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命漏症検査
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悲鳴をあげる体を無理矢理捻って成瀬先生の方を向くと成瀬先生は意地悪そうな笑みを浮かべながらも話し始めた。
「命漏症の検査をすると言っていたのは覚えているか? 疲れているところを悪いが、今から少しついてきて欲しい」
命漏症の検査――。以前成瀬先生が断言できないが恐らくそうではないかと言っていた病名だ。確かに精密検査のようなことはしていなかった。
「分かりました」
少し先まで歩いていた大和と芽依が俺たちの方を見ながら待っていてくれたが、成瀬先生の言葉が聞こえていたのか声を上げて手を振って来た。
「先行ってるから蓮も急いで体洗って食堂来いよー」
「おっけー」
俺の返事を聞いた二人はとてもゆっくりと寮の方へと向かって行った。俺はというと、成瀬先生に付いて行く形で職員室のある方へと向かう。棒のようになった足を庇って手すりのない階段の壁を頼りに地価へと降り、職員室の更に先へと進む。円形のホールのような場所に着くと、成瀬先生は見知らぬ白衣姿の男の人と話を始めた。おそらく命漏症の検査をしてくれるという人なのだろう。成瀬先生がその人と話し始めてすぐ、手招きをされて俺も傍へと行く。
「こいつが神崎蓮。こっちは忍術医学を専攻している中忍学生四年の仙田徹。まだ学生だが命漏症の検査をするには十分信頼できる」
「どうも」
軽く挨拶をしてくれた仙田さんに俺もお辞儀をしてよろしくお願いしますと返した。
「ではこちらです」
仙田さんについてさらに奥に進みエレベーターに乗る。中で仙田さんがカードキーパネルにかざすと、パネルがそのまま光ってタッチパネルになった。そこには飛び飛びでいくつかの数字が表示されている。おそらくカードキーによって権限が違っていて今表示されている数字が仙田さんの入ることができるフロアということなのだろう。十六という数字を仙田さんがタッチすると、すぐにエレベーターの扉が開く。移動した様子もなかったのでこれも何か忍術が使われているのだろう。
それからまた仙田さんについてしばらく歩くと、重々しい病院の検査室のような場所に案内された。しかし中には医務室にあるような簡易なベッドと電子レンジサイズの機械がいくつも置いてある感じの部屋だった。
「とりあえずベッドに座って上半身裸になって」
俺は言われるがままにベッドに腰かけると、制服である忍び装束の上半身部分をはだけさせて腰まで下ろす。仙田さんは一つパソコンのような機械を起動させるとシール型の電極のようなものをいくつも俺の体に貼り付ける。そして暫くしているとモニターに波形が表示される。
「あーこれは典型的な命漏症ですね。それもかなりの重症です。外で生活するのしんどかったでしょう」
仙田さんはそう言ってモニターを見続ける。すると成瀬先生が仙田さんに質問をした。
「数値は?」
「うーん。マイナス九十六ですね。命力操作を学ばずに外で生活を続けていたら三十歳までに重大な病気でも発症して亡くなっていた可能性が高いです」
死んでいた可能性が高い? 流石に俺もその言葉には動揺が隠せない。これは言葉通り命がけで命力操作を身に付けないといけないみたいだ。
「そうか……」
成瀬先生は神妙な顔つきでそう言うと俺の背中を叩いた。
「外で問題なく過ごせるようになるまで私が責任を持って面倒を見てやるから安心しろ。お前の親父さんにも連絡はしておく」
「ありがとうございます……」
成瀬先生の言葉は嬉しいし、心からありがたいと思う。しかしそれとは別にやはり死ぬかも知れなかったと言われたことが衝撃だった。放心状態に近い。
「また何かあったら言ってください。時間が空けられたら力になりますので」
仙田さんはそう言いながら俺に張られた電極シートを剥がす。俺もほぼ無心のまま忍び装束を着直した。
「ありがとう。世話になったな。じゃあ行くか、神崎」
目的だけを端的に終えた俺と成瀬先生は部屋から出て真っ直ぐに地上へと戻った。見送られる形で地下への入り口まで引率してもらったところで、寮へ向かおうとした俺を成瀬先生が呼び止めた。何かと思うと成瀬先生は一枚のプリントを渡してきた。反射的に受け取った俺に成瀬先生は説明する。
「命漏症を解決することだけが目的だと楽しくないだろうからな。強くなりたいと言っていたお前に、一つ目標を作ってやろう。本来なら中忍教育で習う術ではあるんだが、これ一つに集中すればお前なら半年ほどで使えるようになるかもしれない。放課後に暇だったらグラウンドで練習するといい。じゃあ、頑張れよ」
それだけ言って地下へと去って行った成瀬先生を俺は逆に見送る。先生の姿が見えなくなったところで貰ったプリントに目を通すと、題名にはこう書かれていた。
火遁・獄炎柱の術――と。
「命漏症の検査をすると言っていたのは覚えているか? 疲れているところを悪いが、今から少しついてきて欲しい」
命漏症の検査――。以前成瀬先生が断言できないが恐らくそうではないかと言っていた病名だ。確かに精密検査のようなことはしていなかった。
「分かりました」
少し先まで歩いていた大和と芽依が俺たちの方を見ながら待っていてくれたが、成瀬先生の言葉が聞こえていたのか声を上げて手を振って来た。
「先行ってるから蓮も急いで体洗って食堂来いよー」
「おっけー」
俺の返事を聞いた二人はとてもゆっくりと寮の方へと向かって行った。俺はというと、成瀬先生に付いて行く形で職員室のある方へと向かう。棒のようになった足を庇って手すりのない階段の壁を頼りに地価へと降り、職員室の更に先へと進む。円形のホールのような場所に着くと、成瀬先生は見知らぬ白衣姿の男の人と話を始めた。おそらく命漏症の検査をしてくれるという人なのだろう。成瀬先生がその人と話し始めてすぐ、手招きをされて俺も傍へと行く。
「こいつが神崎蓮。こっちは忍術医学を専攻している中忍学生四年の仙田徹。まだ学生だが命漏症の検査をするには十分信頼できる」
「どうも」
軽く挨拶をしてくれた仙田さんに俺もお辞儀をしてよろしくお願いしますと返した。
「ではこちらです」
仙田さんについてさらに奥に進みエレベーターに乗る。中で仙田さんがカードキーパネルにかざすと、パネルがそのまま光ってタッチパネルになった。そこには飛び飛びでいくつかの数字が表示されている。おそらくカードキーによって権限が違っていて今表示されている数字が仙田さんの入ることができるフロアということなのだろう。十六という数字を仙田さんがタッチすると、すぐにエレベーターの扉が開く。移動した様子もなかったのでこれも何か忍術が使われているのだろう。
それからまた仙田さんについてしばらく歩くと、重々しい病院の検査室のような場所に案内された。しかし中には医務室にあるような簡易なベッドと電子レンジサイズの機械がいくつも置いてある感じの部屋だった。
「とりあえずベッドに座って上半身裸になって」
俺は言われるがままにベッドに腰かけると、制服である忍び装束の上半身部分をはだけさせて腰まで下ろす。仙田さんは一つパソコンのような機械を起動させるとシール型の電極のようなものをいくつも俺の体に貼り付ける。そして暫くしているとモニターに波形が表示される。
「あーこれは典型的な命漏症ですね。それもかなりの重症です。外で生活するのしんどかったでしょう」
仙田さんはそう言ってモニターを見続ける。すると成瀬先生が仙田さんに質問をした。
「数値は?」
「うーん。マイナス九十六ですね。命力操作を学ばずに外で生活を続けていたら三十歳までに重大な病気でも発症して亡くなっていた可能性が高いです」
死んでいた可能性が高い? 流石に俺もその言葉には動揺が隠せない。これは言葉通り命がけで命力操作を身に付けないといけないみたいだ。
「そうか……」
成瀬先生は神妙な顔つきでそう言うと俺の背中を叩いた。
「外で問題なく過ごせるようになるまで私が責任を持って面倒を見てやるから安心しろ。お前の親父さんにも連絡はしておく」
「ありがとうございます……」
成瀬先生の言葉は嬉しいし、心からありがたいと思う。しかしそれとは別にやはり死ぬかも知れなかったと言われたことが衝撃だった。放心状態に近い。
「また何かあったら言ってください。時間が空けられたら力になりますので」
仙田さんはそう言いながら俺に張られた電極シートを剥がす。俺もほぼ無心のまま忍び装束を着直した。
「ありがとう。世話になったな。じゃあ行くか、神崎」
目的だけを端的に終えた俺と成瀬先生は部屋から出て真っ直ぐに地上へと戻った。見送られる形で地下への入り口まで引率してもらったところで、寮へ向かおうとした俺を成瀬先生が呼び止めた。何かと思うと成瀬先生は一枚のプリントを渡してきた。反射的に受け取った俺に成瀬先生は説明する。
「命漏症を解決することだけが目的だと楽しくないだろうからな。強くなりたいと言っていたお前に、一つ目標を作ってやろう。本来なら中忍教育で習う術ではあるんだが、これ一つに集中すればお前なら半年ほどで使えるようになるかもしれない。放課後に暇だったらグラウンドで練習するといい。じゃあ、頑張れよ」
それだけ言って地下へと去って行った成瀬先生を俺は逆に見送る。先生の姿が見えなくなったところで貰ったプリントに目を通すと、題名にはこう書かれていた。
火遁・獄炎柱の術――と。
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