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第3話 奪われた夫

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 朝になり、私はこれからどうするべきか迷っていた。
 このまま気づかないふりをして結婚生活を続けるには、疑わしい事が多すぎたから。
 けど、ジョシュアを問いただす勇気もなかった。
 
 悶々もんもんとした気持ちをいだきながら過ごしていたある日、応接間に呼び出したジョシュアから、思いもよらない言葉を告げられた。

「すまない、アーマコット。僕はロレーヌと、もう前から関係を持っていた。彼女を愛してしまったんだ。だから、僕と別れて欲しい」

「……な、なにを……言って…るの……?」

 彼が何を言っているのか分からない。
 私は何と答えればいいのか分からない。

 ジョシュアと義姉との関係を疑っていたけれど、彼は私との結婚生活を壊すような事はしないと思ってた。
 
 もし私が問いただしたら彼は謝罪をし、義姉とは別れると…そう言うと思っていたのに…なのに浮気ではない?
 私と別れて、義姉と一緒になるというの!?

 頭の中が真っ白になるとはこういう事か。
 私が呆然としていると突然扉が開き、義姉が部屋に入って来た。

「話終わった? ジョシュア♡」

「お、お義姉様…?」

「ロ、ロレーヌ。なぜ…」
 
 突然現れた義姉に戸惑ったのは私だけではなかった。

「も、申し訳ございませんっ お止めしたのですが…っ」
 侍女が頭を下げながら、詫びていた。

「あ、ああ…いい。下がってくれ」
 ジョシュアがそういうと、侍女は慌てて出て行った。

 するとお義姉様は当然のようにジョシュアの腕に自分の腕を絡め、彼にしな垂れかかりニヤリとその顔を私に向けた。

「昨日、アーマコットに離縁を告げるって言ってたでしょ? ベッドの中で♡ だから来たのよ。ねぇ、私とジョシュアはもう離れられない深~い仲なの。だから潔く身を引いてよね!」
 義姉は勝ち誇ったようにそう言った。

 昨日、お義姉様に会っていた!?
 そしてジョシュアは私と離縁する事を決めていた!

 私はたまらず応接間を飛び出し、自分の部屋に閉じ籠った。

 私たちの関係は、こんなに簡単に終わるものだったの!?
 幼い頃から育んできた時間は……想いは……何だったの!?

 私はベッドに顔をうずめ、泣き伏した。
 ジョシュアの隣で勝ち誇ったように浮かべたお義姉様の笑顔が、脳裏に焼き付いて離れない…!
 
 義姉は私が大事にしている物を散々奪って行ったわ!

 部屋はもちろん洋服に始まり、アクセサリー、靴、バックその他私が大事にしていたありとあらゆるものを――…

 最初は私も抵抗したっ 取り返したわっ
 すると義姉は父に泣きつき、父は私を殴って責めた。

「お前は今まで散々贅沢に暮らしてきただろう! その中のくらいロレーヌに譲る事もできないのか! 浅ましい性格だ! デリーヌはどんな教育をしてきたんだ!」

「!!」
 ショックだった…
 父が実の娘より義姉の肩を持った事が。

 腹立たしかった…っ
 継母と義姉の為に、簡単に私を殴るようになった父が。
 そして母を侮辱した事が!

 それ以降、義姉は当然のように私の物を持って行った。
 私はもう取り返す事を諦めた。…そんな事をしても意味がないから。
 だって、結局は全て義姉の物になるのですもの。

 残った物は流行遅れだったり、着古した物ばかり。
 あとは母からもらった小さな箱だけ。

『この箱だけは大事にしてね……』

 今際いまわきわで言われた言葉が、昨日のように思い出される―――…

 そんなつらい毎日の中、ジョシュアと結婚する事だけを夢見て過ごした。

 母の1周忌を終え、18歳になる月にジョシュアと結婚する予定になっていたから。
 結婚してこの家を出れば、あとはジョシュアとの幸せな生活が待っている。
 この時はそう思い、疑う事は微塵もなかったのに…

 義姉はジョシュアまで奪っていった。

 私はジョシュアと結婚して、幸せにはなれなかった――――…

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