100点満点の女

色部耀

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 翌日、百合子のもとに豊田が話しかけに来た。その表情は少し恥ずかしそうで声もとても小さい。

「あの……百合子先輩に相談なんですが……」

 そう言って切り出されたのは他でもない恋愛相談だった。内容は百合子の同期に当たる下柳に想いを伝えようと思っているが、彼女はいないのか告白しても迷惑にならないだろうかといったこと。

「私が知る限り下柳くんに恋人はいないはずだし、女性関係の噂も聞いたことないかな? だから想いを伝えて迷惑なんてないから心配しなくても大丈夫よ」

 百合子の言葉にお礼をした豊田は下柳のもとへと行き、約束を取り付ける。その瞬間、下柳はちらりと百合子を見たが目を合わせた百合子が微笑み返しただけだった。

 夜になり、仕事が終わって帰宅した百合子はいつもの如くブログを更新していた。

『今日は後輩から恋愛相談を受けた。花の金曜日だし今頃二人で食事でもしているのだろうか。私とは違って、とても可愛く魅力的な女の子なので上手くいくことと思う。このまま交際が始まって結婚まで行ったら私は結婚式に呼ばれるのだろうか。そう思うと、その日のために何か考えておかないといけない。結婚式はお金がかかるので司会進行くらいやれば少しは協力できるだろうか。そうして恩を売っておけば仕事で何かあった時に助けてくれる。それが私の計画だとも知らずに……』

 そこまで書いて更新をしたところで百合子はデスクチェアの背もたれに体を預ける。そして溜息をつくと小さな声でつぶやいた。

「はーあ。私にも浮いた話ないかなー。……下柳くん良いと思ってたんだけど」
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