死んだと思ったら忍術学校に転移してました。

色部耀

文字の大きさ
上 下
17 / 23

命漏症検査

しおりを挟む
 悲鳴をあげる体を無理矢理捻って成瀬先生の方を向くと成瀬先生は意地悪そうな笑みを浮かべながらも話し始めた。

「命漏症の検査をすると言っていたのは覚えているか? 疲れているところを悪いが、今から少しついてきて欲しい」

 命漏症の検査――。以前成瀬先生が断言できないが恐らくそうではないかと言っていた病名だ。確かに精密検査のようなことはしていなかった。

「分かりました」

 少し先まで歩いていた大和と芽依が俺たちの方を見ながら待っていてくれたが、成瀬先生の言葉が聞こえていたのか声を上げて手を振って来た。

「先行ってるから蓮も急いで体洗って食堂来いよー」

「おっけー」

 俺の返事を聞いた二人はとてもゆっくりと寮の方へと向かって行った。俺はというと、成瀬先生に付いて行く形で職員室のある方へと向かう。棒のようになった足を庇って手すりのない階段の壁を頼りに地価へと降り、職員室の更に先へと進む。円形のホールのような場所に着くと、成瀬先生は見知らぬ白衣姿の男の人と話を始めた。おそらく命漏症の検査をしてくれるという人なのだろう。成瀬先生がその人と話し始めてすぐ、手招きをされて俺も傍へと行く。

「こいつが神崎蓮。こっちは忍術医学を専攻している中忍学生四年の仙田徹。まだ学生だが命漏症の検査をするには十分信頼できる」

「どうも」

 軽く挨拶をしてくれた仙田さんに俺もお辞儀をしてよろしくお願いしますと返した。

「ではこちらです」

 仙田さんについてさらに奥に進みエレベーターに乗る。中で仙田さんがカードキーパネルにかざすと、パネルがそのまま光ってタッチパネルになった。そこには飛び飛びでいくつかの数字が表示されている。おそらくカードキーによって権限が違っていて今表示されている数字が仙田さんの入ることができるフロアということなのだろう。十六という数字を仙田さんがタッチすると、すぐにエレベーターの扉が開く。移動した様子もなかったのでこれも何か忍術が使われているのだろう。

 それからまた仙田さんについてしばらく歩くと、重々しい病院の検査室のような場所に案内された。しかし中には医務室にあるような簡易なベッドと電子レンジサイズの機械がいくつも置いてある感じの部屋だった。

「とりあえずベッドに座って上半身裸になって」

 俺は言われるがままにベッドに腰かけると、制服である忍び装束の上半身部分をはだけさせて腰まで下ろす。仙田さんは一つパソコンのような機械を起動させるとシール型の電極のようなものをいくつも俺の体に貼り付ける。そして暫くしているとモニターに波形が表示される。

「あーこれは典型的な命漏症ですね。それもかなりの重症です。外で生活するのしんどかったでしょう」

 仙田さんはそう言ってモニターを見続ける。すると成瀬先生が仙田さんに質問をした。

「数値は?」

「うーん。マイナス九十六ですね。命力操作を学ばずに外で生活を続けていたら三十歳までに重大な病気でも発症して亡くなっていた可能性が高いです」

 死んでいた可能性が高い? 流石に俺もその言葉には動揺が隠せない。これは言葉通り命がけで命力操作を身に付けないといけないみたいだ。

「そうか……」

 成瀬先生は神妙な顔つきでそう言うと俺の背中を叩いた。

「外で問題なく過ごせるようになるまで私が責任を持って面倒を見てやるから安心しろ。お前の親父さんにも連絡はしておく」

「ありがとうございます……」

 成瀬先生の言葉は嬉しいし、心からありがたいと思う。しかしそれとは別にやはり死ぬかも知れなかったと言われたことが衝撃だった。放心状態に近い。

「また何かあったら言ってください。時間が空けられたら力になりますので」

 仙田さんはそう言いながら俺に張られた電極シートを剥がす。俺もほぼ無心のまま忍び装束を着直した。

「ありがとう。世話になったな。じゃあ行くか、神崎」

 目的だけを端的に終えた俺と成瀬先生は部屋から出て真っ直ぐに地上へと戻った。見送られる形で地下への入り口まで引率してもらったところで、寮へ向かおうとした俺を成瀬先生が呼び止めた。何かと思うと成瀬先生は一枚のプリントを渡してきた。反射的に受け取った俺に成瀬先生は説明する。

「命漏症を解決することだけが目的だと楽しくないだろうからな。強くなりたいと言っていたお前に、一つ目標を作ってやろう。本来なら中忍教育で習う術ではあるんだが、これ一つに集中すればお前なら半年ほどで使えるようになるかもしれない。放課後に暇だったらグラウンドで練習するといい。じゃあ、頑張れよ」

 それだけ言って地下へと去って行った成瀬先生を俺は逆に見送る。先生の姿が見えなくなったところで貰ったプリントに目を通すと、題名にはこう書かれていた。

 火遁・獄炎柱の術――と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...