サイコミステリー

色部耀

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5.自己紹介

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 なんということだ。普通の高校生を目指していたはずが早々に変わっているなどと言われてしまった。それもこれもこんなところに呼び出されたのが全て悪い。俺は悪くない。でもとても辛い。先生も早く戻ってきてくれないかな……

「じゃあどうして生徒指導室に?」

 机を挟んで反対側の席から彼女は少し身を乗り出すようにして俺に質問をした。やっと会話ができると安心した俺はゆっくりと話した。

「特殊能力がまだ判明していないから話を聞きたいみたいで呼ばれただけだよ」

 そう言われたわけではないが大きく間違ってはいないだろう。小西先生が言うにはもう一人呼ばれた生徒も未確定能力者だということだし。俺の話を聞いた彼女は納得した様子で口を開けると、あーと声を上げた。何とも素直なリアクションをする女の子だ。

「私も多分それ。もしかしたら病気のこともあるかもしれないですけど」

「病気?」

 家庭の事情とは言っていたけれど、病気とまでは聞いていない。小西先生は気を遣ってそう言ったのかもしれないけれど、本人の口から聞くのであれば遠慮することもないだろう。詳しく話してくれるかどうかは本人次第だが。初対面からあまり突っ込んで聞こうとするのもおかしいし普通ではない。ここは彼女に会話の主導権を持たせよう。

「なんか色々ややこしいんですけど……。何から話そうかな……」

 彼女は腕を組んで眉間に皺を寄せる。そんなに厄介な病気なのだろうか。そう思っていると、彼女が答えるよりも前に生徒指導室の扉が開いた。

「おまたせ。美波も来ていたか。じゃあ、三者面談と行こうか」

 普通三者面談と言えば生徒とその親と先生の三人だが、こういった場合も三者面談と呼ぶのだろうか。小西先生はキャスター付きの回転椅子をテーブルに横付けすると乱暴に座った。俺と美波さんという人と先生が正三角形を作る配置。

「お互いに自己紹介は済んでるか?」

 そう聞いてくる小西先生だったが、俺と美波さんは顔を合わせて首を振った。現状では俺が一方的に美波という名前と病気で遅刻してきたということを知っているだけ。

「じゃあ、恒例の真壁から」

「恒例にしてもらいたくはないですけど……。えっと、真壁鏡平です。同じクラスです。よろしく」

「同じクラスなんですね! よろしくお願いします!」

 自己紹介に対してやけにテンション高く返事をしてくれる美波さん。意外と悪い気がしない。

「クラスでの自己紹介に比べてやけにあっさりしてるな。まあいい。次、美波」

「はい。美波聖奈です」

 美波さんはそれだけ言うときょとんとした顔で固まった。

「それだけ?」

「うーん……他に何を言えば良いか分かりません」

 俺のことを変わっていると言った割に自分の方が変わってるんじゃないかと心の中でツッコミを入れつつも小西先生を見る。小西先生は困った顔もせずにそれ以上のことを求めるような発言もなかった。

「今はお互いに名前が分かれば十分だろう。ところで、ここに呼び出した理由については分かっていると思うが、特殊能力についてだ」
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