6 / 9
第6話 食い違う記憶
しおりを挟む
「何か欲しいものがあれば、必ず主人か私に言ってね」
後日、お母様がカレリアに話していた。
この言葉の裏には『ブロンシュの物は取らないで』と釘を刺しているように聞こえる。
「…ありがとうございます。伯母様」
それはカレリアも感じたらしく、少し強張った笑顔を見せていた。
あのネックレスは、お母様が結婚する時に自分とのペアで特注し、片方をお祖母様にプレゼントした特別なもの。その事はお父様もご存じだ。
だからそのネックレスを娘以外の人間が身に着けていたことに驚き、不快だったのだろう。
この時から回帰前とは変わり、両親のカレリアに対する態度に一線が引かれたように感じた。
使用人たちもその空気を読んでか、カレリアに必要以上に関わろうとする者はいなかった。
そしてカレリアからの“羨ましい”攻撃もなくなった。
けれど彼女の事だ。
今はほとぼりが冷めるまでおとなしく振る舞っているだけだろう。
人間簡単には変われないもの。
でも、まだまだ我が家を追い出すまでには至らないわね。
何か大きな出来事が起きれば…そう考えながら、回帰前のレナード様とカレリアの事を思い出した。
『そういえば…私が死んだ後、どうなったのかしら? …今更そんな事を考えても意味はないけど…』
私は溜息をつきながら、軽く頭を振った。
その後私から物を奪えなくなると、カレリアの次の目的は案の定、私の婚約者であるレナード様に向けられた。
そして、レナード様がいらっしゃるとカレリアが必ず顔を出すようになった。
「私もお邪魔していいかしら? こっちに来たばかりでお友達もいないし、暇なの」
「もちろんいいよ。ね、ブロンシュ」
「…ええ」
これも前と同じやり取り、同じ光景だわ。
やはりレナード様とカレリアの関係は、前回と同じになるのかしら…
****
「ごめんね。急な用事ができてしまって…」
回帰前にも聞いたレナード様の言い訳。
やはり今回もカレリアと会うようになったみたいね。
「いえ、お気になさらないで下さい」
私は笑顔で答えた。
そして後日、今回も知人の二人からカレリアの話が出た。
「そういえばカレリア様がレナード様と…」
やはり今回もレナード様とカレリアの話になるのね。
「アンディ様と出かけられてましたよ」
「え? アンディ様って…?」
私はレナード様とカレリアの事より“アンディ”という方の存在が気になった。
「あ、レナード様のご学友みたいですわ。クローサー男爵家のご令息だとか。それにしても女性が男性二人を侍らして出かけるなんていかがなものでしょう?」
「本当ですわね。淑女の行動とは思えませんわね」
これは…二人ともカレリアを中傷しているのかしら?
前は私に同情と嘲笑の目を向けられていたけれど…
それに“アンディ”なんて人、前にはいなかったわ。
なんだか所々、回帰前と違う事が出てきているみたい…なぜかしら?
後日、お母様がカレリアに話していた。
この言葉の裏には『ブロンシュの物は取らないで』と釘を刺しているように聞こえる。
「…ありがとうございます。伯母様」
それはカレリアも感じたらしく、少し強張った笑顔を見せていた。
あのネックレスは、お母様が結婚する時に自分とのペアで特注し、片方をお祖母様にプレゼントした特別なもの。その事はお父様もご存じだ。
だからそのネックレスを娘以外の人間が身に着けていたことに驚き、不快だったのだろう。
この時から回帰前とは変わり、両親のカレリアに対する態度に一線が引かれたように感じた。
使用人たちもその空気を読んでか、カレリアに必要以上に関わろうとする者はいなかった。
そしてカレリアからの“羨ましい”攻撃もなくなった。
けれど彼女の事だ。
今はほとぼりが冷めるまでおとなしく振る舞っているだけだろう。
人間簡単には変われないもの。
でも、まだまだ我が家を追い出すまでには至らないわね。
何か大きな出来事が起きれば…そう考えながら、回帰前のレナード様とカレリアの事を思い出した。
『そういえば…私が死んだ後、どうなったのかしら? …今更そんな事を考えても意味はないけど…』
私は溜息をつきながら、軽く頭を振った。
その後私から物を奪えなくなると、カレリアの次の目的は案の定、私の婚約者であるレナード様に向けられた。
そして、レナード様がいらっしゃるとカレリアが必ず顔を出すようになった。
「私もお邪魔していいかしら? こっちに来たばかりでお友達もいないし、暇なの」
「もちろんいいよ。ね、ブロンシュ」
「…ええ」
これも前と同じやり取り、同じ光景だわ。
やはりレナード様とカレリアの関係は、前回と同じになるのかしら…
****
「ごめんね。急な用事ができてしまって…」
回帰前にも聞いたレナード様の言い訳。
やはり今回もカレリアと会うようになったみたいね。
「いえ、お気になさらないで下さい」
私は笑顔で答えた。
そして後日、今回も知人の二人からカレリアの話が出た。
「そういえばカレリア様がレナード様と…」
やはり今回もレナード様とカレリアの話になるのね。
「アンディ様と出かけられてましたよ」
「え? アンディ様って…?」
私はレナード様とカレリアの事より“アンディ”という方の存在が気になった。
「あ、レナード様のご学友みたいですわ。クローサー男爵家のご令息だとか。それにしても女性が男性二人を侍らして出かけるなんていかがなものでしょう?」
「本当ですわね。淑女の行動とは思えませんわね」
これは…二人ともカレリアを中傷しているのかしら?
前は私に同情と嘲笑の目を向けられていたけれど…
それに“アンディ”なんて人、前にはいなかったわ。
なんだか所々、回帰前と違う事が出てきているみたい…なぜかしら?
1,051
お気に入りに追加
591
あなたにおすすめの小説

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。


二度目の恋
豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。
王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。
満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。
※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

騎士の元に届いた最愛の貴族令嬢からの最後の手紙
刻芦葉
恋愛
ミュルンハルト王国騎士団長であるアルヴィスには忘れられない女性がいる。
それはまだ若い頃に付き合っていた貴族令嬢のことだ。
政略結婚で隣国へと嫁いでしまった彼女のことを忘れられなくて今も独り身でいる。
そんな中で彼女から最後に送られた手紙を読み返した。
その手紙の意味をアルヴィスは今も知らない。

さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる