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ベリルちゃんとモンスターバトル
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「待たせたな」
牧場に颯爽と登場した俺。ベリルは一体のモンスターを前に待機させ、自身は腕を組んで仁王立ちをしている。腕を組んでいるお陰でより一層胸が強調されている。
「私の実力を見て驚くと良いわ」
ベリルはそう言うと勢いよく俺を指さす。
「お、おおお」
俺のリアクションを見てマナがまたしてもローキックをしてきた。仕方がないじゃないか。だって揺れるんだもの。
「こっちのモンスターは三体だけど問題ないよな」
「当たり前でしょ。私が手塩にかけて育てたリスボールちゃんが三体まとめてやっつけてあげるわ!」
ベリルは自分の目の前にホログラムのメニューウィンドウを出して自信満々に言う。どうやらメニューウィンドウを使えるのは俺だけというわけではないらしい。ただ、俺とは違って直接タッチすることによって操作しているようだった。
俺もベリルと同じようにメニューウィンドウを開くが、操作は手元のコントローラーだ。
「なにそれ? メニュー使うのに補助なんか必要なの? そんなので本当にアドベンチャー? ぷぷっ」
馬鹿にするように笑うベリルだったが、俺は正直なところコントローラーの存在が恥ずかしいという認識すら無いので残念ながら暖簾に腕押し糠に釘だ。
「バトルするんだろ? 無駄口叩いてないで始めよう。マナ、リロ、ウサプー、準備」
「は? いやいや、人間じゃん」
ベリルは父親と同じリアクションをとる。そこでやはり俺もベリルのお父さんの時と同じように首輪を指さして説明する。
「こいつらは俺の所持モンスターだ」
「鬼畜ぅ……。そんなので本当にアドベンチャー?」
さっきと同じセリフなのに込められている感情が全く違う。
「ふざけてられるのも今のうちだからね! 行くわよリスボール!」
ベリルの所持モンスターはリスボール。ウサプーと同様に抱きかかえられる小型犬サイズ。シマリスを丸々と太らせてボールのような形にしたモンスターだ。可愛らしさにおいてウサプーと並ぶ人気キャラである。初期から覚えているスキル『リスカット』が強力で、クリティカル率と命中率が百パーセントという壊れ技だ。リスカと呼ばれ、一部プレイヤーからは手首を狙う切り裂き技として認識されている。実際にどういう挙動かは見てみないと分からないけれど……。
リスボールはベリルの掛け声と共にウサプーへと向かってくる。もうバトルが開始されたと認識して良いのだろうか。それなら……。
「ウサプー。通常攻撃だ」
俺はベリルのノリに合わせてウサプーに指示をする。実際はメニュー操作によってウサプーに通常攻撃をさせているのだが、雰囲気は大事だ。
しかしウサプーをよく観察していると、少し変わった挙動を取っていた。俺のメニュー操作よりも掛け声の方が早く、ウサプーも掛け声に反応して攻撃をしようとしていたのだろう。攻撃モーションを途中で中断して再度攻撃をするかのような動きになっていた。メニューによる強制力がウサプーの行動を上書きしたのだろう。
一瞬の無駄な行動にもかかわらず、ウサプーの通常攻撃はリスボールに先制として届いた。
「リスボーーーーール!!!!」
ウサプーの攻撃が当たった瞬間。リスボールは風船を針で突いたかのように一瞬で消え去った。破裂する瞬間を漫画にするなら三コマに分けて表現したくなるくらいの衝撃だった。リスボールのレベルは三、ウサプーの通常攻撃に耐えられるはずがないので当然の結果だ。モノタウンからカンドまでの道のりでウサプーのレベルを一でも上げていれば通常プレイでもまず負けることはない。
ベリルは叫びながらリスボールが消えた場所に転がる服従の首輪を抱きしめていた。
「絶対……絶対許さないんだから!!」
そう捨て台詞を吐いたベリルは服従の首輪を持って事務所へと走り去った。
「……私に作戦伝える必要あった?」
「イレギュラーがあるかもしれなかったしな。念のためだよ。それにしてもベリルちゃんは変わらないなー」
「ベリルちゃん? 知ってるの? あ、そっか。ゲームとやらで経験してるのよね」
「そうそう。変わった呼び名が付くくらいには有名だし、そこが変わってなかったから安心した」
「変わった呼び名?」
「うん。クソ雑魚構ってベリルちゃん」
「クソ雑魚構ってベリルちゃん……」
「女の子がクソとか下品な言葉使っちゃいけません」
「待って。私悪くない! 変な呼び名付けた人が悪い!」
ライバルという立ち位置のくせに毎回出現タイミングに合わない弱さを誇るベリルはクソ雑魚と呼ばれ、事あるごとに絡んでくる様子に構ってちゃんと呼ばれ、それが合体してクソ雑魚構ってベリルちゃんと言われていた。
そのせいでちゃん付けがしっくりくるのだ。ベリルちゃん。この世界でもやっぱりそう呼ぶことにしよう。
「ちょっと聞きたいんだけどさ……。リョウが元いた世界で私も色んな人に知られてるのよね? ……なんて呼ばれてたの?」
「聞きたい?」
「聞きたくないけど聞く」
「消えたり増えたり忙しい女とか、あとは……」
「待って、消えたり増えたり忙しいって何?」
「ほら、メリーさんを無視して花を摘んでるマナのところに向かってもいないとか、絶対服従の首輪で捕獲しても町に別のマナがいるとか」
「え、え、待って。メリーさんっていつもモノタウンをぶらぶらしてる無職のおじさんだよね? それを無視したら私がいないとか何? いや、ううん。もういいや。無理。理解できないから考えない。それよりさっき言いかけたやつは?」
マナは頭を抱えたまま俺の先ほどの話の続きを促した。個人的には非公式にメリーと呼ばれてたおじさんがこの世界では正式にメリーという名前だったことに驚いているが、リロが俺のいた世界の認識から作ったというのなら納得か……。
「まな板」
「まな板……」
マナは切ない顔をしていた。
「そんなことより、気にならないか?」
「そんなことって言葉で済まされたくないけど、何?」
マナは辛そうなままだったが律儀に俺の話を聞いてくれる。俺はマナの視線が自分の方を向いたのを確認してから事務所を指さす。
「ウサプーの攻撃で消滅したリスボールのことだよ。原作だと戦闘不能になったモンスターは宿やアイテムで復活できるんだ。この世界での死は実際に死んでしまう可能性が高いってリロは言ってたけど、それが服従の首輪を付けられたモンスターにも適用されるのか確かめておいた方が良くないか?」
「リロに聞いた方が早くない?」
「知らない」
マナの提案に対して寝転がったままの姿で即答するリロ。
「そう言うと思ったよ。もし知ってたとしても説明するのが面倒臭くて知らないって答えるんだろ」
「眠たい」
「せめて答えてあげて?! ここに来るちょっと前のテンションはどこいったの?!」
素っ気なく眠いと言ったリロにマナがツッコミを入れる。こいつはそういうやつなんだ。諦めるしかない。
「そういうことだから、リスボールがどうなったか確認しに行こう」
「そうね」
少しだけ疲れた様子のマナ。ツッコミを入れるのも楽ではないのだろう。
「もしベリルちゃんのリスボールが生き返るのであれば、マナとリロも戦闘不能になっても問題ないということだ」
「戦闘で死んじゃう不安はなくなるね」
「いくらでもゾンビアタックができる」
「ゾンビアタック?」
「死んでもすぐに生き返らせて戦わせることだ」
「待って、別の不安ができたんだけど!」
慌てて声を張り上げるマナを置いて俺は事務所へと急いだ。
牧場に颯爽と登場した俺。ベリルは一体のモンスターを前に待機させ、自身は腕を組んで仁王立ちをしている。腕を組んでいるお陰でより一層胸が強調されている。
「私の実力を見て驚くと良いわ」
ベリルはそう言うと勢いよく俺を指さす。
「お、おおお」
俺のリアクションを見てマナがまたしてもローキックをしてきた。仕方がないじゃないか。だって揺れるんだもの。
「こっちのモンスターは三体だけど問題ないよな」
「当たり前でしょ。私が手塩にかけて育てたリスボールちゃんが三体まとめてやっつけてあげるわ!」
ベリルは自分の目の前にホログラムのメニューウィンドウを出して自信満々に言う。どうやらメニューウィンドウを使えるのは俺だけというわけではないらしい。ただ、俺とは違って直接タッチすることによって操作しているようだった。
俺もベリルと同じようにメニューウィンドウを開くが、操作は手元のコントローラーだ。
「なにそれ? メニュー使うのに補助なんか必要なの? そんなので本当にアドベンチャー? ぷぷっ」
馬鹿にするように笑うベリルだったが、俺は正直なところコントローラーの存在が恥ずかしいという認識すら無いので残念ながら暖簾に腕押し糠に釘だ。
「バトルするんだろ? 無駄口叩いてないで始めよう。マナ、リロ、ウサプー、準備」
「は? いやいや、人間じゃん」
ベリルは父親と同じリアクションをとる。そこでやはり俺もベリルのお父さんの時と同じように首輪を指さして説明する。
「こいつらは俺の所持モンスターだ」
「鬼畜ぅ……。そんなので本当にアドベンチャー?」
さっきと同じセリフなのに込められている感情が全く違う。
「ふざけてられるのも今のうちだからね! 行くわよリスボール!」
ベリルの所持モンスターはリスボール。ウサプーと同様に抱きかかえられる小型犬サイズ。シマリスを丸々と太らせてボールのような形にしたモンスターだ。可愛らしさにおいてウサプーと並ぶ人気キャラである。初期から覚えているスキル『リスカット』が強力で、クリティカル率と命中率が百パーセントという壊れ技だ。リスカと呼ばれ、一部プレイヤーからは手首を狙う切り裂き技として認識されている。実際にどういう挙動かは見てみないと分からないけれど……。
リスボールはベリルの掛け声と共にウサプーへと向かってくる。もうバトルが開始されたと認識して良いのだろうか。それなら……。
「ウサプー。通常攻撃だ」
俺はベリルのノリに合わせてウサプーに指示をする。実際はメニュー操作によってウサプーに通常攻撃をさせているのだが、雰囲気は大事だ。
しかしウサプーをよく観察していると、少し変わった挙動を取っていた。俺のメニュー操作よりも掛け声の方が早く、ウサプーも掛け声に反応して攻撃をしようとしていたのだろう。攻撃モーションを途中で中断して再度攻撃をするかのような動きになっていた。メニューによる強制力がウサプーの行動を上書きしたのだろう。
一瞬の無駄な行動にもかかわらず、ウサプーの通常攻撃はリスボールに先制として届いた。
「リスボーーーーール!!!!」
ウサプーの攻撃が当たった瞬間。リスボールは風船を針で突いたかのように一瞬で消え去った。破裂する瞬間を漫画にするなら三コマに分けて表現したくなるくらいの衝撃だった。リスボールのレベルは三、ウサプーの通常攻撃に耐えられるはずがないので当然の結果だ。モノタウンからカンドまでの道のりでウサプーのレベルを一でも上げていれば通常プレイでもまず負けることはない。
ベリルは叫びながらリスボールが消えた場所に転がる服従の首輪を抱きしめていた。
「絶対……絶対許さないんだから!!」
そう捨て台詞を吐いたベリルは服従の首輪を持って事務所へと走り去った。
「……私に作戦伝える必要あった?」
「イレギュラーがあるかもしれなかったしな。念のためだよ。それにしてもベリルちゃんは変わらないなー」
「ベリルちゃん? 知ってるの? あ、そっか。ゲームとやらで経験してるのよね」
「そうそう。変わった呼び名が付くくらいには有名だし、そこが変わってなかったから安心した」
「変わった呼び名?」
「うん。クソ雑魚構ってベリルちゃん」
「クソ雑魚構ってベリルちゃん……」
「女の子がクソとか下品な言葉使っちゃいけません」
「待って。私悪くない! 変な呼び名付けた人が悪い!」
ライバルという立ち位置のくせに毎回出現タイミングに合わない弱さを誇るベリルはクソ雑魚と呼ばれ、事あるごとに絡んでくる様子に構ってちゃんと呼ばれ、それが合体してクソ雑魚構ってベリルちゃんと言われていた。
そのせいでちゃん付けがしっくりくるのだ。ベリルちゃん。この世界でもやっぱりそう呼ぶことにしよう。
「ちょっと聞きたいんだけどさ……。リョウが元いた世界で私も色んな人に知られてるのよね? ……なんて呼ばれてたの?」
「聞きたい?」
「聞きたくないけど聞く」
「消えたり増えたり忙しい女とか、あとは……」
「待って、消えたり増えたり忙しいって何?」
「ほら、メリーさんを無視して花を摘んでるマナのところに向かってもいないとか、絶対服従の首輪で捕獲しても町に別のマナがいるとか」
「え、え、待って。メリーさんっていつもモノタウンをぶらぶらしてる無職のおじさんだよね? それを無視したら私がいないとか何? いや、ううん。もういいや。無理。理解できないから考えない。それよりさっき言いかけたやつは?」
マナは頭を抱えたまま俺の先ほどの話の続きを促した。個人的には非公式にメリーと呼ばれてたおじさんがこの世界では正式にメリーという名前だったことに驚いているが、リロが俺のいた世界の認識から作ったというのなら納得か……。
「まな板」
「まな板……」
マナは切ない顔をしていた。
「そんなことより、気にならないか?」
「そんなことって言葉で済まされたくないけど、何?」
マナは辛そうなままだったが律儀に俺の話を聞いてくれる。俺はマナの視線が自分の方を向いたのを確認してから事務所を指さす。
「ウサプーの攻撃で消滅したリスボールのことだよ。原作だと戦闘不能になったモンスターは宿やアイテムで復活できるんだ。この世界での死は実際に死んでしまう可能性が高いってリロは言ってたけど、それが服従の首輪を付けられたモンスターにも適用されるのか確かめておいた方が良くないか?」
「リロに聞いた方が早くない?」
「知らない」
マナの提案に対して寝転がったままの姿で即答するリロ。
「そう言うと思ったよ。もし知ってたとしても説明するのが面倒臭くて知らないって答えるんだろ」
「眠たい」
「せめて答えてあげて?! ここに来るちょっと前のテンションはどこいったの?!」
素っ気なく眠いと言ったリロにマナがツッコミを入れる。こいつはそういうやつなんだ。諦めるしかない。
「そういうことだから、リスボールがどうなったか確認しに行こう」
「そうね」
少しだけ疲れた様子のマナ。ツッコミを入れるのも楽ではないのだろう。
「もしベリルちゃんのリスボールが生き返るのであれば、マナとリロも戦闘不能になっても問題ないということだ」
「戦闘で死んじゃう不安はなくなるね」
「いくらでもゾンビアタックができる」
「ゾンビアタック?」
「死んでもすぐに生き返らせて戦わせることだ」
「待って、別の不安ができたんだけど!」
慌てて声を張り上げるマナを置いて俺は事務所へと急いだ。
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