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3 生徒会役員の憂鬱
しおりを挟む清蘭女学院の生徒会室は想像の軽く10倍を超える大きさだ。まず、部屋ではなく丸々建物1棟を所有している。役員には個室が与えられ、寮から移り住むことも可能だ。
生徒会室の前、というか生徒会の城の前で、天月美寿々(あまつきみすず)は指定の時刻になるのを待っていた。今日は、新旧生徒会役員の顔合わせがあるのだ。
(生徒指導部長とか柄じゃないんだけどな)
だからと言って、役職を辞退するのはご法度。家柄で選ぶのなら月美悠里(つきみゆうり)がなるはずだったこの1枠。無駄にするのはあまりにも惜しい。
「天月ちゃん早いねー」
「烏丸さんも、、まだ15分前ですよ」
2人目は烏丸翠(からすまあきら)。話したことはあまりないが、悪い評判は聞かない。烏丸家は『鳥』のなかでもかなり上の方だったような…。味方につけておくことに越したことはないと美寿々は見極めた。
「やー、部活が早く終わって暇だったから…、て、貴子も来た!」
(貴子て、梅林さん?そんなに親しいのかしら…)
「こんにちは、…天月さんですよね?
私、梅林貴子と言います。よろしくお願いしますわ」
一連の動きが美しすぎて、こちらが挙動不審になってしまった。
「あ、あの、わたし、そうです!天月です!こちらこそよろしくします!!」
わたしの自己紹介がおかしかったのだろうか、ふふっと貴子が笑う。
(あ、女神のスマイル頂いちゃったよ…)
「貴子~、会いたかったよぉ~、元気してた??」
「大丈夫よ、もうそんな弱くもないわ」
「とかって、突然倒れられても困るの私たちだからちゃんとしてね~?」
心配してるような、貶してるような…
これまで好印象でしかなかった烏丸翠の言動に、棘を感じた。
(この2人、長い付き合いだけど仲は良くなかったりして…)
「翠は今日、試合じゃなかったの?」
「え?ん、まあそうだけど」
「いや、同室の鹿毛さんが大会だって仰ってたから…」
((わーー、えげつない!!!))
美寿々は心の中で悲鳴を上げた。鹿毛麗花(かげれいか)はウチの陸上部短距離のエースだ。烏丸さんも確か、短距離の部員で鹿毛さんと同学年…。
鹿毛さんと比べられるのは一番キツイはずだ。
(この2人やっぱ仲悪いじゃん!!)
「麗花はね。他の部員は大概フツーに練習よ。あんなのと比べられちゃたまんないわ~」
「そうなんだ」
そして3人に沈黙が降りた。
(あと10分って、長いなぁ…)
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