サイコミステリー

色部耀

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44.必要な子

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 病院を出てから俺は移動を美波さんに任せて電車に揺られた。向かっているのは昨日とは逆で千葉方面。俺が特殊能力支援校から実家に戻るときに使う電車と同じだ。俺の地元の方へと向かうのなら俺が調べて先導した方が早いのでは? と美波さんに提案したところ自分が少しでも使える人間だとアピールしたいとのことで却下されてしまった。昨日の夜から美波さんは俺に気を遣いすぎている。その上、俺がやめて欲しいと伝えても伝わらない。頑張るのは悪いとは言わないけれど、少し困る。

「あと二つ先の駅が最寄りみたいです」

 美波さんは隣に座る俺にスマートフォンの案内を見せながら告げる。到着時刻は四時半。それは良い。それは良いんだが、降車駅は俺の実家の最寄り駅の隣だった。その駅の間は一キロメートル程しかないので、どちらの駅だとしても俺の実家の生活圏内だ。中学の同級生も人によっては今から降りる予定の駅が最寄り駅になる。そんな場所だ。

「美波さんは小学校に上がるまでそのあたりに住んでたってこと……だよね?」

「当たり前のことを聞くんですね。そうじゃないと降りたりしませんよ」

「だよな」

 生活圏内だからこそ会いたくない人もいる。会いたくなくても会ってしまう人もいるだろう。そう思うと少し気が重かった。とはいえ虐められていたとかそう言うわけではない。ただ、単なる同級生とはいえ女の子と二人で歩いているところを見られるのが気恥ずかしくて会いたくないというだけだけれど。

「どうかしましたか? 何か不都合でもありましたか? 私にどうにかできることですか? 私は何をしたら良いですか?」

「大丈夫だよ。何も問題ないから。美波さんは特に何もしなくて良いから」

「私はいらない子ってことですか?」

「そうじゃないって。美波さんはいらない子じゃない。ちゃんと必要な子だよ」

「そうですか。へへ」

 俺のフォローで大変満足してくれた様子の美波さんは、そう言って笑うと足をぐっと伸ばした。
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