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殺害依頼6
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それから私たちは酒場を出てゴーフの家に戻った。
「父親を殺して欲しい。ソフィアちゃんはあの時確かにそう言ったよね?」
窓枠に腰かけたゴーフはベッドに座る私に向かって言った。
「はい。それが私の願いです」
「もう少し詳しく聞かせてくれるかな?」
私の抱える問題を解決しようと真剣に話を聞こうとしてくれるゴーフ。希望はほぼ絶たれたと言ってもおかしくない状況。藁にもすがる思いで私はゴーフに詳細を打ち明けた。
四日前、私の父が「無心」と呼ばれる呪われた状態になり、我を失ってしまったこと。その父が母に重傷を負わせ、さらに姉を連れ去ってしまったということ。兵も出せず、姉を奪還するための動きが取れないこと。誰も頼れないこと。
「無心……か。魔法の使い過ぎで起こることが大半だけど、ソフィアちゃんのお父さんは魔導士か何か特殊な仕事を?」
「いえ……魔法は人並みに使う程度です。レベル5までは使える技量はありましたが、ほとんど使っているところは見たことがありません」
魔法は難易度によってレベル分けがされており、一般的にレベル2までは誰でも使うことができる。レベル3以降は魔法をメインに戦う者たちが使い、レベル4以降は使える者も限られてくる。
「そうか。魔法と無心の関係については何か知ってる?」
「はい。魔法は感情を押し殺す事によって生まれるエネルギーを元に放つもの。無心は感情が無くなってしまった状態のこと。強力な魔法を使い続ける事で感情を無くしてしまい無心になるとされています」
「ソフィアちゃんは王立の学校でしっかり勉強をしてきたんだね。その分だとソフィアちゃんも結構魔法が得意なのかな?」
「レベル4の魔法を一つだけ使える程度には得意です」
あと半年で学校を卒業する予定だけれど、卒業予定の生徒の中でも私は魔法の成績は良い方だ。魔法専攻のクラスはレベル3の魔法を一つ使えることが卒業条件なことだと言えば分かるだろうか。
「そうか。でも、本質は少し違うんだよね。酒場の連中、感情なんて殺してなくても好き放題な魔法を使ってただろ?」
思い返せば、私に色んな話を聞かせてくれているなか、店内で華やかな魔法を打ち上げて盛り上げている人が大勢いた。
「まあ、そんな事はどうでもいいや。ソフィアちゃんのお父さんの話を続けよう」
「父親を殺して欲しい。ソフィアちゃんはあの時確かにそう言ったよね?」
窓枠に腰かけたゴーフはベッドに座る私に向かって言った。
「はい。それが私の願いです」
「もう少し詳しく聞かせてくれるかな?」
私の抱える問題を解決しようと真剣に話を聞こうとしてくれるゴーフ。希望はほぼ絶たれたと言ってもおかしくない状況。藁にもすがる思いで私はゴーフに詳細を打ち明けた。
四日前、私の父が「無心」と呼ばれる呪われた状態になり、我を失ってしまったこと。その父が母に重傷を負わせ、さらに姉を連れ去ってしまったということ。兵も出せず、姉を奪還するための動きが取れないこと。誰も頼れないこと。
「無心……か。魔法の使い過ぎで起こることが大半だけど、ソフィアちゃんのお父さんは魔導士か何か特殊な仕事を?」
「いえ……魔法は人並みに使う程度です。レベル5までは使える技量はありましたが、ほとんど使っているところは見たことがありません」
魔法は難易度によってレベル分けがされており、一般的にレベル2までは誰でも使うことができる。レベル3以降は魔法をメインに戦う者たちが使い、レベル4以降は使える者も限られてくる。
「そうか。魔法と無心の関係については何か知ってる?」
「はい。魔法は感情を押し殺す事によって生まれるエネルギーを元に放つもの。無心は感情が無くなってしまった状態のこと。強力な魔法を使い続ける事で感情を無くしてしまい無心になるとされています」
「ソフィアちゃんは王立の学校でしっかり勉強をしてきたんだね。その分だとソフィアちゃんも結構魔法が得意なのかな?」
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あと半年で学校を卒業する予定だけれど、卒業予定の生徒の中でも私は魔法の成績は良い方だ。魔法専攻のクラスはレベル3の魔法を一つ使えることが卒業条件なことだと言えば分かるだろうか。
「そうか。でも、本質は少し違うんだよね。酒場の連中、感情なんて殺してなくても好き放題な魔法を使ってただろ?」
思い返せば、私に色んな話を聞かせてくれているなか、店内で華やかな魔法を打ち上げて盛り上げている人が大勢いた。
「まあ、そんな事はどうでもいいや。ソフィアちゃんのお父さんの話を続けよう」
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