんはと言うと、起業家であり実業家だ。起業家も実業家も、よく意味は分からないがそう言うイメージ。昔営んでいた孤児院も、数ある事業の一つだったらしい。働き詰めで家族同然と言って貰ってはいるが、俺もあまりはっきりと話をしたことはない。今も海外で仕事中なのだとか。

「そう言えば、若菜さんは? まだ帰ってないのかな?」

 俺の疑問には、机に身を乗り出した玲菜が答えてくれた。

「若菜お姉ちゃんは、生徒会の仕事で帰るのが遅れるって。だから先に食べててもいいんだって」

 うん。お父さんの血は若菜さんに色濃く受け継がれているみたいだ。お母さんはキッチンを軽く片付け終わるとリビングの席についた。

「それじゃあ、若菜はまだだけど先にいただきましょうか? はい。みんな手を合わせて。いただきます」

 孤児院の頃からの風習。みんなで手を合わせていただきます。
 結局、若菜さんが帰ってくるまでに皆食事を終えてしまった。俺は、明日の宿題などもあり、家に帰らなければならなかったので、少しの談笑の後に帰宅することにした。帰宅と言っても隣の家なわけだが――。
 宮内家を後にし、自宅に入ろうとしたときだった。俺は、夜道を歩く規律正しい足音を耳にした。足音に規律正しさなんてあるのかとも思うが、その人の一挙手一投足は全てが整った非の無い公式の様なのだ。そして音のする方に目線をやると、やはりそこには彼女がいた。
 ――宮内若菜。
 俺の顔を見るや否や、若菜さんは笑顔で手を振ってきた。

「こんばんは。ウチで晩御飯を食べてたんだっけ? 今日は帰るのが早いのね」

 ちなみに今の時間は九時を少し過ぎたくらいの時間だ。確かにいつもの俺ならもう少し遅くまでいてもおかしくない。

「明日までにやらないといけない宿題があって、早めに帰ることにしたんです。若菜さんこそ、今日は遅いんですね」

「そうね。ちょっとやらないといけないことがあってね。皆に迷惑かける訳にいかないから帰りが遅くなっちゃった。もしかしたらお母さんはもう寝ちゃってるかな? って思ってたくらい」

 お母さんもさすがにそんなに早く寝ないか。若菜さんは自分でそう言い直した。

「大変ですね。いつもそんなに頑張ってたら疲れるでしょう」

「うーん……。薫君にとってはそう思うのかな? でも私は全く平気よ。ごめんね。変に気を遣わせちゃって。私はやりたいようにやってるだけだから」

 この人はいつもそうだ。普通なら疲れ果ててしまうような物でも、事もなさげにこなしていく。しかも、他人の何倍も手際よく何倍も正確に。さらには、周りの人が辛い努力だと感じることも、若菜さんにとっては努力ですらないのだ。だからこそ、生徒会長でありながら委員長をし、部長までこなす。さらに学年一位の成績を取り続けるなんて事もできるのだろう。
 だが、それ故に今日みたいに遅い時間までかかる用事というのはあり得ないと感じる。おそらく、厄介な事にも手をつけているのだろう――と、そんな事を邪推してしまうくらいに。例えば、教員がしなければいけない仕事とか。

「俺も少しくらいなら手伝いますよ。あまり仕事をし過ぎて体を壊さないでくださいよ」

「ありがとう。じゃあ、今度何かあったらお願いしちゃおっかな? 薫君の方こそ、困ったことがあったら何でも言ってね。お姉ちゃんが何でも手伝ってあげるから」

 若菜さんに相談すると、手伝うと言うより解決しちゃうんだよな。何でも直ぐに。俺が若菜さんを手伝うってのとは何百倍もの差がある。そう考えた所で、俺は今日の記憶違いの件を話そうかと思った。しかし、これ以上若菜さんに問題を抱えさせる訳にはいかない。

「薫君が何か悩み事があるって顔をしてたから気になったんだけど。あまり問題が大きくならないうちに相談してね。出来る限りの事はするから」

 笑顔でそう言う若菜さんは、もう全てを知っているかのような雰囲気を出していた。もしかしたら、すでに学校の誰かから話を聞いたのかもしれない。情報網も洞察力も規格外なのだから。なにせ、生徒会長で委員長で部長で学年一位である。

「たまには若菜さんの力を借りずに解決してみせます」

 誤魔化す意味など無いのだから、若菜さんには断りの言葉だけ伝えた。

「そうね」

 若菜さんはそれだけ言って納得してくれた。俺の考えなんてお見通しなんだろう。最後に若菜さんは、宿題頑張ってねとだけ言って帰って行った。俺はそのスレンダーな後ろ姿を見て何故か一瞬、悲しそうに感じた。そして家に入る前に少し立ち止まってから入るその仕草が、何か悩みを抱えているようにも思えてしまった。
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