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演習
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俺と成瀬先生が校庭に着いたときにはすでに他のクラスの生徒も全員揃っていた。乙組と丙組の生徒同士は互いに知り合いでもいたのだろうと思えるほどに交流を持っているみたいだ。大和は相変わらず手当たり次第に話しかけている様子で、すっかり人気者のポジションを得ていた。そして甲組からはどことなく壁を作っているかのような雰囲気が出ており、他の二クラスの生徒は近付こうともしていない。
まるで互いに交流することを禁止されているかのよう――。
しかし、そんな中で甲組から二人の男子生徒が丙組に向かって歩いて近付いてきた。一人は中肉中背ながらに目つきが悪く、眉毛も髪の毛もない。もう一人は背が高くがっちりしており、短い天然パーマのおかげで熊のようでもあった。その熊のような生徒は丙組の近くで匂いを嗅ぐように鼻を鳴らすとクラス全体に聞こえるほどの大声をあげた。
「おいおい、なんかこのへん臭くねーか? なあ瑛斗」
「誰か屁でもしたんじゃないのか? なあ武司」
「へ組の奴らにとっては屁だって立派な忍術なんだろ。俺らの知らない屁の術を使ってるんだ。凄いって褒めてやらないと」
「あーそうだな武司。あ、でも屁なら自分の里にでも帰ってこいてくれれば誰にも迷惑かけなくて済むのになー。はははは!」
二人組はそう言うだけ言うと笑いながら自分のクラスへと戻って行った。何が起こったのか分からずに茫然としていた俺とは違い、他の丙組のクラスメイトは先程以上に暗い表情で立ち尽くしていた。ただ一人、芽依を除いて。
「あいつら……。絶対にぎゃふんと言わせてやる」
芽依はそう言いつつ握りこぶしを強く握りしめていた。事情をよく理解していない俺はその芽依の隣に近付くと小声で聞いた。
「なんなんだあいつら? へ組とか言ってたけど」
「へ組ってのは丙組の蔑称よ。私たちのことを馬鹿にしてんのよ。腹立つわねー。入学試験でいい成績取っただけのくせに。あの二人、昨日の入学式の後も今みたいな感じでわざわざ嫌味を言ってたのよ」
芽依は先程の二人組にふいと顎を向けると苛立ちを見せる。先程の二人組はというと、甲組に戻って嬉しそうに誰かに話しかけていた。話し掛けられていた男子生徒は背が高く、鋭い目つきをしており、艶やかな黒髪で男の俺から見てもカッコいいといえる出で立ちだった。その男子生徒は二人の話を興味無さげに聞きながらも、ただ堂々と立っているだけだった。そんな彼だったが、一瞬こちらを見ると俺と視線を合わせた。しかし、興味を持ったわけでもなかったようですぐに視線を戻す。
「あの彼は?」
「ああ……。あの二人が取り巻きになってる男子ね。名前は確か、北条颯真(ほうじょうそうま)。この学校にトップの成績で入学した風魔の里の次期里長らしいわ。甲組ではモテるみたいだし、逆らえる人もいないみたい。彼は特に何かしてきたってわけじゃないけど、あの二人をさし向けてきてるって思うとあんまりいい気はしないわよね」
忍術のこと以外でもやはり俺は何も知らないみたいだ。里のことや学内での扱いのこと少しずつ知っていかなければならない。
そんなことを考えていると校舎の方からチャイムが聞こえてくる。それと共にメガネをかけた目つきの鋭い壮年の女性が一年生全員の前に歩み出てきた。そして目にも留まらぬ速さで印を結ぶと足元の地面がせり上がり、一年生集団の後方にも見える高台になる。俺たちを見下ろす形になった女性は、見た目の年齢に似合わないほどの大きく通る声で話し始めた。
「本日の演習の指揮をとらせてもらいます。一年甲組の担任、黒澤京子です。それでは各クラス一人ずつ乙組、甲組、丙組の順番で名前を呼んでいきますので校庭の中央に進み出てください。得意な忍術を披露して頂きます。乙組は他の二クラスより二人ほど人数が少ないので、最後は甲組と丙組が交互になります」
なぜ甲乙丙の順番ではないのか。そう疑問に思ったところで俺の目の前で貧乏ゆすりをしながら腕を組んで立っていた成瀬先生が小さく呟いた。
「あの女狐め。自分のクラスの後に私のクラスを持ってきて実力を見せつけようって魂胆が見え見えなんだよ」
俺は成瀬先生の圧力を感じて一歩後ろに下がったが、成瀬先生はくるりと反転して俺たちの方へ体を向ける。
「手加減はいらない。お前たち、本気の忍術を見せてこい」
生徒以上に熱くなっている先生を見て、クラスの皆は逆に冷めている様子すらあった。そこで黒澤先生が鼻で笑うと指示を出す。
「それでは乙組から一人、お願いします」
黒澤先生の司会に沿って乙組の男性教師がクラスから一人指名して前に出させる。前に出た女生徒は一年生百人以上の視線を浴びて緊張した面持ちを見せる。そして何度も深呼吸をすると、意を決したかのように印を結び始めるのだった。
それから順に各クラスの生徒たちが校庭の中央に向けて代わる代わる出ては忍術を披露していた。黒澤先生のように地面を隆起させて形作る者、空中から水を作る者、さらにそれを自在に動かす者。印を結ぶ速度も人それぞれで、発動している忍術のクオリティも全く違う。前もって甲組が成績の良い人が集められていて丙組が成績の悪い人が集められていると聞いていなければ、クラスで差があることに驚いたかもしれない。そのくらい何も知らない俺の目から見ても甲組の忍術の質は高く、丙組は他の二クラスに見劣りする者も多かった。演習の時間も進み、乙組の最後の一人が演武を終える。そして何の因果か、残った丙組の生徒は俺と大和と芽依。甲組の生徒は授業前に嫌味を言ってきた二人と、学年トップと言われていた北条颯真だった。俺たち三人を除いてお通夜モードの丙組とは違い、甲組は盛り上がりを見せている。
「では加賀美。行ってこい」
「はい」
成瀬先生に名前を呼ばれた芽依は元気よく返事をすると緊張の色も見せずに進み出た。校庭の中央付近まで行った芽依はゆっくりと印を結ぶ。印を結ぶスピードはお世辞にも早いとは言えない。印を結び終えてから地面に手をつくとゆっくりと芽依の目の前に巨大な岩がせり上がった。今日他の生徒の忍術を見ていなければそれだけでも俺は凄いと驚いたことだろう。しかし同じように地面から物を出した生徒はいたし、速度も質も芽依に勝っている。芽依が勝っている点といえば作り上げた物量くらい。三メートル四方の立方体。それだけで迫力はあるものの、甲組からは馬鹿にするような笑いが聞こえてくるだけだった。
「加賀美芽依。行きます」
立方体を作っただけで終わりかと思われた瞬間、芽依はそう言うと先程までとは比べ物にならない速度でいくつもの印を結んだ。それこそ成瀬先生にも劣らないような速度で。
「木遁・剛身の術」
そして術の名前を唱えると空手の構えのようなものをとった。そこから次々と放たれる突きや蹴りは目の前の岩をみるみる削り取っていく。素手で岩を砕く様子はまるで重機のよう。十メートルは離れているはずの俺たちのところにまで砂煙が届くほどに激しく、先ほどまで笑っていた甲組の連中も口を閉ざしていた。
三メートル四方の大岩がただの砂山にまでなったところで芽依は埃をかぶった髪を払って戻って来た。
「以上です」
芽依の声が響き、丙組と乙組からはぽつぽつと拍手が巻き起こった。芽依はその拍手に向かって嬉しそうに手を振りながら微笑み返す。その姿だけを見ればまるでアイドルのようだが、先ほどの阿修羅のような動きを思い返すと馴れ馴れしくすることが怖くも感じてしまう。
「それでは次。西村さん。行きなさい」
芽依の演武が終わるや否や、黒澤先生が生徒の名前を呼ぶ。前に出たのはスキンヘッドの生徒。授業前に嫌味を言ってきたうちの一人だ。彼はニヤニヤと口元を緩めたまま進み出ると、芽依が作った砂山の近くに立つ。そこで素早く印を結ぶと、術の名前も言わずに砂山に手をついた。すると一瞬にして砂山が鉄のインゴットの山へと姿を変えた。そしてすぐにお辞儀をすると、何事もなかったかのように甲組の集団へと戻る。
「なんか思ってたより地味だったね」
俺の隣で芽依がそう言うと、大和が首を傾げながら答えた。
「金遁・鉄塊の術か。言も無しであの速度と精度は確かに凄いけど、確かに拍子抜けだな。今日は評価に関係ないから手を抜いたのか?」
「かもね」
芽依は大和の話に納得したようにそう答えると、直後に成瀬先生が大和に声をかけた。
「次は古賀だ。行ってこい」
芽依の時と違い、成瀬先生は力強く大和の背中を叩く。
「痛ってー!」
背中をさすりながら校庭の中央へと小走りで向かう大和は、緊張した様子ではないが照れ臭そうにへらへらと笑ってお辞儀をしていた。しかし、そんな不真面目な様子とは裏腹に印を結ぶ手は芽衣に負けないくらいに早かった。そして結んでいる印の数が圧倒的に多い。
「まだ終わらないの?」
俺の隣でそう言って芽依が不安げにぼやくほどに。しばらくして印を結び終えた大和は大声で叫ぶ。
「忍法・屁の術!」
大和の声と共に一帯に煙が広がった。黄土色した煙は瞬く間に俺たち一年生を包みこむ。
「おえぇー」
俺はあまりの臭さにえづきながらも袖で鼻と口を覆った。吐き気を催す苦痛を得ていたのは俺だけではなく一年生全員のようで、そこら中からうめき声が聞こえてくる。息を吸いたくない。その一心で呼吸を止めていたが、限界を迎えて倒れそうになる。しかしそこでようやく風が臭気を吹き飛ばしてくれた。
「古賀大和! お前は罰則の追加だ! 覚悟しておけ!」
こめかみに血管を浮き出させた成瀬先生は風を作るための印を結んだまま大和を怒鳴りつけた。大和は怒られながらも満足そうに笑って俺の隣に駆け寄ってくる。
「怒られたけど、面白かっただろ?」
「出会って半日も経ってないのに友達をやめたくなったよ」
俺のリアクションも面白かったのか、大和はまた一段と楽しそうに笑ったのだった。俺が頭を抱えていると、苛立ちを露わにした黒澤先生の指示と共に甲組の生徒が前に出た。熊のような体格の男は東郷と呼ばれていた。東郷は一度大和のことを睨みつけると印を結び始める。黒澤先生だけでなく、東郷も先程の大和の術のせいで苛立っていることが目に見えて分かる。
印を結び終えた東郷は先程西村が作ったインゴットに手を置いた。すると鉄の塊がみるみる形を変えて宙に浮かぶ。宙に舞うのは十数本のナイフ。それを自由自在に操作していた。今までも空中に出現させた水を操っていた生徒がいたが、ナイフならではの風切り音と空中でぶつかる金属音によって比べ物にならない迫力を出していた。
「おっとあぶねー」
鮮やかにナイフを空中に舞わせていた東郷だったが、そう気の抜けた声を上げる。すると、一本のナイフが勢いよく俺たち丙組の集団に向けて飛んできた。放物線を描いて向かってくるナイフから逃げるように集団が二つに割れる。しかし成瀬先生はゆっくりとナイフの射線に入ると無表情のまま素手で掴んだ。
「心配せず続けなさい」
成瀬先生は掴んだナイフを東郷の足下に放り投げるとそう言った。しかし東郷は事故が防がれたというのに舌打ちをし、宙に浮かぶナイフを操作して全て地面に突き刺した。不機嫌そうに甲組の集団に戻った東郷を西村がへらへらと笑いながら迎えている。
「さて、最後に神崎だ。他の奴らを見ながら少しは命力のイメージを掴めたか?」
イメージ――。成瀬先生の言うとおり、確かに命力子というものの存在を少し感じられるようになっていた。はっきりと認識できているわけではないが、なんとなくそこにあるのが分かるといった感じ。自分の体からも命力子と思われる何かが常に放出され続けていることも感じる。
「自分の命力子が満ちていれば、後は印と言が何とかしてくれる。行ってこい。期待してるぞ」
送る言葉は誰よりも多く、それだけ心配をかけてしまっているのだろうと思ってしまう。それはそのはず、俺は忍術を使うことが初めてなのだから。俺はゆっくりと歩き出て、他の生徒が演武をしていた場所まで進んだ。
百人以上の生徒が忍術を使った後のためグラウンドは荒れてしまっているが、風の音しか聞こえない程に静かなおかげで俺の心は落ち着いていた。
命力子を感じることが重要――
頭の中で成瀬先生の言葉を思い出しながら集中する。命漏症と言われたほど命力子を放出してしまっているのなら、コントロールをする必要もなく術自体は発動してくれるかもしれない。ただ俺は深く集中して自分の命力子らしきものを感じ取ろうとする。目を瞑り、意識を前方に向ける。暖かい湯気のようなものが周囲に満ちている気がした。まるで温泉の湯気が自分から放出されているかのような。それをイメージの中で少しずつ少しずつ前方にまとめていく。手で直接触れているわけでもないのにゆっくりだが感じることができる命力が集まっていく。
これ以上命力子をまとめることができそうにないと思った時、俺はそっと成瀬先生に教えてもらった印を結ぶ。人差し指を立ててグッと指を組む。そして――
「火遁・丙の術」
目を開けると前方に陽炎のような空気の揺らめきが見える。しかし成瀬先生が見せてくれたような赤い炎は現れない。
「おい、小学生でもできる『への術」で失敗してる奴がいるぞ』
遠くから聞こえてくるのは甲組の西村の声だろう。しかしすぐ後に大和の声も聞こえてきた。
「屁の術なら俺がもう一発くらわせてやろうか?」
「近寄んじゃねーよ!」
もしかすると大和は丙組が屁だと馬鹿にされることに対抗するべくあんな術を使ったのかもしれない。しかし後方でそんな話をしている中、俺はただ自分が失敗した術をどうにかできないものかと印を結んで強くイメージをし続けた。
熱振動が足りないのか? それならば、もっと激しく振動するイメージ。電子レンジのように俺の命力子が満ちている場所が激しく熱振動をするイメージ。
俺は再度目を閉じて命力を感じると、何度も何度も強くイメージする。そしてまた術を唱えた。
「火遁・丙の術!」
「ストップだ!」
術を唱えた瞬間、発動を確認するより前に俺は胴に腕を回して抱えられると後方に強く引っ張られた。目を開けるとそこには冷や汗を垂らした成瀬先生の顔があった。俺を抱えて飛んだ成瀬先生は俺ではなく、先ほどまで俺がいたあたりを見ている。俺も焦りを見せる先生の視線の先を確認したが、そこには想像もしていない光景が広がっていた。
「な、なんですかあれ?」
「お前が純粋に熱エネルギーを作り出そうとした結果だ。やはり放出する命力子が多すぎるのも問題だな」
俺が丙の術を発動させようとした場所。そこには五十メートルプールほどの溶岩帯が赤々と湯気を立てて広がっていた。
まるで互いに交流することを禁止されているかのよう――。
しかし、そんな中で甲組から二人の男子生徒が丙組に向かって歩いて近付いてきた。一人は中肉中背ながらに目つきが悪く、眉毛も髪の毛もない。もう一人は背が高くがっちりしており、短い天然パーマのおかげで熊のようでもあった。その熊のような生徒は丙組の近くで匂いを嗅ぐように鼻を鳴らすとクラス全体に聞こえるほどの大声をあげた。
「おいおい、なんかこのへん臭くねーか? なあ瑛斗」
「誰か屁でもしたんじゃないのか? なあ武司」
「へ組の奴らにとっては屁だって立派な忍術なんだろ。俺らの知らない屁の術を使ってるんだ。凄いって褒めてやらないと」
「あーそうだな武司。あ、でも屁なら自分の里にでも帰ってこいてくれれば誰にも迷惑かけなくて済むのになー。はははは!」
二人組はそう言うだけ言うと笑いながら自分のクラスへと戻って行った。何が起こったのか分からずに茫然としていた俺とは違い、他の丙組のクラスメイトは先程以上に暗い表情で立ち尽くしていた。ただ一人、芽依を除いて。
「あいつら……。絶対にぎゃふんと言わせてやる」
芽依はそう言いつつ握りこぶしを強く握りしめていた。事情をよく理解していない俺はその芽依の隣に近付くと小声で聞いた。
「なんなんだあいつら? へ組とか言ってたけど」
「へ組ってのは丙組の蔑称よ。私たちのことを馬鹿にしてんのよ。腹立つわねー。入学試験でいい成績取っただけのくせに。あの二人、昨日の入学式の後も今みたいな感じでわざわざ嫌味を言ってたのよ」
芽依は先程の二人組にふいと顎を向けると苛立ちを見せる。先程の二人組はというと、甲組に戻って嬉しそうに誰かに話しかけていた。話し掛けられていた男子生徒は背が高く、鋭い目つきをしており、艶やかな黒髪で男の俺から見てもカッコいいといえる出で立ちだった。その男子生徒は二人の話を興味無さげに聞きながらも、ただ堂々と立っているだけだった。そんな彼だったが、一瞬こちらを見ると俺と視線を合わせた。しかし、興味を持ったわけでもなかったようですぐに視線を戻す。
「あの彼は?」
「ああ……。あの二人が取り巻きになってる男子ね。名前は確か、北条颯真(ほうじょうそうま)。この学校にトップの成績で入学した風魔の里の次期里長らしいわ。甲組ではモテるみたいだし、逆らえる人もいないみたい。彼は特に何かしてきたってわけじゃないけど、あの二人をさし向けてきてるって思うとあんまりいい気はしないわよね」
忍術のこと以外でもやはり俺は何も知らないみたいだ。里のことや学内での扱いのこと少しずつ知っていかなければならない。
そんなことを考えていると校舎の方からチャイムが聞こえてくる。それと共にメガネをかけた目つきの鋭い壮年の女性が一年生全員の前に歩み出てきた。そして目にも留まらぬ速さで印を結ぶと足元の地面がせり上がり、一年生集団の後方にも見える高台になる。俺たちを見下ろす形になった女性は、見た目の年齢に似合わないほどの大きく通る声で話し始めた。
「本日の演習の指揮をとらせてもらいます。一年甲組の担任、黒澤京子です。それでは各クラス一人ずつ乙組、甲組、丙組の順番で名前を呼んでいきますので校庭の中央に進み出てください。得意な忍術を披露して頂きます。乙組は他の二クラスより二人ほど人数が少ないので、最後は甲組と丙組が交互になります」
なぜ甲乙丙の順番ではないのか。そう疑問に思ったところで俺の目の前で貧乏ゆすりをしながら腕を組んで立っていた成瀬先生が小さく呟いた。
「あの女狐め。自分のクラスの後に私のクラスを持ってきて実力を見せつけようって魂胆が見え見えなんだよ」
俺は成瀬先生の圧力を感じて一歩後ろに下がったが、成瀬先生はくるりと反転して俺たちの方へ体を向ける。
「手加減はいらない。お前たち、本気の忍術を見せてこい」
生徒以上に熱くなっている先生を見て、クラスの皆は逆に冷めている様子すらあった。そこで黒澤先生が鼻で笑うと指示を出す。
「それでは乙組から一人、お願いします」
黒澤先生の司会に沿って乙組の男性教師がクラスから一人指名して前に出させる。前に出た女生徒は一年生百人以上の視線を浴びて緊張した面持ちを見せる。そして何度も深呼吸をすると、意を決したかのように印を結び始めるのだった。
それから順に各クラスの生徒たちが校庭の中央に向けて代わる代わる出ては忍術を披露していた。黒澤先生のように地面を隆起させて形作る者、空中から水を作る者、さらにそれを自在に動かす者。印を結ぶ速度も人それぞれで、発動している忍術のクオリティも全く違う。前もって甲組が成績の良い人が集められていて丙組が成績の悪い人が集められていると聞いていなければ、クラスで差があることに驚いたかもしれない。そのくらい何も知らない俺の目から見ても甲組の忍術の質は高く、丙組は他の二クラスに見劣りする者も多かった。演習の時間も進み、乙組の最後の一人が演武を終える。そして何の因果か、残った丙組の生徒は俺と大和と芽依。甲組の生徒は授業前に嫌味を言ってきた二人と、学年トップと言われていた北条颯真だった。俺たち三人を除いてお通夜モードの丙組とは違い、甲組は盛り上がりを見せている。
「では加賀美。行ってこい」
「はい」
成瀬先生に名前を呼ばれた芽依は元気よく返事をすると緊張の色も見せずに進み出た。校庭の中央付近まで行った芽依はゆっくりと印を結ぶ。印を結ぶスピードはお世辞にも早いとは言えない。印を結び終えてから地面に手をつくとゆっくりと芽依の目の前に巨大な岩がせり上がった。今日他の生徒の忍術を見ていなければそれだけでも俺は凄いと驚いたことだろう。しかし同じように地面から物を出した生徒はいたし、速度も質も芽依に勝っている。芽依が勝っている点といえば作り上げた物量くらい。三メートル四方の立方体。それだけで迫力はあるものの、甲組からは馬鹿にするような笑いが聞こえてくるだけだった。
「加賀美芽依。行きます」
立方体を作っただけで終わりかと思われた瞬間、芽依はそう言うと先程までとは比べ物にならない速度でいくつもの印を結んだ。それこそ成瀬先生にも劣らないような速度で。
「木遁・剛身の術」
そして術の名前を唱えると空手の構えのようなものをとった。そこから次々と放たれる突きや蹴りは目の前の岩をみるみる削り取っていく。素手で岩を砕く様子はまるで重機のよう。十メートルは離れているはずの俺たちのところにまで砂煙が届くほどに激しく、先ほどまで笑っていた甲組の連中も口を閉ざしていた。
三メートル四方の大岩がただの砂山にまでなったところで芽依は埃をかぶった髪を払って戻って来た。
「以上です」
芽依の声が響き、丙組と乙組からはぽつぽつと拍手が巻き起こった。芽依はその拍手に向かって嬉しそうに手を振りながら微笑み返す。その姿だけを見ればまるでアイドルのようだが、先ほどの阿修羅のような動きを思い返すと馴れ馴れしくすることが怖くも感じてしまう。
「それでは次。西村さん。行きなさい」
芽依の演武が終わるや否や、黒澤先生が生徒の名前を呼ぶ。前に出たのはスキンヘッドの生徒。授業前に嫌味を言ってきたうちの一人だ。彼はニヤニヤと口元を緩めたまま進み出ると、芽依が作った砂山の近くに立つ。そこで素早く印を結ぶと、術の名前も言わずに砂山に手をついた。すると一瞬にして砂山が鉄のインゴットの山へと姿を変えた。そしてすぐにお辞儀をすると、何事もなかったかのように甲組の集団へと戻る。
「なんか思ってたより地味だったね」
俺の隣で芽依がそう言うと、大和が首を傾げながら答えた。
「金遁・鉄塊の術か。言も無しであの速度と精度は確かに凄いけど、確かに拍子抜けだな。今日は評価に関係ないから手を抜いたのか?」
「かもね」
芽依は大和の話に納得したようにそう答えると、直後に成瀬先生が大和に声をかけた。
「次は古賀だ。行ってこい」
芽依の時と違い、成瀬先生は力強く大和の背中を叩く。
「痛ってー!」
背中をさすりながら校庭の中央へと小走りで向かう大和は、緊張した様子ではないが照れ臭そうにへらへらと笑ってお辞儀をしていた。しかし、そんな不真面目な様子とは裏腹に印を結ぶ手は芽衣に負けないくらいに早かった。そして結んでいる印の数が圧倒的に多い。
「まだ終わらないの?」
俺の隣でそう言って芽依が不安げにぼやくほどに。しばらくして印を結び終えた大和は大声で叫ぶ。
「忍法・屁の術!」
大和の声と共に一帯に煙が広がった。黄土色した煙は瞬く間に俺たち一年生を包みこむ。
「おえぇー」
俺はあまりの臭さにえづきながらも袖で鼻と口を覆った。吐き気を催す苦痛を得ていたのは俺だけではなく一年生全員のようで、そこら中からうめき声が聞こえてくる。息を吸いたくない。その一心で呼吸を止めていたが、限界を迎えて倒れそうになる。しかしそこでようやく風が臭気を吹き飛ばしてくれた。
「古賀大和! お前は罰則の追加だ! 覚悟しておけ!」
こめかみに血管を浮き出させた成瀬先生は風を作るための印を結んだまま大和を怒鳴りつけた。大和は怒られながらも満足そうに笑って俺の隣に駆け寄ってくる。
「怒られたけど、面白かっただろ?」
「出会って半日も経ってないのに友達をやめたくなったよ」
俺のリアクションも面白かったのか、大和はまた一段と楽しそうに笑ったのだった。俺が頭を抱えていると、苛立ちを露わにした黒澤先生の指示と共に甲組の生徒が前に出た。熊のような体格の男は東郷と呼ばれていた。東郷は一度大和のことを睨みつけると印を結び始める。黒澤先生だけでなく、東郷も先程の大和の術のせいで苛立っていることが目に見えて分かる。
印を結び終えた東郷は先程西村が作ったインゴットに手を置いた。すると鉄の塊がみるみる形を変えて宙に浮かぶ。宙に舞うのは十数本のナイフ。それを自由自在に操作していた。今までも空中に出現させた水を操っていた生徒がいたが、ナイフならではの風切り音と空中でぶつかる金属音によって比べ物にならない迫力を出していた。
「おっとあぶねー」
鮮やかにナイフを空中に舞わせていた東郷だったが、そう気の抜けた声を上げる。すると、一本のナイフが勢いよく俺たち丙組の集団に向けて飛んできた。放物線を描いて向かってくるナイフから逃げるように集団が二つに割れる。しかし成瀬先生はゆっくりとナイフの射線に入ると無表情のまま素手で掴んだ。
「心配せず続けなさい」
成瀬先生は掴んだナイフを東郷の足下に放り投げるとそう言った。しかし東郷は事故が防がれたというのに舌打ちをし、宙に浮かぶナイフを操作して全て地面に突き刺した。不機嫌そうに甲組の集団に戻った東郷を西村がへらへらと笑いながら迎えている。
「さて、最後に神崎だ。他の奴らを見ながら少しは命力のイメージを掴めたか?」
イメージ――。成瀬先生の言うとおり、確かに命力子というものの存在を少し感じられるようになっていた。はっきりと認識できているわけではないが、なんとなくそこにあるのが分かるといった感じ。自分の体からも命力子と思われる何かが常に放出され続けていることも感じる。
「自分の命力子が満ちていれば、後は印と言が何とかしてくれる。行ってこい。期待してるぞ」
送る言葉は誰よりも多く、それだけ心配をかけてしまっているのだろうと思ってしまう。それはそのはず、俺は忍術を使うことが初めてなのだから。俺はゆっくりと歩き出て、他の生徒が演武をしていた場所まで進んだ。
百人以上の生徒が忍術を使った後のためグラウンドは荒れてしまっているが、風の音しか聞こえない程に静かなおかげで俺の心は落ち着いていた。
命力子を感じることが重要――
頭の中で成瀬先生の言葉を思い出しながら集中する。命漏症と言われたほど命力子を放出してしまっているのなら、コントロールをする必要もなく術自体は発動してくれるかもしれない。ただ俺は深く集中して自分の命力子らしきものを感じ取ろうとする。目を瞑り、意識を前方に向ける。暖かい湯気のようなものが周囲に満ちている気がした。まるで温泉の湯気が自分から放出されているかのような。それをイメージの中で少しずつ少しずつ前方にまとめていく。手で直接触れているわけでもないのにゆっくりだが感じることができる命力が集まっていく。
これ以上命力子をまとめることができそうにないと思った時、俺はそっと成瀬先生に教えてもらった印を結ぶ。人差し指を立ててグッと指を組む。そして――
「火遁・丙の術」
目を開けると前方に陽炎のような空気の揺らめきが見える。しかし成瀬先生が見せてくれたような赤い炎は現れない。
「おい、小学生でもできる『への術」で失敗してる奴がいるぞ』
遠くから聞こえてくるのは甲組の西村の声だろう。しかしすぐ後に大和の声も聞こえてきた。
「屁の術なら俺がもう一発くらわせてやろうか?」
「近寄んじゃねーよ!」
もしかすると大和は丙組が屁だと馬鹿にされることに対抗するべくあんな術を使ったのかもしれない。しかし後方でそんな話をしている中、俺はただ自分が失敗した術をどうにかできないものかと印を結んで強くイメージをし続けた。
熱振動が足りないのか? それならば、もっと激しく振動するイメージ。電子レンジのように俺の命力子が満ちている場所が激しく熱振動をするイメージ。
俺は再度目を閉じて命力を感じると、何度も何度も強くイメージする。そしてまた術を唱えた。
「火遁・丙の術!」
「ストップだ!」
術を唱えた瞬間、発動を確認するより前に俺は胴に腕を回して抱えられると後方に強く引っ張られた。目を開けるとそこには冷や汗を垂らした成瀬先生の顔があった。俺を抱えて飛んだ成瀬先生は俺ではなく、先ほどまで俺がいたあたりを見ている。俺も焦りを見せる先生の視線の先を確認したが、そこには想像もしていない光景が広がっていた。
「な、なんですかあれ?」
「お前が純粋に熱エネルギーを作り出そうとした結果だ。やはり放出する命力子が多すぎるのも問題だな」
俺が丙の術を発動させようとした場所。そこには五十メートルプールほどの溶岩帯が赤々と湯気を立てて広がっていた。
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我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
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両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
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45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
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2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
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スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
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小説家になろうで執筆中の作品です。
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【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
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