100点満点の女

色部耀

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「俺は黒ビールで。高橋さんはカルアミルク?」

「流石高橋くん。よく覚えてる」

「カルアミルクで。今日呼んだのはちょっと話ししたいことがあるからだし、奢るよ」

「ううん。私も構ってくれて嬉しいからいいよ。自分の分はちゃんと払う。給料変わんないしね」

 給料が変わらないと聞いたところで下柳は唸る。

「……そこまで言ってくれるなら」

 そうして二人の目の前にドリンクが運ばれてきたところで乾杯を交わす。互いに一口だけ喉を潤すと下柳が口を開く。

「今日話したかったことなんだけど……実は俺……」

 下柳はグラスを置いて百合子のことを真っ直ぐに見る。

「高橋さんのことが好きなんです。俺の彼女になってください」

「え?」

 百合子は意表を突かれたかのように目を丸くするとそう言って固まった。下柳はその反応も想定内だったのか、全く動じることはない。

「いや、だって、今日は豊田さんと晩御飯食べに行ったんじゃ……」

「えっと高橋さんも知ってるみたいだから話すけど、さっき豊田さんから想いを告げられて断ったところなんだよね。好きな人がいるからって。で、その好きな人っていうのが高橋さんのことなんだ」

「え? なんで? 豊田さん可愛いし仕事も頑張ってるし良い子だよ? もったいないことしたって後悔するよ。私なんて八方美人だし裏で何考えてるか分からないのに。表の顔の五十パーセントだけでそんな判断しちゃダメだよ……」

 顔を赤くしながらも両手を振ってそう答える百合子だったが、下柳はその姿を見てくすくす笑うと謝罪の言葉を口にした。
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